表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/30

第9話 ギルドの親父の頼み事

「まいったな……。まさか、価値が高すぎて(さば)けないってのは」


 予想外だったとリックスがうなだれる。


 まあ、そうだよな。


 普通は高すぎて売れないなんてのは想像しないよな。


 価値はある。だが、役に立たない。

 

 腹は減ってる。コンビニはある。だけど財布の中には宝石しかない。みたいな感じで実に泣いて良いのか笑えばいいのかわからない微妙な空気の中、ガチャリと扉が開いていかついハゲ(おや)()が姿をあらわした。


「待たせちまったな。ソフィから、ざっくり話は聞いてきたが……すまんな。こっちも商売だからよ。で、こいつがモノか……」


「ああ。どうだ? ちっとでも金に出来ないか?」


 改めて、自分でも検分を進めるハゲ(おや)()

 だが、出てきた答えは同じだった。


「……ダメだな。どうやっても、鑑定額が高くなりすぎる」


(なあ、白金貨ってそんなに(すご)いのか?)


 そもそもの貨幣の価値がよくわからないので、ちょっとフィオナに聞いてみた。


 コクリと1つうなずくフィオナ。


(一枚で村の半年分ぐらいの生活費になる)


 ってことは50枚で25年か……そりゃすげえわ。


 あれ? ちょっと待て。

 たしか、リックスはガーディアンを(あさ)ってる時に村の一年分かそこらって言ってなかったか?

 だとすると、白金貨だと2枚じゃね? もうちょっと頑張っても3枚とか4枚だろ。50枚は多すぎる。


 オレの疑問にフィオナがそういえば、と首をかしげる。


「リックス。額が合わない」


「え?」


 フィオナの声に振り向くリックス。


「たしか、(ほこら)では村の生活費の1年分。詰めれば3年分ぐらいと言っていたはず」


「あ、ああ」


「だとすれば白金貨は50枚は多すぎる」


 だが、これはリックスの鑑定ミスだったらしい。ハゲ(おや)()は、持ち込まれた1つの残骸の一部を指し示した。


「ああ、リックスが悪いんじゃねえよ。普通のアダマスなら、確かに白金貨で頑張っても4枚半ってところだ。値を跳ね上げてるのは、ちょっとした細工がされてるせいだ」


 そう言って、(おや)()が指し示した部分にはうっすらとした線が浮かび上がっていた。


「アダマスは魔力を一切通さない。だから、対魔術の(よろい)や盾なんかに重宝されるんだがな。その性質を逆手にとって、魔力の導線を混ぜ込むって手法が中央で開発されたんだ」


「……聞いたことがある。見たことは無いけれど」


 この中でただ1人、魔法に詳しいフィオナが(おや)()の言葉を肯定した。


「ま、そうだろうな。なんせ、タダでさえ加工の難しいアダマスに魔術導線を埋め込むってのは腕っこきの鍛治師でも簡単には手が出せねえ。が……どこで見つけてきたのかは、まあ聞かねえがよ。こいつにはそれが最初から仕込んであるときた。こんなものは中央の研究所にでも持ち込まねえと、こっちも金に出来ねえ」


「ならさ。手付けってことにして、前払いってわけにはいかないのかい?」


「それをやると、(そろ)(ばん)が合わなくなっちまう。徴税官が来てるからな。ごまかせねえよ」


 完全に進退窮まっちゃったな、これ。


「と言っても、だ。あんたらが困ってるってのは俺も百も承知だ。でな、ちょっと相談があるんだけどよ」


「相談?」


「おおよ。こいつを換金するにはどうしたって時間がかかる。だから、別口の依頼を受けてもらいてえんだ。それなら、こいつを質に預かるってことで契約金の前払いってことで都合はつけられる」


「いくらだ?」


 リアムが少し渋い顔で(おや)()にそう尋ねた。

 まあ、確かにどんな依頼かはわからないが普通に考えれば白金貨50枚だっけ? それには届かないわな。


 それを保証金として預からせろっていうんだから、渋る気持ちはわかる。


「金貨で20枚」


「普段なら、一も二も無く受けるんだけどな」


 結構、いい依頼らしい。


(金貨ってどれぐらいの価値があるんだ?)


(だいたい50枚で白金貨1枚。品質によりけり)


 ってことは……ざっと2()(げつ)分ぐらいか。


 足下見られてる感じだな。


「どうするよ? こっちとしちゃ、これが精一杯だ。失敗したら質草は(もら)うことになるが、まあ、失敗しなけりゃ問題はねえわけだしな」


「依頼の内容は?」


「ちょっとしたお使いだな。採集依頼だ。もち、依頼よりも多く採取できれば、その分は別計算で引き取るぜ」


「で、モノは?」


「竜の(ろつ)(こつ)を8本。墓場からもってくるだけだ。徴税官の護衛やらファングの討伐やらで、立て込んでるんでな。無所属のあんたらにはうってつけだろう」


 さ、どうする?


 そういって、ハゲ(おや)()はそう言うと一同を見回したのだった。


なろうの「ブックマーク」をつけていただけますと励みになりますので、なにとぞお願いいたします。


評価は広告の下の星をポチるだけの簡単仕様です。

評価がお済みでない方は評価していただけますと助かります!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ