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第28話 そして、やっぱり米バカ先生は米バカだった

 騒動の一夜が明けた。


 結局、この大騒ぎに気がついていたのはオレたちだけで他の住民はまるで気がついていなかったらしい。


 それもこれも、女がナノマシンでもって(おん)(みつ)行動を徹底していたからだ。

 ナノマシン、本当に使いようによっては(おそ)ろしい威力を発揮するな……


 今後のためにもセキュリティはしっかりしとかないとね。


 そうそう。その女の名前はカーミラというらしかった。


 今は()きものが落ちたみたいに静かにしている。というよりも、ふてぶてしく居直ってるというべきか。



「アタイから情報を引き出したいなら、せめて酒の一杯でも出すんだね」



 とこんな調子だ。


 だすがにカレンがぶち切れて殴りかかりそうになっていたが、なんとかリアムが押さえ込んでいた。



「呼ばれたのは全部終わった後だった……っていうのはちょっと複雑な心境だね。まあ、役には立たなかっただろうけどさ」



 1人、昨夜の騒ぎから村八分だったリックスがぼやくが、まあ適材適所というか。リックスのお仕事は今からだ。



「それにしても、タスクが人間にもなれたとはね。もっと早く言ってくれれば良かったのに」


「……なんとなく言いそびれちゃったんだよ。ネコでも特に問題無かったし」


「ま、1度きっかけを失うとズルズルってのはよくあるわな。で、これからはずっと人間でいるのか?」



 というリアムの問いに俺は首を横に振った。



「いや。たぶん、またネコに戻るよ。この身体の方が精霊魔法の精度は上がるんだけど、範囲が狭くなるから。米作りなんかでいろいろと大規模な魔法を使う必要があるからね。そういうのはネコの方が得意なんだ」



 ナノマシンなんて言っても話がややこしくなるだけなので、ここは魔法で押し通す。幸い、精霊魔法の使い手がもう1人いることだし。


 説得力はそれなりにあると思うんだよね。



「で、カーミラだっけ? こいつどーするつもりだい?」



 暗に処刑した方がいいんじゃないかという目つきのカレンをリックスがまあまあと落ち着かせる。



「殺したら話が聞けないからさ。ここは任せてくれないかな。悪いようにはしないよ」


「ま、リックスがそういうなら……任せるさ」



 さすがはフィオナたちの参謀役だけあって、こっち方面の信頼感が半端ない。実際、この街の規模が大きくなってきたら、そのまま宰相とかは確定だろうな。



「じゃ、別室で話をさせてもらうよ。タスク、暴れないように押さえ込むのは大丈夫かい?」


「大丈夫。離れてても問題無いよ」


「了解。それじゃ、ちょっと部屋を借りるね。さ、楽しい尋問タイムだ」



 なんとなく和やかさの中に怖さを感じる笑顔でリックスが別室へと移動する。カーミラを引き立てるのはリアムにお願いした。カレンに任せて、キレられても困るしね。


 なにかフィオナを狙ってる連中のダメージになるようなことが(わか)ればいいんだけど。


 と、リックスの成果も気になるけどそれ以上に気にしなきゃいけないのが今後のことだ。


 まずは米だよ米。


 それから田んぼ。すぐにでも米を効率良く増産できるように地ならしをしとかなきゃいけない。


 それから人だ。


 ……やることが多すぎて、とても手が回らないぞ。また砂長にお願いしないと。


 などと考えていると、今度は米バカ先生が怒鳴り込んできた。



「アンタたち! 無事かい! 殺し屋が襲ってきたって…………あんた、誰だい?」



 やば。



「ん。タスク」


「は? 誰だい、そいつは?」


「ネコさん。精霊の使い」


「……ネコだ? そういや、あのクロネコはどこ行ったんだい? こんなところにメス猫なんていやしないだろうに」



 会話が成立してるようで成立してない。


 さて、どう説明したもんかと考え込んでいるとカレンが身も(ふた)もないことを言い放った。



「……口で言っても(わか)りゃしないんだからさ。タスク、直接見せてやんなよ。減るもんでもないだろうさ」


「ん。それがいい」



 フィオナもノリノリだ。


 まあ、今後のことを考えると米バカ先生も中心人物になってもらわないと困るわけで。

 話すなら、今のタイミングしか無いか。



「その、驚かないで欲しいんだけどさ」


「なんだい、もったいぶるね…………へぇぇっ!?」



 ゆっくりと変身して猫モードへと姿を変える。人体を構成していた余ったナノマシンが一瞬だけ砂のように流れて、そのまま空中へと溶け込んだ。


 後に残るのはすっかり慣れたネコの身体のオレだけだ。


 さすがにこれにはたまげたのか、米バカ先生があんぐりと大きな口を開けて固まっている。


 ……冷静に考えたら、これはこれで(めつ)()にお目にかかれない姿だな。


 貴重なワンショットなので、写真データで保存しておこう。



「た、ただのネコじゃあないとは思ってたけど……こりゃあ、驚いたね……」


「ん」


「で、精霊の使いってことは……精霊魔法も使えるってことかい?」


「ん。地下水脈はタスクが見つけてくれた。ついでにこの街も……実はタスクが作った」



 フィオナ、そこまでばらさなくても……


 さすがにドン引きになるかなと思ったが、考えが甘かった。


 というか、ドン引きになるのはむしろこっちだった。



「へぇ……こんな切り札を隠してたってのは気に入らないがね……そうかい、あんたそんなに(すご)い精霊魔法が使えるのかい。ってことはもちろん、井戸なんかを掘るのも朝飯前だね?」


(ま、まあ)


「お。なるほどね。ネコの時はこうやって会話するのかい。大したもんだ。で、あんた……さては土も(いじ)ったね?」


(え?)


「塩気の抜け方が妙だとは思ったのサ。が、まあそれ以上は変なことをしなくてもいいよ。ここが大昔は豊かな場所だってのは代わりは無いからね。変に(いじ)ってせっかくの()(りき)が抜けちまう方が面倒だ」


(あ、ああ。ごめん)


「謝るこたないさ。塩気だけ抜いてくれりゃいいんだ。出来るんだろう?」



 ……とても出来ないって言える雰囲気じゃ無いよ。実際問題出来ちゃうし。


 オレがコクコクとうなずくと、さらに米バカ先生はその笑みを深めた。



「いい返事だ。となると……こいつはアレだね。こっちも出し惜しみするとこじゃないね。試験の結果次第だが、()()くいけば時間を短縮出来るよ」


「時間?」



 フィオナの疑問に米バカ先生は大きくうなずく。



「ああ。試験農場に半年ぐらいはかけるつもりでいたのサ。どっちみち、ちゃんとした水畑を作るには井戸も掘らなきゃいけないし、()(いけ)も造らなきゃいけない。おまけに土作りもあるからね。人手が幾らあっても足りゃあしない。人を呼ぶにも最低限の生産はあげないと、呼んだはいいが、次の収穫まで養えないからね」



 確かに。


 今の状態で人を呼んで田んぼを量産しても、その田んぼの実りまで食いつながないといけない。

 そのための穀物を作るのにはどうやっても半年はかかるし、そのための田んぼをつくるにはさらに半年ぐらいは見ておかないとダメだ。


 なんだかんだで最初の一年は今の人数かちょっと増えたぐらいでやりくりしなきゃいけない。


 が、米バカ先生のもはや邪悪な笑みはそうは言っていなかった。



「米が育つのばっかりは時間がかかるけどね。水畑をつくって井戸を掘って水を引いてってのはネコにやらせりゃいいわけだ」



 え? 何? オレ1人で全部やるの!?



「ネコじゃない。タスク」



 フィオナ。違う。つっこむべきはそこじゃない。


 オレの悲鳴をガン無視して、米バカ先生はさらに暴走する。



「となると、試験はさっさと切り上げなきゃならないね」


「……試験農場のお米が育つのに時間がかかるんじゃないの?」



 フィオナ、ナイスつっこみ! そうだよ。試験農場の結果を見ないとどういう風に米を育てるか決められないじゃないか!



「ああ。そうさね。だから、その時間を早めるための魔薬を使うよ。本当は使う気なんか無かったんだけどね……こんな便利なネコが()()なら話は別だ。こっちも出し惜しみはしないよ」


 ()()って何だよ、()()って。


 オレの悲鳴は誰に届くことも無く、米バカ先生は猛烈な勢いで試験農場へと突っ走っていくのだった。


 ……しかし、なんか予測はしてたんだけどさ。


 本当にこの先生、アレだよね。



 米作れたら、精霊の使いだろうが魔神だろうが気にしてないよね! 

刺客の尋問はリックスに丸投げ。今後の作戦に大きく関わってきそうです。

そして、やはり米バカ先生は米バカ先生でした。

この先生、農学者じゃなくて兵器とか作ってたらとんでもないことになってた気がします。


続きが少しでも気になったり、ちょっとでも続きを読みたいなと思われた場合はブックマークをしていただけると励みになります!



また、評価もしていただけますと今後の展開などの参考とさせていただきますのでよろしくお願いいたします。


本年もひきつづきよろしくお願い致します。

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