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28話「早朝のキッス。豪華な馬車と紳士」


翌日、早朝。


目を開けると視界いっぱいに水色の髪の見目麗しい青年の顔が飛び込んできた。


「クヴェルたん……?」


クヴェルはまだ眠っているようで、スースーと息を立てている。


美青年の寝顔が尊い!! 大人の姿のクヴェルの寝顔を見るのはこれで数回目だが、イケメンの寝顔は何度見ても萌える!


カーテンの隙間から朝日が差し込む。まだ日が昇ったばかりのようだ。


昨日、私は魔力切れを起こして目眩でふらついていた。クヴェルたんが私に魔力供給をしてくれて、これが心地よくてそのまま眠ってしまったんだ……。


魔力供給の仕方って……深い口づけのことだったのね。


どうしよう……!? クヴェルたんと……ふ、深いキスを交わしてしまったわ!


昨日の朝、触れるだけのキス(事故)をしたばかりなのに……夜にはディープキスをしてるって……! 進展が早すぎない!?


昨夜のことを鮮明に思い出してしまったせいで、心臓がドキドキしてきた……!


クヴェルにまだ「愛してる」って伝えてないのに、一日に三回もキスして(うち一回は事故)、添い寝してるなんて……!


破廉恥だわ……!


婚約も結婚もしてないのにこんなこと……!


恥ずかしさで顔から火が出そうだわ……!


私がベッドの上で悶えていると、クヴェルが目を覚ました。


クヴェルは寝起きもイケメンだわ……! キラキラオーラが眩しいわ!


「アデリナ、おはよう」


「お、おはよう……クヴェル」


昨夜深いキスを交わしたばかりなので、彼と目を合わせるのが照れくさい。


「体調はどう?

 魔力は回復した?」


「うん、元気だよ。

 クヴェルのお陰だね」


「また、魔力切れを起こしたら言ってね。

 僕の魔力でいいならいつでも分けてあげるから」


「……うん」


また魔力切れを起こしたらクヴェルたんにちゅーされちゃうの……? 心臓がドクンドクンと音を立てる。


「それ以外でも僕とキスしたくなったら言って。

 アデリナならいつでも、どこでも、大歓迎だから」


爽やかな笑顔でなんて破廉恥な発言を……!


クヴェルがそんな事をいうから顔に熱が集まってしまう。彼はそんな私を見てフフッと笑っていた。


クヴェルったら……! 私の反応を見て楽しんでいるわね!


「ねぇ、アデリナ……」


クヴェルは私の体を組み敷くと、私の指を絡め取りベッドに縫い付けた。


「クヴェルたん……?」


「今、キスしてもいい……?」


「……っ!」


「魔力供給じゃなくて、アデリナと普通のキスをしたい」


クヴェルが目を細める。その表情が少し切なそうに見えた。


国宝級イケメンがそんな顔をしてはいけない! そんな顔でお願いされたら拒否できないよ〜〜!


私は少し間を開けてから、こくんと頷いた。


クヴェルがふわりと微笑み、私の唇に自分の唇を重ねた。キスはすぐに深いものへと変わっていく……。


朝からこんな淫らなことしてていいのかな……? でもクヴェルたんとの口づけは凄く気持ちいい……。


今日は一日こういうことしていてもいいかもしれない。ほんの少しの羞恥心は快楽に流されていってしまう。


トントントン……!


「アデリナさん! クヴェルさん! 大変だよ! 玄関に凄い馬車が……! とにかく降りてきておくれ……!」


扉が激しく叩かれ、直後マルタさんの慌てた声が聞こえた。


はぁ……なんだってこんな早朝に……! 人の家を訪ねるときは、訪ねてくる時間を考えてほしいものだわ!


それにしても……マルタさんが驚くほどの凄い馬車っていったい? その馬車に乗っている人物も気になるわ。


そんな事を考えている間も、クヴェルたんとのキスは続いている。


返事をしないとマルタさんに心配をかけてしまう。


指を絡め取られているからクヴェルの体は叩けない。どうやってクヴェルに「止めよう」って伝えたらいいかな?


このまま、クヴェルが満足するまでキスを続けるしかないのかしら……?


扉の向こうに知り合いがいるのに、ベッドに組み敷かれてキスしているというのは……物凄く恥ずかしい。


それでいて形容しがたい高揚感がある。そのことに罪悪感も感じて……私の感情はぐるぐるとかき乱されていた。


クヴェルが私を解放してくれたのは、それから十分後だった。



◇◇◇◇◇




十分後。


「クヴェルたん……!

 すぐに返事をしなかったから、マルタさんが帰っちゃったじゃない!!」


マルタさんは「ぐっすりと寝てるみたいだね。昨日はよほど疲れたんだね。仕方ない、しばらくしたらまた起こしに来よう」といって五分前に一階に降りて行った。


「え〜〜だって、アデリナとのキスを中断したくなかったし……」


「だからって……」


「ごめんね。

 次からは気をつけるから」


クヴェルたんにしょんぼりした顔で「ごめんね」と言われると、怒れなくなってしまう。


顔がいいというのはこういうときに得である。


「もう〜〜、マルタさんになんて説明しよう」


「心配しなくても大丈夫だよ。

 女将さんが言ってたじゃない?

 僕たちがと〜〜っても疲れてるからなかなか目を覚まさないんだって。

 だから女将さんに何か言われたら『起こしに来たことに気づかなかった』って伝えればいいよ」


それは確かにそうね。


「僕たちが部屋でエッチなことしてたなんて、言わなければわからないよ」


「エッ、エッチなこと……!?」


クヴェルの思いがけない言葉に動揺を隠せない。


「へ、変な言い方しないでよ……!

 キ、キスしてただけじゃない……!」


「へ〜〜。

 アデリナにとってキスはエッチなことじゃないんだ。

 なら外でキスしてもいい?」


「……っ!」


クヴェルたんが目を細めくすりと笑う。


完全にからかわれている……!


「そ、それは駄目……!」


クヴェルたんとのちゅーは嫌じゃないよ。むしろその……嬉しいというか。でも外ですることじゃないわ。


「わかってるよ。

 外ではしないよ。

 そんな可愛い顔をするアデリナを他の誰かに見せたくないしね」


爽やかに笑うクヴェルたん。悔しいけど完全に彼の掌の上で踊らされているわ!


「さてと、女将さんがまた起こしにくる前に下に降りようか」


クヴェルたんが子供の姿に変身する。


青年クヴェルは色気があってかっこいいけど、子供のクヴェルはあざと可愛い。どちらの姿も大好きだ!


「マルタさんは、玄関に凄い馬車が停まってるって言ってたわよね?

 馬車に乗っているのはどこのどなたの従者かしら?

 それとも依頼主本人が来ているのかしら?」


女将さんが驚くほどの凄い馬車を寄越すくらいだから、馬車の持ち主はよほどの大金持ちか、大貴族よね?


「恐らく馬車の持ち主は昨日僕たちに仕事を依頼した人物だろう。

 馬車に乗っているのはその人物の使いの者だろうけど」


「どうして馬車に乗ってるのが依頼主の従者だってわかるの?」

 

「馬車に依頼主本人が乗っていたら、

 女将さんはドアを蹴破ってでも部屋に入ってきて、

 僕達を引きずってでもその人物の前に連れて行っただろうからね」


割と常識人のマルタさんにそこまでさせるほどの人物っていったい?


「なんにしても、こんなに朝早くから人を呼びつけるんだ。

 豪華な朝食ぐらいはご馳走してもらいたいものだね」


クヴェルたんは依頼人が誰かわかっているようだ。これからどこに連れて行かれるのかも。


「心配しないで、今から連れて行かれるところはあやしい場所じゃないよ」


私は不安な感情が表情に表れていたようだ。彼は私を安心させるように微笑む。


「むしろ、アデリナには馴染みが深い場所じゃないかな?」


この国に来たばかりの私に馴染み深い場所なんてあったかしら?


あれこれ考えていてもしかたないわ。行って見れば分かることだもん。


私にはクヴェルたんがついてる。どんな場所に連れて行かれても驚いたりしないわ。




◇◇◇◇◇





私達は身支度を済ませ、フロントに向かった。


フロントでは、マルタさんが緊張した様子で来訪者に対応していた。


来訪者はとても紳士的な人物だった。


男性は礼儀正しく、所作が洗練されていて、着ている物も一級品だった。多分彼の着てる服はオートクチュールだ。


従者にまでオートクチュールの服を着せるなんて、依頼人は何者なのかしら?


来訪者は「クヴェル様とアデリナ様ですね? 主君のもとまでご案内いたします。どうぞ馬車へお乗りくださいませ」と言った。


「主君の身分は今は明かせません。お許しください。詳しいことは目的地に着いたらお伝えいたします」とも。


誰だかわからない人物のところに行くなんて嫌なので、普通ならお断りするところだ。しかし今回に限っては別だ。


クヴェルたんが「大丈夫」と言っているので、来訪者を信頼して馬車に乗ろうと思う。


宿の前には八頭立ての豪華な馬車が止まっていた。漆塗りの外装に金細工が施されている。


これだけ豪華な馬車は下位貴族には用意出来ない。依頼人は相当の大物のようだ。





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