第13話 砂漠の情報網
「さて……おかけくだされ」
モゴモゴと髭だらけの顔を蠢かせて嗄れた声を出すと、傍らに控えていた若い娘さん……といっても20歳ぐらいだけどがすっと、縄を渦状に巻いて作った座布団のようなものを差し出した。
砂漠の文化は床に直座りらしく、椅子のようなものは見当たらない。
オレにとってはちょっと懐かしい風景ではある。
「遠路はるばる、ようこそ。追われし姫君」
「ん。月と太陽。水と砂。炎と樹。民と骨。調べ和み、調和となれ」
少しつっかえながら彼らの言葉でそういうと、手のひらを目に当ててすっと深くお辞儀をした。これが彼らへの敬意の表し方なのだろう。
「調和となれ――まだ、お若いのに我らのことをよくご存じだ」
「ん。以前、少し砂漠の人と縁がありました」
「サマーク・スルラ・モルクスですな」
「ん」
……この2人すごいな。なんでこんなに何でも知ってんだよ。可愛そうに、リアム完全においてけぼりじゃねーか。
「それで、竜の肋骨をお求めとか」
「そう。10本用立てて欲しい」
「さて。2本余分では?」
「おそらく、あとから必要になる」
「なるほど。しかし……あの者が言ったとおりでございましてな。今は少々、値が張るのです」
む。足下を見に来てるのか?
「どれぐらい?」
「50枚。白金貨で」
「おい! それは暴利ってもんじゃねえか!」
リアムの叫びは当然だろう。白金貨50つったら、あのハゲ親父が今は用意出来ないつった額と同じだからな。
「……精霊様に願い事?」
「聡いですな。なにゆえに新しい公爵様は貴女様を追放し、それでも飽き足らずに今もって弱みを握ろうとつけ回しているのかわかった気がいたします」
あ、そういうことか。
あの金額を口にしたってことは、あの遺跡で何を手に入れたか……そして、何が起こったのかを大まかにではあるが掴んでるぞっていうサインだったってわけね。
「……私にかなえられることじゃない」
「ですが、お取り次ぎは出来るのでは? ここに来るまでも加護をずっと受けておいでだ。あのような偶然……砂漠に詳しいものであれば、決して偶然とは思いませぬ」
こわ。
全部、バレてんじゃねえか。さすがにオレの正体までは無理だろうけど、フィオナの隣の黒猫が怪しいぐらいはとっくに知ってそうな雰囲気だな。
こりゃ、話を延ばしても誰も得しないわ。
(タスク)
(オレは別に構わないよ)
というわけで、オレはあっさりとフィオナにゴーサインをだした。
「わかった。お願いはしてみる。ただ、叶うかどうかは約束は無理」
「構いませんとも。それでは」
チラリと傍らの男性を見上げると、心得たというようにあっさりと竜の肋骨が天幕の外に積み上げられた。
竜と言うだけであってかなりデカい。2mぐらいはありそうだ。太さもリアムの太腿ぐらいはある。
こりゃ、結構な荷物だな。
「先渡しでいいの?」
「構いませんとも。帰る道は1つきりでございますれば」
……おっかないね。
「支払いも済みましたので、こちらへ」
そういって、俺たちが導かれたのは……いかにもと言った感じに装飾された一際大きな天幕だった。
中には妙齢の女性がうなされながらキツく目を閉じている。
病気イベントキタコレ。
来たけど…………オレは医者じゃ無いぞ? なんとかなるのか?
ならなかったら、ちょっとシャレじゃすまなさそうなんだが。
「……この人の治療?」
「いいえ。この者は……もう手遅れでございまする。砂トカゲの毒が腑まで回ってしまいました故に」
毒、か。
なら、なんとかなるか?
必殺、ナノスキャン!
心の中でミーっと効果音を出しながら、ナノマシンに全てを任せる。ほどなく、完全治癒まで一週間という答えが返ってきた。
細胞に後遺症を与えずに毒を消すのに数分。
現在受けている内臓の治癒に2日。
そして、これまでのダメージで受けてしまった血管系や神経系、リンパetcの正常化に5日。
よし、さっさと取りかかっちまおう。どうせ乗りかけた船だ。
オレが裏でそんなことをこっそりしているうちに話はずんドコ進む。
「竜の肋骨の代金は……この者のやり残したこと。つまり、水場の浄化……にございます」
なぬ?
そっちの方が大変じゃね?
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