第七十九話 武術訓練
石魂刀を見つけて無事に戻ってきた。
第七十九話 武術訓練
「翔鬼様ぁ~~!!」
大天狗邸に入った途端、敬之丞が飛びついてきた。
「翔鬼様。 石魂刀が見つかったんだな」
「おう。 飯は食ったのか?」
「食った」
「じゃぁ、石魂刀の使い勝手を見るついでに動きの確認をしたいので、訓練に付き合ってくれるか?」
「もちろんだ」
その時、清宗坊が走ってきた。
「翔鬼様、申し訳ござりませんでした」
「こうして戻ってきたから気にするな。 金治は?」
「あれ以降、誰も見た者がおりませぬ。 もうこの町にはいないものと思われます」
「そうか···なぜあんな事をしたのかを、訊いてみたかったのだが···」
「よく働いてくれる者だったのでござったのですが、残念でござります」
「さっ! 清宗坊も訓練に付き合ってくれ」
「はっ!!」
堂刹とぬらりひょんにも戻った事を報告し、少し訓練をしてから出発したいと伝えた。
もちろん堂刹は自分を連れて行ってくれなかった事に文句を言ってきたが「すまん」の一言で片づけてやった。
◇◇◇◇
抗牟と宝蘭も呼んで、訓練を始める。
いつも大天狗邸の中庭で武術訓練をしていたのだが、進化した頃から何度か建物を壊しそうになったので、清宗坊に訓練場を結界で作ってもらっていた。
堂刹に教えてもらって、八岐大蛇がいる火口の大きさと同じくらいの広さにしてもらったのだ。 小学校の体育館の二倍ほどの広さか。
「結構広いな」と言うと「本体がいないからそう感じるんだ」と言っていた。
翔鬼対6人で、一斉に攻撃してきてもらう。
抗牟は相変わらず変則的な飛び方をして捉えにくく、見えない足場を投げて攻撃までしてくる。
鵺王になってから出来るようになったらしいのだが、見えない足場が飛んでくると避けようがない。 初めの頃は何度も当てられた。
慣れてくると近づいたときに気配が分かるようになったので、やっと最近になって避ける事が出来るようになった。
そして抗牟は人数が多いので気を使って時々狒々の姿になる。
大きな鵺王の姿が急に狒々になると、姿が消えたように見え、鵺王の姿に戻ると突然現れたように見える。
その話しをすると敬之丞が真似し始めた。
彼も6m以上の姿が急に1m弱の姿になるので、消えたように見えた。 面白がって何度もするので、やりすぎると相手が慣れてしまう。
「本番ではいざという時にだけするようにしないと相手も慣れてしまって、ここぞと言う時には効かないぞ」と注意をした。
また敬之丞には毒針がある。 もちろん訓練中は毒を塗っていないのだが、何本も束になって飛んでくるので、防御結界を大きな盾のようにして塞がないといけない。
また厄介なのは蜘蛛の網だ。 一瞬動きを止められてしまう。
網を飛ばして来たら上手く避けるか長刀に巻きつけてから放り投げるしか方法はない。 ただ炎に弱いそうだ。 網を体に巻きつけられたまま火をつけられるとちょっとまずい。 もちろん訓練中はしないけど···
消えるといえば清宗坊だ。 こちらは天狗の団扇を使って本当に姿を消す。
ただし、姿を消している間は攻撃は受けるがこちらからの攻撃ができないそうだ。
しかし、清宗坊の剣術の腕は相当なものなので、突然目の前に現れると、堪ったものじゃなかった。 それに大天狗の翼は飛ぶためではなく、舵のような役目をする。 そのため、抗牟ほどではないものの、機敏な動きに翻弄される。
そして清宗坊は風を使う。 [かまいたち]のような鋭い風で攻撃してくるのだ。 団扇を使う事もあれば刀から鋭い風をくり出す事もあり見えにくい。
近くても離れていても、片時も気を休める事が出来ない相手だ。
宝蘭はどちらかといえば飛び道具が得意なようだ。
進化してからは風、水、氷、炎、岩、そして前から得意だった雷。
どれも攻撃の早さも軌道も違うために捉えにくい。 基本は盾状にした防御結界で防いでいるが、前から来たと思ったら、後ろからも攻撃してくるので厄介だ。
ただ、出来るなら飛び道具だけでなく直接攻撃も同時にした方が効果があるとみんなに説得されていた。
白鈴の剣技は流石だ。 進化して尻尾が増えた事に何かメリットがあるのかと思っていたが、動きの切れが半端なく良くなっている。
妖気が増えた事も要因の一つではあるのだろうが、尻尾は舵、均衡、そして遠心力による素早さも関係してくるため、動きが鋭くなっている。
そして進化後は氷を扱えるようになっていた。
小刀の様な形に造られた氷は、鋭く正確に飛んでくる。 また少し形を変えると、ブーメランのように投げた方向とは違う方向から飛んできて危険だ。
「氷の女だな」と、ふざけて言うと、木刀で殴られた。
実は翔鬼にとって一番厄介なのは白狼だった。
四枚の翼での飛行は予測不能で早い。 そしてかなりの努力の結果、二刀流の剣技は相当なものになっている。
また、水が使えるようになっていた。
角から飛び出す水は目にも止まらない速さで飛んできて翔鬼の身を斬る。
そう、翔鬼が防御結界を張っているにもかかわらず、それを通り抜けて翔鬼の身を斬るのだ。 体を覆っている防御結界は勿論、盾状にした強力な結界まで通り抜けてくるのだ。
白狼の水は、結界を切り裂く。
···だから俺に向かって「白狼は水禁止!」してやった···
とりあえず、この六人の同時攻撃をどうにか躱す事が出来るほど、翔鬼は格段に成長していた。
◇◇◇◇
訓練を終えて、縁側で体を拭いていると、堂刹とぬらりひょんが来た。
翔鬼は「よぉ!」と手を挙げてから、後ろから慶臥が付いてきているのに気付く。
翔鬼はどういうことだと堂刹を見た。
「こいつがどうしても翔鬼殿に話しがあるといって効かんから連れてきた」
慶臥は縁側にいる翔鬼に向かって走っていき、その足元の地面にひれ伏した。
「御方さ···八岐大蛇の手下の者が少し前に接触してきました。
富士の山の麓に全員来るようにと招集がかかりました。 皆さんが襲撃に来る時期が迫ってきたことを知っての招集です。 多分手の者達を盾にするつもりだと思います」
「卑怯な奴だ」
「勝手なお願いと分かっておりますが、俺のように無理やり従わされている者も少なくありません。 温情をお願いいたします」
翔鬼は驚いた。 こんな時にでも他の者達を気遣う事が出来る者だとは知らなかった。
「うん。 考えておく」
「ありがとうございます」
地面に頭を擦り付ける。
「今一つ、翔鬼殿と与作殿に今一度御礼と謝罪がしたくて参りました」
慶臥は地面に頭を擦り付けたままだ。
「何度もしてもらう必要はないぞ」
「いいえ···何度も危険な目に会わせたにもかかわらず、不問にしていただき、まことにありがとうございました」
「後悔もしているようだし、藤華さんに免じて許す。 それに堂刹から散々殴られただろう? もう充分じゃないのか?」
その時、翔鬼に呼ばれて与作が走ってきた。
「慶臥殿、ちょうど話し忘れた事があったのです」
「俺に···ですか?」
与作は地面で正座している慶臥の前にポンと降りた。
「藤華さんの薬草畑ですが、よく手伝いに来てくれていた吾平さんが面倒を見てくれています。 紫焔様が戻るまでは、任せて下さいと言っていました。
彼は貴方を待っていると思いますので、一度行ってあげて下さい」
「吾平さんが···分かりました。 俺が生きていたら必ず行きます」
その言葉を聞いて今度は翔鬼が降りてきた。
「生きていたらとはどういう事だ? 何かあるのか?」
「あ···」
慶臥は少し気まずそうに言いあぐねている。
「俺は···八岐大蛇の配気によって進化し、そのお陰で腐滅病が治りました。 今度の戦いで万が一奴が生き残ったなら裏切った俺は真っ先に殺されるだろうし、奴が死んだ時には、奴に施された【気】は消えるでしょう。
【気】が消えた時に俺がどうなってしまうのか···俺の中にある腐滅病がどうなるのかも分かりません。
覚悟はできていますが吾平さんが藤華の畑を護っていてくれたとは···夢にも思わず···嬉しいです···出来る事なら···戻りたい···」
下を向いたままの慶臥は泣いているようだ。
翔鬼はどう声をかけてよいのか分からず、慶臥の肩をポンポンと叩いた。
慶臥には、同情します。(TДT )
翔鬼を描きました。 今までと顔が違う?!
気にしないで下さい(;^_^A
私の精一杯です( ;∀;)




