第六十話 二人目の鵺
石魂刀をゲットした! しかし、石魂刀で石にされていた大きな妖怪が現れた!!
第六十話 二人目の鵺
「石魂刀ゲットだぜ! 見ろよ、刀というより剣だよなカッコいいと思わないか?」
白鈴達の所に降りて石魂刀を見せていると、突然白狼が叫んだ。
「翔鬼!! 後ろ!」
振り返ると石魂刀が刺さっていた大きな石が揺らめき始めた。
幽鬼に石にされた者は石の部分が氷が解けるように沈んでいくのだが、これは硬い石が泥のように柔らかくなっていき、ドロ~~ッと流れ落ちてくる。
離れて見ていると···デジャブ?···抗牟と同じ鵺が姿を現した。
その鵺が翔鬼と石魂刀を見るなり襲ってきた。
「きぃさぁまぁーー!!」
「おい! 待てよ!!【縛】!!」
鵺は飛び掛かってこようとするなり捕縛術をかけられ、突如四肢の動きを封じられたものだから、前のめりに顔からズドン!と床に突っ込んだ。
···おっと痛そう···
直ぐその後ろから尾の蛇が襲ってくるので翔鬼は一歩下がる。 経験済みなので予想が付いた。
「どうして怒っているんだ? 落ち着けよ」
「きさまっ!! 放せ!!」
すると、どこかでピキピキと音がする。 何の音だろうと思っていたら、パン!! と捕縛術が弾け飛んで鵺が再び飛び掛かってきた。
「わぁ!!【縛】【縛】【縛】【縛】」
重ねて術をかけて、ついでに尻尾の蛇も体に縛り付けた。
「なあ!! 落ち着けよ! お前、この村を襲って石魂刀で石にされたのか?」
「何を言う!! 裏切り者!!」
翔鬼は腕を組み、溜息をついた。
「俺はお前を裏切ってはいない。 ついでに言うとお前に会ったのも今が初めてなのに、どうやって裏切るんだよ」
突然の騒動に、抗牟が祠の中を覗き込む。
「鴻醍殿!! 鴻醍殿ではないか?!!」
抗牟が祠に顔を突っ込んで縛られている鵺に向かって叫んだ。
「そなたは···抗牟殿···か?」
「そうです! なぜこんな所に···」
二人の鵺は知り合いのようだ。
「なぁ抗牟···鴻醍ってさっき言っていた先々代の長?」
「はい、そうです」
「無責任にどこかに行ってしまった奴がどうしてこんなところで石にされているんだ?···もしかして先代の鬼神のせいか?」
鴻醍はガクッと肩を落とす。
大丈夫そうなので捕縛術を解いてあげた。
「よくご存じですね。 情けないですがその通りです。 鬼神の是傲はフラリとこの村に来て居着きました。 私の助手と自称して色々な仕事を手伝ってくれていました。 よく働くので助かっていたのですが、ある時この場所に呼び出して突如襲ってきたのです。 完全に油断していました」
抗牟がその後の経緯を鴻醍に話した。
「是傲は鴻醍殿が村の住人に断りもなく黙って村を出て行ったと言って困り果てている様子だったので、村の住人達はずっと鴻醍殿について仕事をしていた是傲を長にしたそうです。 始めはいい長のふりをしていたそうですが、いつしか是傲は十数人の鬼を村に引き込み、住人達を無理やり働かせて採れた金を独り占めししたのです」
「是傲が?!」
「私はあまりにも皆が疲弊した様子に耐えられなくなって、是傲を殺し、鬼達を追い払って私が長になりました」
「抗牟殿が···それは良かった」
「そしてこちらの翔鬼殿が鴻醍殿に刺さっていた石魂刀を引き抜いてくださったのです。
もちろん鴻醍殿が石にされているとは知らずにですが···鴻醍殿が石にされている間に色々ありまして、詳しい事は後ほど話しますが、翔鬼殿はこの村の住人全員の恩人でもあるのです」
そう言えばと、鴻醍が翔鬼達の方に向き直る。
よく見ると、同じ鬼神でも五本角である事に今気が付いた。 それに三本尾の猫娘に、角があり二対の翼を持つ白翼狼。 どの妖怪も押さえてはいるが妖気が半端ではない。
「御聞きだと思いますが、私は鴻醍と申します。 以前長をしていました。 私も含めて助けて下さってありがとうございます」
「俺は翔鬼、白鈴と白狼と与作だ。 石魂刀を探してこの村に来た。 これは貰ってもいいよな」
抜身の石魂刀を前に差し出して見せる。 鴻醍は目を見張ってからニッコリと笑った。
「それは是傲が持っていた刀···もちろんでございます、どうぞお持ちください」
「よっしゃ。 それと、ちょっと聞きたいのだが、二人の体に勾玉なんてついてないよな」
「あっ···なぜそれを? 私の足に···」
抗牟の右後ろ足の膝のあたりのに茶色の勾玉があった。 虎の縞模様に紛れて見えにくかったのだ。
「本当だ、抗牟だったのか! よっしゃぁ! 七人目ゲットだぜ!!」
「それはどういう···?」
「話しは長くなるから、どこか落ち着いたところで話そう」
翔鬼に言われて、分かりましたと皆を促す。
「鴻醍殿の顔を見れば皆が喜びます、行きましょう。 翔鬼殿達は私の屋敷においで下さい」
◇◇◇◇◇◇◇◇
鴻醍を見た村の住人達が駆け寄って喜んでいる。 喜び具合から見てもいい長だったことが分かる。
大きな鵺の鴻醍に沢山の妖怪が群がっているのを見ながら抗牟の屋敷に入った。 抗牟が大きいので部屋は広いが、今までに招かれた村長の家と変わらなく、質素な屋敷だ。
「先代の是傲は贅沢好きでこの屋敷は金張りにされていました。 そしてこの先の農地にも何棟もの離れや蔵が建っていたのですが、私が屋敷に張ってあった金を剥がし、無駄な建物を壊して農地にしたのです。 ですから少し貧相な家ですみません」
···鵺っていい奴だ··
抗牟の屋敷の居間に落ち着くとタヌキがお茶を運んできた。 この屋敷の使用人は動物が多い。 自分も色々な動物が混ざっているような容姿だからという事でもないだろうが···
タヌキの名前は啄諾というそうだが、啄諾が翔鬼が持っている抜身の剣を見て「あっ」と言った。 それに気づいた抗牟が問う。
「どうかしたか? 啄諾」
「その刀は···是傲様の···」
「よく知っているな。 この石魂刀で是傲が鴻醍殿を祠にある石にしていたのだ」
「な···なんと···」
それだけ言うとなぜか啄諾は慌てて出て行った。
「それで、お話しとは?」
抗牟が切り出した。 大きな抗牟が座ると広い部屋が狭く感じる。
じゃあ私から話すわと、白鈴が話しだした。
先ずは自分が白虎だという事から、翔鬼が類稀な【気】の持ち主で翔鬼と白狼は人間界から来た事。
そして様々な試練を乗り越えて今のような強い妖怪になれた事。
八岐大蛇と幽鬼が関係している事や、八岐大蛇を倒すために必要な石魂刀と八人衆を集めている事などをかいつまんで話した。
「私が七人目なのですか」
「そうよ。 もちろん協力してくれるわよね」
しかし、抗牟は暫し逡巡する。
「···もちろん八岐大蛇を倒したいですし協力したいのは山々ですが、私のような者で役に立つのでしょうか? 皆さんの妖気には遠く及びません。 足手まといになるだけだと思うのですが···」
「そうだったわね···翔鬼、配気を」
「おう」
翔鬼は抗牟の右の後ろ脚の前に行った。
「抗牟、立ってくれるか?」
立ち上がると、抗牟の腰の高さが翔鬼の身長と同じくらいの高さで、かなり大きく感じる。
ちょうど目の前にある茶色の勾玉に手を触れた。
「我が力を分け与える···【配気】!」
「お···おおぉぉぉ······」
抗牟は暫し恍惚の表情で、青くて太い蛇の尻尾だけがクネクネと動き回る。 そうしているうちにムクムクと体が一回り大きくなり、今までなかった二本の大きな角が生えてきた。
「これで幽鬼の攻撃を受けても石になる事はなくなったし、これだけの妖気があれば十分だろう」
「あ···あ···ありがとうございます」
「八岐大蛇は回復のために今は動けないが、明日の昼の季節が終わるまでに奴は自由に動けるようになるらしい。 だからそれまでには招集をかけるので、言霊【名寄せの制約】と【思念通話】を交わしたい」
「もちろんです」
ついでに白鈴、白狼、与作とも思念通話ができるようにした。
鵺って、いい奴だ!
(*⌒∇⌒*)




