第六十七話 意外な報告
なかなか面倒な宝蘭だ!
第六十七話 意外な報告
しかし日が沈みかけた空に宝蘭の真っ白な体は目立つ。 白狼は目立たないように既に黒い色になっている。
「なぁ宝蘭、小さくなるか暗い色になれないのか?」
「もちろんどちらもできるけど、私の自尊心が許さないわ」
「あまり目立つと幽鬼の標的になるんだ」
「あら、幽鬼の攻撃は無効になったんじゃないの?」
「そうだけど···」
···面倒だからいいか。 大丈夫だろう···
途中、高い木が少ない場所を通った時に、案の定幽鬼に見つかった。 二体迫ってくる。
「任せなさい」
宝蘭がそう言うのでまた幽鬼の冷気を浴びに行くのかと思っていたら、バチバチと火花が散り始めた。
どういう事だと思っていると、宝蘭から稲妻が飛び出してドンド~ンと二体の幽鬼を貫いた。
···雷を扱えるのか···
宝蘭は得意げな顔をしていて翔鬼は感心する。
しかし他の三人は違うようだ。
「バッ!! バカ野郎!!」
珍しく白狼が激怒している。
清宗坊は大きなため息をつき、抗牟は唖然としていた。
···なんで? 遠くから攻撃できるのだから配気の必要がないという訳だ···いい事じゃないのか?···
宝蘭もなぜ三人が怒っているのか分かっていないようだが、白狼は怒りが収まらない。
「お前!! 幽鬼を呼び寄せてどうするんだ!! 以前、数百、数千の刀を持つ幽鬼に二度も襲撃されて大変だったんだ!! 一体二体は確かに問題ないが奴等には見つかればまた群れで襲撃される可能性がある! 俺は御免だ! 幽鬼とはそういう妖怪なんだ、覚えておけ!!」
そうしている間にも四方から十数体の幽鬼が集まってきていた。 白狼は一睨みして飛んでいき、清宗坊と抗牟もため息をついて幽鬼に向かって飛んでいった。
···そういう事か···ハハハ···
なぜ怒っているのかが分からなかった自分がちょっと恥ずかしい。
「行こうか」
シュンとしている宝蘭を促して、翔鬼も幽鬼に向かって飛んでいった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
難なく幽鬼達を倒してからは、宝蘭が大人しい。 そのうえ白狼の様に黒い姿に変わった。
それを見て白狼が口の端で笑い、宝蘭に親指を立てて見せた。
「白狼さん、それは何かの御呪いなの? 始めて見ましたわ。 どういう意味がありますの?」
宝蘭に聞かれて白狼がアタフタしながら説明をしている姿は何だか微笑ましい。
それからは白狼と宝蘭がずっと喋っている。 途中から静かになったと思ったら思念通話を交わしたようで、時折笑い声だけが聞こえてくる。
今まで殆ど喋らなかった白狼に話し相手が出来たようで、何だか嬉しかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
また堂刹が思念通話で話しかけてきた。
『翔鬼、元気か?』
『元気だよ。 あぁ、七尾狐は勾玉を持っていた。 今、彼女と一緒に帰っている』
『そうか! それは良かったな。 こっちも報告がある』
『なんだよ。 誰かと飲んでいるのか?』
『ククククク』
もったいぶって素直に話し出さない。
『だから、報告って何だ?』
『驚くなよ。 ククククク』
···やけに楽しそうだが、サッサと話せよ!···
『ここに誰が来ていると思う?』
『だから何だよ···ぬらりひょんか?』
『はずれぇ~!! なんと、慶臥が余を訪ねてきた』
『えぇぇぇ~~~っ!!』
これには驚いた!!
『どうしてだ? 八岐大蛇の手先という事がばれていないと思っているのか? いや、そんなはずはない。 慶臥から八岐大蛇の情報をくれたんだ。 堂刹、どういうことだ?』
『ククククク、驚いただろう。 余も驚いた。 懺悔したいんだとよ』
『懺悔?』
『おう! とりあえず死なない程度に殴っておいたから、翔鬼が戻ってきてからゆっくりと話しを聞こう』
···死なない程度にって···慶臥に同情してしまう···
『わかったからもう殴るなよ』
『もうダメか?』
『当たり前だろ!! 多分、太陽が沈み切る頃には帰れると思う』
『承知した。 待っているぞ』
その後二度ほど幽鬼に会ったが、問題なく倒し、東の国の江の坂町に到着した。
◇◇◇◇◇◇◇◇
先に敬之丞の所に行くと、例のごとく飛び掛かってきたのだが、今度は目の前で小さくなって翔鬼の胸にしがみついた。
「翔鬼様! 帰ってきたか」
まるで猫がスリスリするように頭を擦り付けてくる。 そのうちゴロゴロ聞こえてきそうだ。
「訓練は順調か?」
「おう! もう少しだと言っていた」
「そうか。 頑張れ」
「ところでその綺麗な妖狐が八人目か?」
「宝蘭だ。 宝蘭、こいつは敬之丞」
「フフフ、よろしく」
なぜかやけに機嫌がいい。
『何かあったのか?』
白狼に聞いた。
『敬之丞の『綺麗な妖狐』がお気に召したようだ』
『へぇ~~』
「翔鬼様、ぬらりひょんの家に行くのか?」
敬之丞が翔鬼の胸から離れて飛びながら聞く。
「今回は堂刹の家だ」
「俺も行くぞ」
「いいだろう」
街中に入ると、妖怪達が道を開けてくれる。 宝蘭がデカいせいなのか、目立つせいなのか?
てっきり宝蘭のせいだと思っていたが、道を開けた妖怪からヒソヒソ話が聞こえてくる。
「翔鬼様だ」
「あの方が五本角になられた鬼神様だ」
「翔鬼様が凄い妖怪を引き連れておられる」
···俺?···
しかしその中に「綺麗な妖狐だなぁ」という言葉が聞こえてきて宝蘭は御機嫌にフフンと鼻を鳴らしていた。
先ずは宝蘭に耳飾りのお金を渡すために大天狗邸に入る。
清宗坊と抗牟、敬之丞には先に酒呑童子邸に行ってもらった。
慶臥は殴られるのを承知でなぜ来たのだろう?
( ゜ε゜;)




