第八考 マナと呼ばれる不思議な力
長らく「Marvelous Natural Power (不思議な力)」と称されていた皇族の力は、後のアルバによって正式に「MaNa (マナ)」と命名された。以後、呼び名はマナで統一する。
皇帝が生み出した民族たちは、マナを体内に有している。それは皇族が持つ量に比べたら、ほんのほんの微量に過ぎなかったが、ごく稀に莫大な量を持つ者が生まれていた。マナはある程度自覚できる。自分の中に、砂時計の砂粒がザラザラ移動する感覚だ。ほとんどの民族は一つまみ程度のマナしか持たなかったが、稀に手足全部や、下半身が浸かるくらいの、多量にマナを感じる者が生まれてきた。
古代のアルバ(この頃はまだ学者のことを指した)たちは、彼らを効果的に活用できないか研究し始めた。彼らはまず民族発祥の神話から、この力が「民族を作り出す」だけなく、炎から体を癒す力──「治癒」にも使えることに着目した。だが民族である彼らには、民族を作り出すことはもちろん、治癒の力すら、どうすれば叶うのか分からなかった。
アルバと対象者は共に研究を続けた。対象者は大陸をあげて捜索され、見つかり次第、宮廷に連れてこられた。長い間過ごすうちに、アルバと結ばれる機会が多くなるのは自然な事だった。マナの量はある程度遺伝する。必然的にアルバの家系は、マナを多量に持つ人物が多くなっていった。
アルバ自身がマナの多量保持者となり、研究は加速した。体内のマナを意識する方法、増やす方法、コントロールして、放出し、回復する方法など次々に編みだされていった。1000年にもわたる研究の結果、ついに最大の発明──「呪文」という概念が生み出された。