第19話 村の改造計画 ③ ~未来のためにも人が要る~
とりあえず、地下街の建設作業はナノマシンにオートでお任せしておいて、オレたちはさっそく人材もとい人財を求めて砂の民のバザールを訪れることにした。
ナノマシンは基本的に極小のコンピュータでもあるので、当然ながらプログラミングによるマクロ的な作業も普通にこなせる。
と言っても、実際にゴリゴリとソースコードで書いて実行……というわけではない。
幸いというか、何というか、オレの身体を構成しているのがナノマシンそのものなので、そういう命令は無意識下で自動的にコンバートしてくれるようにシーワンが設定しておいてくれていた。
でなきゃ、満足に変身も出来ないからね。
つまり、オレ自身のするべき事は地下街の設計図をトコトンまでリアルにイメージすることだった。
これはこれで正直、かなりハードで3日ばかり必要だったんだけど……なんせ、イメージしてはそれを立体構造に起こして、さらにそれをゴリゴリと操作してというのの繰り返し。
脳内で3DのCADを操作してるようなもんで、とにかくくたびれた。
その甲斐あって、またもやナノマシンの操作権限のリミットが解放されてレベルが上がりました!
【ナノボディ機能制限解除】
力 18→22
防御 22→25
魔力 0→0
速度 73→239
思考 105→543
【ナノマシン操作権限】
操作可能エリア:半径25m→半径35m
指示可能エリア:半径25km→半径25km
操作可能質量:60kg(身体含む)+70g→+170g
【解除スキル】
ナノマシンによる分子操作 ランク4→7
ナノマシンによる生命維持系操作 ランク5→6
ナノマシンによる情報収集 ランク4→10
New!【ナノマシンによる受動的情報収集 ランク1】
New!【ナノマシンによる超精密分子操作 ランク1】
こまかい作業をガンガンこなしたせいか、ナノマシンの操作速度と思考アクセラレーションが爆上がりでございます。
ありがとうございます!
あとは水脈マップなんかをつくったおかげか、情報収集ランクも爆上がり。
関連スキルも解放された。
受動的情報収集は読んで字のごとしで、オレが特に意識しなくても勝手にナノマシンが情報収集行動を行ってくれるスキルだった。
収集された情報はナノマシンにプールされて、必要な時にすぐに取り出せる。
つまり、オレの行動半径が広がれば広がるほど、そこに散布されているナノマシンは自動的にずーっと情報を集めてくれるわけだ。
これが恐ろしく便利で、言ってみれば行ったことのある場所ならばオレは常に千里眼能力を手に入れたも同然になる。
もう一つが頑張って都市設計からの都市生成を行った結果として得られた成果。
これは超精密というだけあって、それこそちょっとしたコンピュータの基板ぐらいならサクッと作れてしまうレベルの操作能力となる。
今後、ガーディアンみたいなのが必要になったらシーワンの遺跡に戻って修理するなり改造するなり出来ることになる。ちょっと期待。
とほくほく顔でオレが尻尾を立てながら、意気揚々と歩いているとあっさりとフィオナに捕獲されて肩の上に連れ戻された。
「……タスクはここ」
「みゃお」
いくらナノマシンの操作レベルがあがっても、彼女には逆らえないのであった。
例によって、可能な限り環境を操作して快適な旅を演出しながら砂の民のバザールを目指す。
やはり地の果てからの旅路は遠く、バザールに到着するころにはポンポンポンと大量の情報がオレの元にナノマシンさんから届けられていた。
(ええと、とりあえずご報告です)
明日にはバザールという最後の夜、焚き火を囲むみんなにオレは語りかけた。
「ん? どうしたんだい、かしこまって」
カレンが肉にかぶりつきながら、そう言って笑いかけてくる。
この頃には正体を打ち明けた気安さもあって、オレもだいぶ皆のことがわかるようになってきていた。
まずカレン。見た目も言動も脳筋そのものだけど、さすがに女性だけあってものすごく根は細やかだ。隠れた気配りが凄い。
次にリアム。彼は一行のリーダーだけあって、最後の一押しが上手い。まとめ役っていうのかな。自分から意見をガンガン出すリーダーでは無くて、出された意見を上手にまとめ上げる。
最後がリックス。こいつは一言で言うと商人気質だ。
見た目が小さい忍者なので、そんな感じだと思っていたけど金儲けに有利なので自然と盗賊系になっていったという感じ。
「で、どうした?」
(もう、地下街が出来ちゃったって。井戸も3本掘ったから、生活にはまず困らないと思う)
リアムに促され、オレはまず最初の報告を上げる。
「……そんなに早く出来るものなのか? てっきり半年や1年は覚悟してたんだが」
(そんなにかかってたら、みんな干上がっちゃうって。で次の報告だけど……ここまでの道のりのかなり詳細な地図も出来たよ)
パッシブ情報収集のおかげだね、これは。なんせオートマッピング状態だから。
「へえ。それは……高く売れそうだね。いい資金稼ぎになるよ。タスク、サンキュー!」
……まあ、役に立つならそれでいいけどね。リックスはさすがに抜け目がないや。オレはバザールや街との往復が楽になるなあぐらいの考えだったんだけど。
けど、一番の目玉はこれではないのだ。
(で、一番の報告なんだけどさ。村周辺の詳細な水脈地図から穀物の予想生産量を計算してみたんだけど……人手がまったく足りなくなるかも)
なぬ? っと全員の視線がオレに集中。
オレはナノマシンの精密操作を駆使して、地面に村周辺の地図を書き上げた。周辺と言っても、半径数十kmという単位だけど。
そして、そこに予測される収穫量を積み上げていく。あくまでも水だけでの計算なので必要な肥料なんかのことを考えると、この予測からは大幅に減らさなきゃいけない。
そうやって、減算係数をかけてなお、その予測値は莫大なものになっていた。
砂絵というにはかなり細かい地図を覗き込んだ全員が絶句する。
「これは…………王国の穀倉地帯を越えてるんじゃないか?」
「…………人手と肥料を確保出来れば、超えるね、これは。ただ、降雨が無いから灌漑がかなり大変になるよ。数年どころか数世代って計画になってくるだろうけどさ。小さい国ぐらい賄えるんじゃないの?」
という規模だった。
とにかく地下水脈が異常に豊富なのだ。
貯水量では無く流入量が。どこから流れてくるのかはまだわかってないけど、とにかく水流が凄い。
あまりにも水流が豊富なので、一部の地下は侵食による大空間が出来上がっていた。
ただ、この計算はあくまでもナノマシンの情報を元にライブラリにある計算方法を当てはめただけで……要するに前提となるいくつもの技術的素地が抜けている。
そういうことを考えると、そんなに甘くはないだろうけど、それでも不毛の大地というイメージを覆すには十分な情報だった。
「これはますます、農業の専門家が必要だな。もう、俺たちじゃ手に負えん」
「だね。いっそ、ここに領地を作っちまうのもありかもしれないね……ただ、そうなると。アイツとぶつかるね。黙って見てるようなヤツじゃ無い」
(アイツ?)
「…………私の叔父」
その声には抑えても抑えても吹き上がる、重い感情が籠もっていた。
フィオナを追放した元凶にして、当面のオレの敵だ。立ちはだかるなら容赦はしない。
立ちはだからなくても容赦する気はサラサラないけどね。
「いずれにせよ、まずは人集めだね……金銭がかかるよ。どっちにしろ」
その前にまずはそこか。
さすがはリックス。浮かれっぱなしのオレと違って、ちゃんと考えてるなあ。
いくら宝の山があっても、それを生かす人がいなきゃ話にならない。そして、そんな有為の人材がホイホイとオレたちに協力してくれるわけもない。
つまり、報酬が必要で、頑張って稼がなきゃ! ということか。
……経営って結構大変だね。
タスクがナノマシンによって得た情報は不毛の大地の莫大な可能性でした。
もはや村作りの域を越え、その事により大きな変革がこの土地から起こっていくことになります。
それは大公の野望を足下から突き崩す大きな変革の波であり、王国そのものを変革する可能性に満ちています。
滅びるのは弱いものではなく、変われないものなのだということを大公をはじめとする貴族はまだ知りません。
引き続き、お読みいただければ幸いです。
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