第16話 フィオナの村
その後、バザールに戻ったらもうダメだと思っていた女の人が快方に向かっていたり、水場の心配が当面なくなったり、などということが知れ渡ったせいか、フィオナは完全に生き神様という感じに祭りあげられてしまった。
おかげで、お礼の山……というよりもお供え物の山に困惑したり。宴とやらで1週間ぶっつけ付けで拘束されそうになったりといろいろあったが、なんとか無事にバザールを出立。
フィオナの村にたどり着いたのは、カレンとリックスを見送ってから半月以上も経ってからだった。
そうやって、オレが目にした村……というのは一言で言うとかなり悲惨なものに見えた。
ぶっちゃけ、荒野の難民キャンプという表現がぴったりだ。
というか、それ以外に言葉が思い浮かばない。
周囲の岩山に隠れるようにひっそりと掘っ立て小屋……というかテントに毛の生えたような建物が身を寄せ合っている。
岩の陰を利用しているのは壁材にさえもことかくのと、嵐などから身をまもるためだろう。
滅多に雨が降らないから、この程度でも凌げるのだろうが……そりゃ買い出しが定期的に必要なわけだ。
作物を育てて、人が定住出来る環境じゃない。
「ついた」
砂の民の馬車からひょいと飛び降りたフィオナが、ドヤドヤと掘っ立て小屋から出来た皆に手を振る。
「おお、姫様」
「お嬢、お帰り! 待ってたよって、どうしたんだい、この馬車」
先に荷を積んで先行していたカレンも顔を見せる。てっきり身体1つで戻ってくると思っていたらしく、一緒に来ていた2台の荷馬車を見て目を丸くしている。
「お、カレンか。無事に着いていたんだな」
「リアムかい。で、これは?」
「ん? ああ、領主様がな。砂の連中に恩を売ることに成功してな。その報酬だ」
出番が来たと察した砂の民の1人がすっと前に出て跪く。
スレンダーなカレンと同じぐらいの年齢の女性で、砂漠の女戦士という雰囲気だ。顔はぴっちりと布を巻いて隠しているのでよく見えないが、涼やかな目元を見る限り多分、美人。
「我らシーバの民は受けた恩は忘れない。これはささやかな礼だ。遠慮無く受け取って貰いたい。今後も何かあれば、支援は惜しまない。ぜひ、頼ってくれ」
「……驚いたねえ。何をやったんだい?」
「少し、水場の浄化をしただけ」
じゃれつく子供の相手をしながら、フィオナが応える。
「それだけではない。我が姉の命も救っていただいた。私個人としても感謝にたえない。何か出来ることがあれば、掟の許す限り何でもする」
「とにかく、助かったよ」
カレンは破顔すると、さっそく指示を出して荷馬車の荷物を下ろし始めた。
その日の夜、ようやくちょっとした宴会の??といっても生活に余裕があるわけではないからささやかなものだけどが終わった後??フィオナの家で俺は今後の計画を練っていた。
とにかく、この環境は酷すぎる。
無人島に身体1つで漂着した、サイラス技師一行並だ。
いや、環境的にもっと劣悪だ。
なにしろ、あっちは自然の恵みはふんだんにあったからな。
「どうしたの?」
部屋には他に誰もいないせいか、心話ではなく声に出してフィオナが聞いてきた。
(これからのことをね。考えてた)
「そう」
(まずは水の確保と住居かな。水はどうしてるの?)
「離れたところに小さな泉があるから、そこから」
(そこにどうして住まないの?)
「魔獣もその水場を使ってるから。夜にしか来ないから、昼のうちに水は汲めるけど住むのは無理」
なるほどね。まあ、こんなところだと魔獣も大変だ。
しかし、泉があるっていうことは水脈はあるんだな。そこから拝借だな。できれば村の中に確保したい。
水脈がどうなっているかをチェックしたいけど、さすがに土の中をあてども無くさがすのは無理だな……。
水場からナノマシンを侵入させて、地道にマッピングするしかないか。
(わかった。明日、その水場に案内してくれる?)
「ん」
俺を撫でながらウトウトし始めたフィオナを見つめながら、オレもトロトロと眠りにつくのだった。
明日からはいよいよ、忙しくなるぜ。
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