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第七十五話 なくなった魂手箱

八岐大蛇が悪巧みを考えている!


 第七十五話 なくなった魂手箱(たまてばこ)




 八岐大蛇の前に一人の妖怪がひれ伏している。


「誰一人殺せなかったというのか」

「あれだけ気を練ったというのに」

「ただ、随分時間を稼ぐことは出来た」

「あと少しだというのに···」

「我らには結界があるから大丈夫だろう。 そう簡単に我らの結界を破ることなどできる訳がない」

「そうだ。 四神でさえ破ることが出来なかったのだからな」

「類稀(たぐいまれ)な【気】を持つ鬼神を侮(あなど)るな!」

「そうだ···万が一という事もあるからな」

「しかし、まだもう少しかかりそうだな」



 八岐大蛇は自分の足を持ち上げようとした。


 ゴゴゴゴゴバキバキバキ


 周りの岩が崩れるが、まだ指先が地面に食い込んで離す事ができない。



挿絵(By みてみん)



 その時、もう一人、妖怪が入って来た。


「報告いたします!! 慶臥(けいが)様を見つけました」


「どこにいたのだ?」

「はい。 酒呑童子様の御屋敷で働いておいでです」

「なんと···」

「何度も失敗して、雲隠れしておっただけなのか?」

「定期連絡もなく裏切ったのかと思っておったぞ」


「今は酒呑童子様の説得をしておられるそうです」

「ほう···酒呑童子に殺されておらんだけ信用されておるのようだな」

「上手く説得できれば、あちらは分断されて崩れるな」


「もう一つ、噂によればもう直ぐこちらに攻撃を開始するのではないかとの事です」

「なんと! もう少し時間が欲しい!」

「何か策はないものか···」


「そうだ、奴らが一生懸命探していたという石魂刀(せっこんとう)があったな。 あんなもので我らが負けるとは思わんが、あれを奴らに分からない所に捨ててしまえば、また躍起になって探すのではないか?」

「それは面白い!」

「時間も稼ぐことが出来るし、いい考えではないか」


 炎の属性の赤目が足元にひれ伏している小さな妖怪に向かって命令を下す。


「類稀(たぐいまれ)な【気】を持つ鬼神が持っている石魂刀を何とかして盗み出し、見つからない所に捨てて来い」


「「はっ!」」


 


 ◇◇◇◇◇◇◇◇




「さて、この後どうする?」



 最後の影之丞(かげのじょう)も元の姿に戻り、野次馬達も鬼達に追い立てられて帰っていき、翔鬼達だけになっているところで堂刹(どうせつ)が翔鬼に聞いてきた。



「そろそろ朝の季節だろう? 朝飯を食ってから行こうか」

「じゃあ、余の所に食いに来いよ」


 鬼や鬼神達と一緒に食事をしたいのは山々なのだが、またダラダラとして出発しにくくなる。


「朝飯は清宗坊の所で食う。 行く前に石魂刀を使った体の動きを確認もしたいから、終わったら連絡する」

「···そうか···わかった」


 相かわらず寂しそうで何だか可愛い。


「八岐大蛇を退治したあと、盛大に祝賀会をしてくれ」

「お!! おう!! 任せろ!!」


 堂刹の扱いは、手慣れたものだ。



 ◇◇◇◇



 敬之丞(たかのじょう)も自分の訓練は終わったという事で、一緒に大天狗邸に付いてきて、一部屋もらって喜んでいる。


 生まれてこの方、屋(・)敷(・)で暮らしたことが無いので珍しくて仕方がないらしい。



···暫くの間、大人しくしていてくれそうでいい事だ···




 ◇◇◇◇




「いよいよだな···この布団に寝るのも最後だと思うと少し寂しい気もするな···」


 翔鬼は布団にドカッと寝転がる。



···?·········何かが違う気がする·········



 翔鬼は部屋を見回し、ガバッと立ち上がる。


「あぁぁぁぁぁぁぁっ!!! 魂手箱(たまてばこ)がないぃぃっ!!!」

「なんだと?!!」


 白狼が慌てて寝室に掛け込んだ。 確かに翔鬼の魂手箱があった場所には何もなく、白狼の魂手箱だけがポツンと置いてあった。


「翔鬼、こっちのではないのか? 一度箱を開けてみろ」


 開けてみるが当然中は空で石魂刀は入っていなかった。



「···どうする···どうすればいい···どこを探せばいい···白狼、どうすればいい?···どこを探せばいいんだ?」



 完全にパニくってしまって何も考えられない。 そうだ、清宗坊だ!


『清宗坊!! 石魂刀が入った魂手箱が無くなった!!』

『??!!!』


 遠くからドダドダドダ!!と、凄い足音が迫ってきて、バンッ!と扉が開いた。


「翔鬼様!! 石魂刀が無くなったというのは本当でございますか?!!」


 普段、感情を見せない清宗坊がこんなに慌てふためいている姿は初めて見る。

 大変な事になっている事を忘れて吹き出しそうになるのを堪えた。


「う···うん···魂手箱ごと無くなった」

「·········」


 清宗坊が茫然(ぼうぜん)と突っ立っている所に、数人の使用人が走ってきた。 


「金治は見つかりません」

「皆様が町に行かれた頃から誰も見ておりません」

「今一度、全ての部屋を見て回りますが、今のところ何も···」


 

···ボ~っとしていたのかと思ったら、皆に指示をしていたのか···



「翔鬼殿、この部屋に入った者の痕跡は今のところ金治だけです。 彼の仕業とは思いたくはありませんが、姿も見えないため、可能性が高いかと···」


 その時、白鈴が入って来た。


「何をバタバタしているの?」

「石魂刀が入った魂手箱が無くなった」


「??!!」


 白鈴は大きな目を一層大きくして驚いている。


「あれは違うの?」


 白狼の魂手箱を指差した。


「違う。 開けて確かめた」

「ちょっと!! やっとの事で探し出したのに、どうするのよ!!」

「どうしよう···」

「とにかく、ぬらちゃんを呼びなさい!!」



 翔鬼はぬらりひょんを名寄せした。

 若返っても、行動は変わっていない。 正座したまま茶をすすっていた。



「おや······何かありましたかのう?」


 湯飲みを置いて立ち上がってきたが、只ならぬ雰囲気に眉を寄せる。



 清宗坊が突然ひれ伏し、頭を擦り付けた。


「申し訳ありませぬ!! 拙者(せっしゃ)の監督不行き届きで石魂刀が盗まれたのでござりまする!! 申し訳も!! 申し訳も!!」

「なんと!」


 ぬらりひょんは翔鬼と白狼の顔を見る。



「どういう事ですかな?」


「ここに石魂刀を入れた魂手箱を置いていたのだが、魂手箱ごと持っていかれた。

 俺達が石になった町の者達を助けている間に···」






どこに行ったのでしょう?!( ̄□||||!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 誤字無しです!( ̄- ̄)ゞ [一言] はなまる。(@^▽゜@)ゞ
2020/07/13 19:35 退会済み
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