第四十四話 女の子がいれば、頑張れる
リサたち防衛隊士見習いは勉学や体力強化、能力や戦闘の訓練を連日のようにこなしていた。
そんなある日の朝、本日の授業を行う為に青組の訓練生が全員教室に集まっていた。
いつも元気な獣人の青年が机に突っ伏してうなだれている。
「も、もうムリ…俺…!!」
そう弱音を吐くのはダケルであった。
獣人である彼は体力強化や戦闘訓練で特別高い負荷がかけられていた。
ダケルの毛並みにツヤがなく、乾いて見える。食事を十分以上に取っている所を毎日見ているので原因は疲労によるものだろうか、もしくは十分眠れていないのだろうか。
ダケルが弱音を吐く姿を遠目から見て、リサにもその気持ちが痛いほど理解できた。
リサも身体に疲労感を感じていた。
訓練生の中で身体的に劣るリサの身体ではそれも無理はない。
しかし彼女が訓練に手を抜く事はなかった。
【朱滅火炎】の出力向上、基礎体力の強化、戦術の勉強、そして【陽炎幻視】の訓練、課題が山積みである。
アルクスにもレドにも負けられない。本当のリオ・ドルスになる為にリサは立ち止まってはいられない。
そして自分が女であることを隠すように生活する日々。
まともに風呂にも入れないこの生活でどこで疲れを癒そうかと考える毎日。
いままでリサの唯一の趣味、娯楽といえば、”可愛い服をこっそり着る”ことくらいだった。
しかしそんな趣味はクレインと同室で生活している以上できるはずが無い。
我慢に我慢を続け、あと数日で休日だということを頼りにリサは気持ちを保っていた。
リサは気分が晴れるような何か面白い出来事はないだろうかと教室を見まわす。
「おっさん、ゴイルのおっさん。またあの店に連れてってくれよ!!俺には癒しが…可愛い女の子が必要なんだ!」
「お、おい!わかったから!今度の休みになっ!だから泣くな、ダケル!」
ゴイルのゴツゴツした腕に抱きつくようにしてダケルが泣きながら訴える。
石拳のゴイルは35歳とダケルとかなり年が離れているにもかかわらず、やけに仲が良い。
恐らくダケルとゴイルの仲が良いのは入隊試験が終わった後の”打ち上げ”とやらに三人でいったからであろうか。クレインも含めたあの三人の仲は周りと少し違いお互いの距離が少し近い。この過酷な訓練の日々の中では仲が良い友人が多いというのはなんとうらやましいことであろうか。
(やっぱりわたしも行きたかったな…あの”打ち上げ”っていうのに…。)
リサは終わった事を悔やんでも仕方ないとばかりに前髪を払うように首を左右に振り、椅子の背もたれにもたれかかり天井を見る。
今度の休みには何をしようか、どこか知らない場所へ行ってみようか。そんな妄想をする時間が今のリサには必要なのだ。
「おっさん……俺には…可愛い女の子が必要なんだ…可愛い女の子さえいれば…頑張れる…頑張れるんだっ!!」
「わかったわかった…今度の休みな?それまで我慢な?」
「おぅ……お”うっ…!」
(女の子、か……私と年の近い子と話したのはいつだったかしら……?)
疲労感と訓練の日々ですり減った精神のリサとダケルの二人だが、意外なことに二人が求めているものは同じであった。
女の子という単語を聞き、リサは自分と年の近い女性と会話したい、何かを共有したいという気持ちが胸の奥からふつふつと湧き上がるのを感じた。年頃の女性同士がするような早口で騒ぎ立てるような会話は得意では無いが、こっそりと覚えたファッションのことなら少しだけ自信がある。
可愛らしい服への思いを、感情を、誰か話せる機会は無いだろうか。それができればこの憂鬱な気持ちも少しは晴れるというものだ。
石拳のゴイルの腕に抱きつき泣いているダケルに話しかけたのは意外にもクレインであった。
「あのー…ダケル。聞こえる?」
「あ”あっ!あ”あっ!聞い”てる!!」
クレインが人に気遣うのは珍しい、とリサは思う。
クレインは基本的に面倒に巻き込まれるのを嫌う。自分に関係無ければ普段は決して助け舟は出さないのだ。
クレインがあえて話かけるのは、泣きじゃくるダケルの姿があまりにも不憫だったからだろうか。
それともダケルの陽気な人柄がそうさせたのだろうか。
そのクレインがわざわざ声をかけるくらいだ、何を言うのだろうとリサも耳を傾ける。
「女の子が見たいならさ、見に行けばいいじゃないか”女子クラス”に。」
「じょ…?なんだって……?」
「だから行けばいいじゃん?女子クラスに。」
「ええっ!!?あるのっ!!?」
ダケルと一緒にリサも声を上げてしまった。
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