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第18話 村の改造計画 ② ~子供の未熟と大人の経験~

 水を()んだ女性たちと、村に戻ってきたオレはさっそくフィオナと共に井戸の場所を検討していた。


 将来的にはもちろん、農業用水の(かん)(がい)用の井戸なんかも作らなければならないが、まずは生活用水からだ。


 これがあるだけでも水場への往復は無くなるし、必然的に水場に集まる危険な生き物とばったり遭遇なんてことも無くなる。


 皆の安全にあらゆる意味で直結しているために、これは急務と言えた。


 問題は井戸を掘った後で、それをどうやってお()()()するか、だ。


 何しろ、何も無いところにいきなり井戸が出来上がるわけだから、どうやっても不自然になるわけで。


(かと言って、今オレの正体をばらしちゃうのもなあ……)


「ん。タスクのことを話して、それでみんながタスクに頼り切りになったら……ちょっと、困る」


 というのがオレとフィオナの目下の悩みなのだった。


 かと言って、ずっと隠れてるってのも……まあ、ちょっと無理があるしなあ。ずっとネコではこっちも困る。


 同じように住居の問題でも、ちょっと困っていた。


 こっちは崩落の心配がまずないぐらいまで(しん)(ちよく)が進んだところで、フィオナにだけ話を打ち明けている。


 そして、行き着いた問題は井戸と同じ。


「どっから、そんなものが沸いてきた」


 だったのだ。


 フィオナにそれを指摘されるまで、完全にそのことを失念していただけに、ちょっとうかつだった。


 ナノマシンが万能なのはいいけど、オレの頭までは万能にしてくれないわけで。

 こればっかりは、知恵の源泉となる人生経験がオレにもフィオナにも足りていない。


「…………タスク。どうしよう」


(…………せめて、リアムたちにだけは話しちゃわない?)


 オレとフィオナの最も身近な大人と言えば、あの3人だ。

 

 あの3人なら、今までいろいろとやらかしてるのを目撃しちゃってるので今さら驚いたりはしないだろう。


 万能スキルがあっても、村のリーダーでも、やっぱりオレもフィオナもまだお子様なのだ。

 認めるのは悔しいが。


 ここは素直に知恵を借りよう。


 あまりにもナノマシンが万能なので、オレはこの問題にぶち当たるまで何でも1人で出来ちゃうような気分になっていたことに気がついていた。


 そして、もちろん、そんなワケはないのだ。


 知識や技術を使いこなすには老練な知恵ってヤツが必要だ。


 フィオナもあの3人なら……ということでオレと同じ意見だった。


 そして、オレとフィオナの(いつ)()(いち)(だい)の告白を聞いた大人たちの態度はというと――


「やっと、言ってくれたか」

「思ったよりも時間かかっちまったねえ。ま、ちゃんと言ってくれたからいいけどね」

「というかさ。隠せてるって思われてたのが心外だね」


 という実にあっけらかんとしたものだった。


 つか、モロバレだったのかよ! 


 オレとフィオナの悩んだ時間を返せよぅ。などと思わず愚痴っちゃいそうになってしまうのだった。


 それはフィオナも同じだったようで、少しジト目でカレンを見上げる。 


「……気がついてたなら、教えてくれても良かったのに」


「そんなことしちゃ、お嬢さんのタメにならないからね。じっと待つのも大人の仕事ってヤツだよ」


 ……脳筋と思っていたカレンに言われてしまうとは。ぐぬぬ。


「というわけで、黒猫のタスク。いろいろ(すご)い。以上」


 気合いの抜けた紹介だったが、責める気にはなれなかった。オレだって似たような気分だしー。


 さすがにコールドスリープで目覚めた(うん)(ぬん)というのはフィオナにも隠しているのでドッキリは上げ底だしー。というか、こっちは信じようが無いと思うんだよな。


 まだ、精霊の使いってことにしておいた方が(しん)(ぴよう)(せい)は高い。


 この世界ではぶっちゃけ、極限まで発展した科学技術のほうがファンタジックな話よりもずっとおとぎ話だ。


「で、タスクが精霊の使いなんてことはわかってた話なんだけどさ。具体的には何が出来るわけ?」


 とリックスが(きよう)()(しん)(しん)に聞いてくる。


(物質の操作、かな。さすがに石を金にとかは出来ないけれど、毒の分解だとか穴を掘ったり物を組み上げたり、そういうのは割と簡単)


 とオレは試しにそこらの石ころを彫刻してみせた。


 手も何も触れずに勝手に石が削れていく――というのは、なかなかシュールな光景だったけどデモンストレーションとしては効果的だったと思う。


 リックスなんか目を丸くして、何度もオレと彫刻された石を見比べていた。


「他には?」


(あとは同じように空気から水を集めたり、周囲の状況をチェックしたりも出来るよ。ただ、限度はあるけどね)


 うーん。いろいろと聞かれるのはわかってたけど、オレも実は自分に何が出来るかってのはよく理解し切れてないんだよね。


 ステータスで確認出来るのは、多分、ほんの一部だ。


 ここらへんもちゃんと把握しておかないと。


 そんなわけで、オレのことを理解して(もら)った上で知恵を借りることにした。


「……というわけで、タスクに井戸と家をつくって(もら)おうと思ってるんだけど。タスクが作ったというのは内緒にしたいの」


「そんなの遺跡ってことにしちゃえばいいんだよ」


 そして、わずか数秒でリックスが答えを導き出した。


「遺跡?」


「タスクが作ってるのって、洞窟住居だろ? それに井戸だって。両方とも砂嵐で埋まっちまっても、ちっともおかしくない。あとはそれを偶然、見つけたってことにすりゃいいのさ」


 ……それは思いつかなかった。


 たしかにこの荒涼とした岩石砂漠なら、それもアリだ。


 というか、多分それしかない。


 昔の人が何らかの原因で捨てた街なりなんなりが偶然ここだったって感じにすればいいわけだ。


「こういう感じがいいと思うぜ」


 さらにリックスがすらすらと地面に絵図面を書いていく。


 それはちょっとした地下都市のイメージデッサンだった。

 

 岩山に入口があり、そこから地下に巨大な空洞が広がっている、地下鉄なんかの構内をイメージするのが一番近いかも知れない。


 井戸はその地下の空洞に掘られていて、住居も同じだ。


 これならば、砂嵐で埋まった入口だけを偶然、()()さえすれば……小さな街そのものが手に入ることになる。


 しかも、防犯も完璧。モンスターや魔獣が押し寄せてもビクともしやしない。


 俺が最初考えていた洞窟住居よりもずっとグレードが高くて、しかも不自然さが無い。


「タスク……今から、作り替えることは出来る?」


(時間はちょっと余分にかかるけどね。大丈夫)


 なんなら、今作っている住居は全部、放棄しちゃってもいいぐらいだ。


 さすがは大人の知恵。


 オレとフィオナが感心していると、ざっざと足で図面を消したリックスは少し悩ましげな顔でこう付け加えたのだった。


「けど、これでなんとかなるのは器だけだぜ? 畑なんかは別問題だ。そこをなんとかしないと、ここにはやっぱり長くは住めない」


 ……それもそうか。


 (かん)(がい)なんかはオレが何とかできるけど、さすがに農産物まで全部ナノマシンでってわけにはいかない。


 第一、そんなことしちゃオレはあくまで裏方というスタンスから離れてしまう。


「専門家がいるな」


「ん。それは私もずっと考えてた」


 最低でも農業の専門化が必要だね。


 次は人捜しか。


「ま、そういうことなら砂長(すなおさ)を頼るのが一番だろうな。幸い、貸しもある。相談ぐらいは乗ってくれるだろうさ」


 とリアムが気楽に提案してきた。


 たしかにものすごい情報力だったからね。おまけに中立っぽいし。


 こうして、トントン拍子にこれからの方針が定まっていく。

 やっぱ、経験ってのは(すご)いね。


 そして、この大人の知恵のおかげでオレたちは、知らないところで進んでいた陰謀に気がつくことが出来たのだった。


 けど、それはもう少し先の物語。


大公の陰謀が裏で進む中、いよいよ村作りの始まりです。

まだ、お互いにお互いの存在に気がついていません。


ここからはタスクのナノマシンによる活躍だけでは無く、他にも色々な面で活躍していくことになります。


引き続き、お読みいただければ幸いです。



続きが少しでも気になったり、ちょっとでも続きを読みたいなと思われた場合はブックマークをしていただけると励みになります!


また、評価もしていただけますと今後の展開などの参考とさせていただきますのでよろしくお願いいたします。

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