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家出令嬢③

現在シュメール王国には公爵家は2つ、伯爵家は4つ存在する。

メリアナの祖父、ガイアス・アスメルは現在も騎士団長としての責務を果たす、メリアナにとっては憧れの存在である。

しかし、父と祖父の折り合いは悪く、メリアナの母、ガイアスの娘が亡くなってからはメリアナはほとんど手紙だけのやり取りとなってしまっていた。


お久しぶりに、お祖父様にお会い出来るのだわ。


公爵家に着くとすでに祖父が出迎えで待機しているのが見えた。


「お祖父様!お久しぶりでございます」


「おぉ、メリアナ!ずいぶん久しいな、しばらく見ないうちに立派なレディとなったな」


祖父の前でカーテシーを披露し、ともに公爵家へと向かう

執務室に到着すると早速ガイアスが切り出してきた


「して、メリアナ学園の推薦状は記入しておいたが、そのコース選択が騎士となっておるが本気か?」


「ええお祖父様、私ずっと騎士に憧れておりましたの、やはり一生一度のことですので自分のやりたいことを貫きたいのですわ」


メリアナは祖父の目を見てしっかりと言い放った。

ガイアスは、ううむと言いながら手を顎に当て悩んでいる様子


お願いお祖父様!チャンスは今しかないの!


そう胸のうちで願いつつ、淑女教育の賜物である微笑みを絶やさず、ガイアスに凛と向き直った


「メリアダは基礎魔力はいくつだったかね?」


「え、確か50だったかと思いますが」


思いがけない問いかけに少し驚いた様子を見せたメリアナに祖父は顔を綻ばせた


「孫娘がアルメス家の責務でもある武に興味を持っていること、素直に嬉しく思っておるが入学までもう半月は切っておる。なかなかに厳しいな」


その言葉に、メリアナは肩を落とす


そうよね、よく考えれば皆、物心ついた時から努力を重ねている者達ばかりだもの。

付け焼き刃で行ける場所ではないこと誰よりも理解しているはずだったのに


「そうですか、、では」


「が、魔法師として行くのであれば別だろうな、あそこは武よりも基礎魔力を磨き、後方支援と騎士団内の文官も兼ねることとなる。メリアナは基礎魔力は平均値だが磨き様によっては入学までに基準値を満たせるかもしれないな」


「本当ですか!」


嬉しさに綻ぶ顔が止められない

そんなメリアナの様子を見て祖父も優しく微笑みかけた


「ああ、かなりの努力が必要になるが、メリアナなら大丈夫であろう」


昔から、亡き娘にそっくりでまっすぐな性格のメリアナなら努力を怠らず、必ず入学を果たすだろう


そして推薦状に公爵家の印を押すとメリアナに手渡した


「ありがとうございます」


メリアナは宝物の様にそれを受け取り、そばに控えていたリーナに手渡した


「そういえば、お前の父はこの件知っているのか」


「それは、、」


メリアナは言葉に詰まってしまった

その様子を見てガイアスは何かを察したように頷く


この先の家出、協力者なしには難しいだろう

それに魔法師としての基礎魔力を上げるためにも騎士について詳しい人物が今のメリアナには必要だ


お祖父様なら適任だわ

そう考え、メリアナは切り出した


「お祖父様、私家出するんです」


「は?」


あっけに取られた様子のガイアスに構わず捲し立てる


「先日、お父様から縁談を勧められましたの、私王立学園へ入学できるものと思っていたのでとてもショックで。どうしても自分のやりたいことを諦めきれずにその方法しかないかと思うんです」


ガイアスは驚いた

孫バカではあるが、メリアナは容姿端麗、努力家で、才あるものとして評判である。

次期王妃候補としても名高く、王立学園への入学は確定事項とばかりに思っていたが


「お前ほどの者が学園に行かず誰を行かすというのだ!」


祖父は怒りを表しながらメリアナの肩に手を置いた


「メリアナ、家出先はうちになさい」


「お祖父様、ご迷惑をおかけしてしまわないでしょうか?」


しおらしく話す孫娘に、手を差し伸べない祖父がこの世にいるのだろうか!否!


「孫娘1人匿う程度で揺らぐ我が公爵家ではないわ!ガイアの奴め何を考えているんだか、目にもの見せてくれるわ!」


思ったより、盛り上がっている祖父に若干引きつつ、これで当面の身の寄せ場を確保したメリアナはほっとため息をついた

そうだ大事なことを忘れていた


「お祖父様、滞在の許可を頂いたばかりで申し訳ないのですが、どなたかに魔法師のご教授を賜りたいのですが」


メリアナは教養コースの入学についての準備は万端であるが、騎士コースの入学準備はカラキシである

残り少ない時間、誰かに師事しみっちり鍛えてほしい


「おお、そうであった魔法師となるといいのが1人おるなだがな、、」


「どうかなさったのですか」


言葉に詰まる祖父にメリアナは問いかけた


「いや、今年卒業生で魔法師としては群を抜いておるが性格に難ありでの」


祖父は苦笑いしつつ答えた


「だが、間違いなく百年に一人産まれて来るか来ないかの逸材だ多くを学べるだろう」


「お願いします」


メリアナは即答していた

ここから他を蹴散らし、巻き返すにはどんな困難も乗り越えていかなければ!

心の中でガッツポーズを組む


「よく言った!では早急に手配する」


「ありがとうございます」


「話は成ったの、ではメリアナに部屋を。身の回りのものを準備するんだ」


「承知いたしました」


控えていた従僕に言い置き、メリアナに向き合った


「明日は、身の回りのものをここにいるアレクと揃えなさい。何も心配しなくていい。ここを我が家だと思って過ごしなさい」


「お祖父様、ありがとうございます」


さっきは若干引いてごめんなさい

後者は心に留めて置きつつ、アレクと紹介された従僕と用意された部屋へ向かった


「こちらをご利用ください」


豪華だが品のいい調度品、内装は女性向きの物があしらわれている


「ここは、」


少し離れた場所から問いの回答が聞こえてきた


「エリアナ様のお母様、リアーナ様が使用していた部屋でございます」


壮年の男性が礼を崩さず答えてくれた


「楽にしてちょうだい、あなたは」


「アスメル公爵家執事のリックでございます。お嬢様の身の回りのこと何なりとお申し付けください」


「ご配慮ありがとう、迷惑をかけるわ」


執事は驚いた様子で


「とんでもありません、私はリアーナ様にもお仕えしていた時期がございます、とてもよく似てらっしゃってこの部屋にメリアナ様がいらっしゃると、まるでリアーナ様が帰ってきた様です」


「お母様の絵姿はあって?伯爵家では一枚も残されていないの」


お父様はお母様が亡くなってから、全ての絵姿を片付けてしまわれた。

私はお母様のお姿をもうあまり思い出せない


執事の表情にやや翳りを見せたがすぐにお持ちします

と言い残しその場を後にした


「お嬢様、とりあえずようございました」

「ええ、本当に。ここからお祖父様に報いるためにもしっかり学んで入学試験に受からなければ」


メリアナは決意とこれからの期待を胸に、疲れていたのか夕食もそこそこに眠りについてしまった

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