第十八考 魔術大全書【星の魔術大綱】
さて、学校や魔術学校が建設されるのと同時期に、教科書の製作も進められていた。当時、アルバと学者の闘争により、庶民にもアルバが魔術師であるという認識が広まった時期だった。巷間では偽魔術師や偽アルバが横行し、痛ましい事件も数多く起きてしまった。
そんな状況の中、魔術大全書【星の魔術大綱】が刊行された。この本は、高名な呪術家アディーレ・エクセルシア主導のもと、編纂された魔術の概説書である。装丁は、灰味がかったラピスラズリに、銀の文字色で彩られている。表紙の柄は、流れ星が三つと、激しい炎の文様。裏表紙には蔦の葉のコーナー柄に、エクセルシア家紋・セイヨウトネリコのマークが星と共に描かれている。
この本は、項目ごとに厳選された呪文が綴られ、初版は800ページに400呪文が掲載された。呪文だけでなく、マナの増幅法や回復法、魔術の使用法や勉強法など、魔術の指南書としても非常に優秀な書籍である。 現在でも改訂が繰り返され、厚みも倍に増えて第154版が出ている。値段は23ドミーで、庶民でもなんとか手が出せる値段だ。
庶民で呪文を使いこなすのは夢のまた夢とはいえ、金を出せば誰でも本屋で購入できる点が、非常に画期的だった。編纂者アディーレは、魔術や呪文という、宮廷内でのみ研究されていた秘密のベールを、世間に詳らかにした初めてのアルバである。彼女はまた、偽アルバを見分ける方法を役場へ周知し、巷にはびこる詐欺行為へ粛清もしっかり行った。
発売から1500年近くたった今でも、魔術学校の学生とアルバは、みな肌身離さず【星の魔術大綱】を持ち、日々魔術の研鑽に努めている。本に収録し切れない専門分野については、参考書籍も書かれており、特に医学書や薬草書の類いなどは、ここの一覧から本を取り寄せる。





