4.登校途中での発見
家紋入の馬車に乗り、学園へ向かう。
天気が良かったので、馬車のカーテンを開けて窓の外を眺めた。
これからどうしよう。
夢の出来事が衝撃的過ぎたこともあるが、リリアーナだけでなく、フレデリック殿下や家族に対しての嫌悪感が拭えない。
もやもやした気持ちを抱えながら、学園に行きたくないなと考えていると、市場に差し掛かった所で私は大声を出した。
「止まりなさい!」
「はいぃぃ!!」
御者は驚きながらも馬車を静止させ、急いで扉を開けて降りる。
「お、お嬢様?!」
貴族令嬢らしからぬ行動に驚く御者の声を無視して、私は一目散に走った。
「シスター!」
買い物かごを片腕に下げて歩いているシスターの後ろ姿に、私は声をかける。シスターは立ち止まって振り返った。私よりは年上だが、若いシスターだった。息を切らしながら私が追いつくと、シスターは心配そうな声を出す。
「お嬢様、どうかなさいましたか?」
ゼェゼェと粗く息をしながら、私はシスターを見つめた。
「私も……神に仕えたいのです!」
シスターは一瞬目を丸くし、そして微笑んだ。寒い冬の日の暖かな日差しのような笑みに、思わず泣き出しそうになる。
「えぇ。神はお許しになられますよ」
優しくそう言って、シスターは白いバラが刺繍されたハンカチを差し出した。私はポロポロと涙を流しながら、そのハンカチを受け取った。
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