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第六話 鎌鼬

翔太とシロの二人旅が始まった。

どうなっていくのでしょう。

第六話 鎌鼬(かまいたち)




「行っちゃったね···」

「仕方がない、私たちも行くか」

「うん」



 二人は森の中をトボトボと歩き出した。 時々差し込む真昼の陽ざしが心地いい。


 歩きながら知識の本に人間と妖怪の関係について聞いてみた。



《妖界にはたまに人間界から動物や人間が迷い込む。 人間には力はないが知恵がある。 ある時人間が知恵を使って妖怪に取り入り、引き込み、操った。


 人間は欲深く、宝と権力を好む。

 妖界の宝をかき集めて一人占めし、それを元に妖界の頂点に立とうとした時、新たな人間がやってきた。 大きな犬を従えたその人間の欲望もすさまじかった。


 彼も同じように妖怪を引き込み、妖界の頂点に立とうと目論み、敵対する人間が率いる妖怪達とあわや戦争になるという時に現れたのが妖怪の長である〈ぬらりひょん〉だった。


 ぬらりひょんが異を唱え妖怪を説得した結果、我に返った妖怪達は二人の人間と犬を殺した。


 それ以来、妖怪達は人間を目の敵にし、迷い込む人間と犬は必ず亡き者にされた》



 翔太はシロに知識の本から聞いた話しを伝えた。


「···だってさ···ぬらりひょんって妖怪のボスなんだね···でも僕は宝なんていらないのに···帰れればそれでいいのに···」

「そうだな。 しかし人間には欲深い者が確かにいる。 翔太に欲がないとしてもそれを妖怪に見極めろという方が無茶だろう」


「そうだね······」


 翔太は大きな木の根の上に座ろうと思ったが、コケが多くて湿っている。  座りやすい場所を探してみると木の根の上に石のように硬くなっている所があったので、そこに座った。



 すでに5分(1日と少し)が過ぎていたので、相変わらず疲れはないが休憩を取ろうと座ったのだ。


「でも本当にぬらりひょんっているんだね。 [ぬらりひょんの○]とか[ゲ○○の○太郎]とか、[うし○と○ら]でも出てくるけど、本当に···わっ!!」


 翔太が慌てて立ち上がる。


「どうしたんだ?!」


 シロも慌てて身構えた。


「これが動いた!」


 翔太が座っていた木の根の上にある石を指差す。


 二人は目を凝らしてみていると、もぞもぞと動き出した石が薄茶色の動物に変化していく。 


 やけに体が細く、尾も長い。 そして体だけで1.5mほどのイタチのような姿になっていく。

 そして刀のようなキラリと光る刃がついている尾は1mほどの長さがあり、本物の刀より切れそうだ。


「あっ! もしかして[鎌鼬(かまいたち)]?!」


 翔太が叫んだ。 [うし○と○ら]によく似た妖怪が出てきたのだ。


「だれだ?! あっ! 人間!! 兄と妹をどうした!!」


 鎌鼬は鋭い刃の付いた尾を前に出して構える。


「えっ? お兄さんと妹? そうか! 鎌鼬(かまいたち)って三兄妹なのはここでも同じなんだね。 でも、お兄さんと妹は一緒に石にされてないの?」


 当然のように聞いてくる翔太の問いに「俺が最初に石にされたから分からない」と、構えたままだが素直に答える。


「なぁシロ、臭いで分からないのか?」

「分かっていたら、翔太が座った地点で分かっていただろう」

「そうだよな···う~ん···とりあえず、鎌鼬(かまいたち)くらいの大きさの石を探そう!」



 翔太は鎌鼬(かまいたち)に向かって、ニッコリと笑った。


「実は、僕って石になった(妖怪)を元に戻せるんだ。 シロもそうだし、気付いていないかもしれないけど君も僕が戻したんだよ。 だから、君のお兄さんと妹の石を探し出す事ができれば元に戻るんだ。 だから君も一緒に探そう!」


 それだけ言うと、返事も聞かずにシロと一緒に探し始めた。



 鎌鼬は唖然としたまま翔太達を見つめる。


『人間というのは恐ろしい生き物だと聞いていたのに···なぜ当然のように俺の兄妹を探してくれる? なぜ妖怪を助けてくれる?』



 その時シロの呼ぶ声が聞こえた。


「翔太! こっちに来てくれ!」


 鎌鼬(かまいたち)も慌てて駆けつけると、木の根の下に潜り込むように細長い石があった。

 見ようによっては獣のようにも見える。


 木の根を潜り、藪を避け、やっと翔太が駆けつけた。


「どこ?」

「この石だが鎌鼬(かまいたち)に見えないか?」


「とにかく触ってみるね」


 鎌鼬(かまいたち)固唾(かたず)を呑んでみていると、その石の表面がザワザワし始め、フワフワな薄茶色の毛が現われてきた。


「やった!! シロ、正解!」


 今度は鎌のない大きなイタチの姿だ。 どうやらメスのようにも見える。


癒医(ゆい)!」

斬切(ざんせつ)兄さん?」


 メスは癒医、オスが斬切というのか。 癒医の方が少し小ぶりだ。



挿絵(By みてみん)



「俺たちが石にされていた所を、彼らに助けていただいたのだ」


 そう言われて癒医は人間と犬がいる事に初めて気が付いた。


「あっ! 人間···えっと···本当にこの人達が?」


 斬切は癒医と並んで翔太達に頭を下げた。


「なんと御礼を言って良いか···」


 すると翔太が手をクロスさせる。


「そんな事はあとあと! 先にお兄さんを探さなきゃ! 君達はあっちの方を探して!」


 そう言うと翔太はシロと反対側に走っていく。


「斬切兄さん···あの方たちは···」

「とにかく兄さんを探そう。 最後に見たのはどこか覚えているか?」


「分からないわ。 一緒にいると危険だからと別々に逃げたから···」

「そうか。 とにかく探してみよう」


 4人は随分探したが、結局お兄さんらしき石は見つからなかった。




「残念だね···もしお兄さんらしい石を見つけたら、僕に言いに来て。 戻してあげるから。 あ···でも電話もないし、住むところもないから連絡のしようがないなぁ···」


「多分兄は逃げる事が出来たのでしょう」

「それならいいけど······じゃぁ、またね」

「「待ってください!!」」


 斬切と癒医が呼び止める。


「今からどちらに行かれるのですか?」


 翔太はシロと目を合わせた。 言っていいものかを確認すると、シロがわずかに頷いた。


「えっと···青龍の所に行くんだ」


「「お供します」」

「「えっ?!」」


 翔太とシロは驚いた。 妖怪が御供するなんて想像もしていなかった。


「貴方様は武器をお持ちでないようにお見受けします。 妖界で丸腰は危険です。 その点俺は微力ながら攻撃ができますし、癒医はケガの治療ができます。 御供としてお連れ下さい。 お願いします」


 二人は同時に頭を下げる。


 翔太はどうしたものかとシロに返事を求めた。 


「いいんじゃないか? 旅の友が出来るのも悪くないし、私たちよりはこの辺りに詳しいだろう」


「シロがいいというんだったら、いいよ」



 という事で、4人の旅が始まった。




鎌鼬が仲間になりました。 心強いですね!!

( =^ω^)

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