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第2話 大陸暦1209年5月

 意識が覚醒していく課程で、ざわつきと気配をベッドの周囲に感じた。


「おっ。目を覚ましたぞ? こいつ女なのか?」

「多分そうだよ…」


 ベッドに半身を起こし、寝ぼけている眼を擦り、「あなた達は?」と、この失礼な者達に問いかけた。


「やっぱり、女の声だ」

「もう、女、女って、そんなに女が珍しいの?」

「当たり前だ。ここは国境を超えた騎士団(パラディン)を目指す騎士見習いが集う場所。女の来る場所ではない」


 一番体の大きい男の子が答えた。一応、話は出来そうなので挨拶することにした。


「私はナターリエ。同じく国境を超えた騎士団(パラディン)を目指す騎士見習いよ。あなたに認められなくても、モーリスさんには許可を貰っているわ」

「ふん。口だけは達者のようだが、訓練について来れなくても泣くなよ。それと一応は礼儀だから答えてやるが、俺の名はヴラジーミロヴィチだ。モーリスさんの指示で寝ているのなら、そのままベッドの上にいるがいい」


「俺はテオフィリュス。ヴラジーミロヴィチと、このシーグヴァルドが年長組だ。わからないことがアレば気軽に聞いてくれ」


 イケメンの男の子がテオフィリュスで、大人しそうな子がシーグヴァルドね。


「ベッドの上から失礼します。ナターリエと申します。これから、よろしくおねがいします」


 それから年少組と挨拶をする。私よりも背の低そうなハンプスと、笑顔が可愛いアルナウト。


 ヴラジーミロヴィチが不貞腐れているが、無視して他の男の子と雑談していると、モーリスさんが部屋に入ってきた。


「どうやら顔合わせの挨拶は済んだようだな。ナターリエ、これに着替えてから食堂に来なさい。そうだな…アルナウト、お前は残ってナターリエの面倒を見なさい」


 麻の生地で出来た訓練服を手に取る。そして、上着を脱ぎだしたところで、アルナウトが叫ぶ。


「ちょ、ちょっと!? ナターリエ!?」

「えっ!? な、何よ?」

「そ、その…お、男の前で…着替えるのって…」

「アルナウト? だって…もう仲間だし、家族や姉弟みたいなもんじゃない。それに、ほら、まだ女の体じゃないわよ」

「見せなくていいから!? 早く着替えてくれ!!」アルナウトは背を向けてしまった。


 着替え終えた私は、アルナウトに連れられ暗い通路を歩く。


「なぁ。負けん気の強い性格だってわかったけど、あまりヴラジーミロヴィチさんに逆らうなよ?」

「逆らうも何も…女の居場所じゃないと言われてどうすればいいのよ?」

「確かにそうだけど…」

「でも、忠告ありがとう。アルナウトは優しいのね」


 照れ隠しなのかアルナウトの歩調がやや早くなる。


 礼拝堂を改修した食堂は広く明るかった。出された食事はパンとシチューだけの質素なものだったが味も材料もしっかりとしていた。


 食事中の私語は厳禁だ。腹を空かせた騎士見習い達は、一心不乱に夕食を腹に詰め込んでいた。


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