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第三十九話 本当の狙いは?

無事に夢から生還できた。 しかし狙われたのは俺?!


 第三十九話 本当の狙いは?




 翔鬼と白狼の無事の帰還を喜び合ってから、今はみんなで居間に座って運ばれてきたお茶をすすっている。


夢夢(むむ)、本当にありがとう」

 

 白狼と翔鬼は頭を下げると、とんでもないですと、(ばく)の夢夢は長い鼻をブンブン振り回す。


 照れている姿が、とても可愛い。


 先ほどはゆっくりと姿を見る余裕などなかったのだが、落ち着いて見れば見るほど何かを思い出す。



···何だっけ?···あっ!···



 先日お母さんと見に行ったフルCG映画の「ユニオンビースト~合体獣~」だ。

 ユニオンビーストはキメラのような幾つもの獣が合体したような姿で、夢夢は4種類の動物が混じっているのでS級ユニオンになるのか。

 白狼も狼と鳥だし、土蜘蛛は虎と蜘蛛で、妖界にはユニオンビーストが多い。


 などと考えていたら、おかしくて仕方がなかった。


「クックックッ」


「翔鬼殿? いかがなされた?」



···みんながいる事を忘れてた・···



「すまない···戻れたのが嬉しくって···」

「無事に戻られたのは喜ばしい事じゃが、大きな問題があるのじゃ。 そこで翔鬼殿、清宗坊を名寄せしてくれまいか?」

「俺たちが戻った事で終わったんじゃないのか? 問題ってなんだ?」

「それは清宗坊が来てから話すゆえに呼んでもらえるかの?」


 清宗坊を思い浮かべて唱える。


「我が名との制約により清宗坊の名を持つ者、姿を現せ!」


 すると、一点から黒い煙が出てきて形を成してきて、大天狗の清宗坊が現われた。


「お呼びにより戻りました」


 すでに思念通話で話しは通しているようだ。


「ふむ。 先ほど話したように···」

「ちょっと待ってくれ」


 話しを止めたのは翔鬼だ。


「いかがなされた?」

「先に紹介したい子がいるんだ」


 首を傾げるみんなの前で翔鬼の体が金色に光り出したかと思うと、体から金色に輝く気龍が現われた。


「俺の気龍だ、よろしく」

「よろしくね」

「うそ! 気龍?!」


 白鈴がやけに驚いている。 ぬらりひょんや清宗坊も驚きを隠せない。


「確かに気龍だけど、そんなに驚く事なのか?」

「驚くわよ!」

「ふむ···」


 ぬらりひょんが居住まいを正す。


「翔鬼殿。 本来【気】というものは体の中に流れているものというのは分かると思うのじゃが、強い【気】の持ち主の中に、稀に気龍を持つ者がおる。  

 しかしその気龍とは体の【気】の流れを制御し統制する事に長けた者の事であって、実体化する事ができるという話しは聞いた事があるのじゃが、この目で見るのは初めてじゃ」


「そうなのか? 夢の中で強く念じたから出てきたのかなぁ···こいつがいなかったら俺達は戻って来れなかったし」


「さすが気龍殿じゃな。 しかし、当分は他の者には御披露目はせん方がよいじゃろう」

「なぜだ?」

「ふむ。 元々翔鬼殿は特別な力を持っておられる。 もしかするとそのせいで今回、狙われたのかもしれないのじゃが······どうじゃ? 清宗坊殿」


 先ほどから時々心ここにあらずという様子を見せていた清宗坊だったが、何かを探っていたようだ。


「はい。 無理に入ってきた気配はありません。 穴もこじ開けた跡も感じられません」

「という事は、招き入れたか、知らずに()りつかれていてそのまま連れてきてしまったかじゃな」

「もう少し屋敷の中を調べてみます」

「ふむ···」


「なぁ、狙われたのは白狼で俺じゃないぞ」

「そう見えるのじゃがな···夢夢」


 ぬらりひょんは夢夢に話すように促し、夢夢は頷いた。


「翔鬼様、お休みになる時に結界を張りましたか?」

「いや、そんな事はしてないぞ」


 そう答えたが、いや張っていたと白狼が答える。


「翔鬼が寝たので翔鬼の布団の上で寝ようとしたら、何か壁のような物があって布団まで行けなかった」

「私は何度か様子を見に行ったけど、結界は見えなかったわ···でも壁があったという事は防御結界に間違いないわね」

「防御結界?」


「ふむ。 結界にはいくつかの種類があるのじゃ。 町の入り口など誰にでも出入りでき、町や村を形成する[地域結界] この家のように自身の領域を護る[領地結界] これは悪意のある者や主(ここでは清宗坊殿じゃが)主が望まぬ者も結界内に入る事は敵わぬ。

 そして自身または一定範囲にに危害を加えられなくするような[防御結界] その他にも結界に閉じ込めて術を行えなくする[封印結界]や、姿や【気】を隠す[隠匿結界]など、色々あるのじゃが、一目で結界が張られていると分からないのが防御結界なのじゃ」



···う~ん···俺には難しい···



「翔鬼殿が防御結界を張っていると気づかずに枕返しをしたので、その横に寝ている白狼殿に跳ね返ってしまった可能性が高いのう」

「どうして俺を狙うんだ? 俺が力を持っているから?···でも誰にも迷惑はかけていないぞ?」


「ふむ。 怨みとは知らぬうちに買う事があるものじゃ。 ところで白鈴殿、この件に心当たりはありませんかのう?」


 白鈴はビクッとする。


「わ···わ···私は、知らないわよ······でも······」

「でも···どうしたのですかな?」


 清宗坊は留守だったし翔鬼と白狼は眠っていたので、何かあったとすれば白鈴なら分かるかもしれないと思い、ぬらりひょんは何気なく聞いたのだが、思った以上の反応だった。



 暫く逡巡(しゅんじゅん)していたが、はぁ~とため息をついた。



慶臥(けいが)と何度かこの家で飲んだの。 始めは行きつけの店が閉まっていたから仕方なく。 ここは静かで落ち着くし、料理は美味しいし、お金もかからないし···つい···勝手に連れ込んで申し訳なかったわ。

 でも彼は無愛想だけどいい鬼よ。 風流も分かっているし、偉ぶった所もないし、女心も知っているわ。 そんな鬼が犯人とは思えないわ」


 白鈴は一気にまくしたてる。 申しわけない気持ちがそうさせているのだろう。 ぬらりひょんも清宗坊も白鈴を攻める事はなかった。



「ふむ···先ずは清宗坊殿に詳しく調べてもらうのが先決じゃのう。 頼んだぞ清宗坊」

「我が家の事ゆえ。捨て置くわけにはまいりませぬ。 必ず原因を突き止めてみせまする」



 という事で、取りあえず枕返し事件は置いておくことになった。





「ところで、清宗坊殿、何か収穫はあったかのう?」


 ぬらりひょんは少し冷めてしまったお茶をすする。


「収穫という程のものはござりませぬが、やはり石魂刀は西の国にあるという噂を二度ほど耳にしたでござる。 噂の域を超えませぬが、可能性は高いと思われまする」

「ふむ。 実はワシが調べに送った者も同じ噂を聞いておる。 真偽を確かめさえておる途中じゃ」

 


「それともう一つ。 勾玉の持ち主ですが···可能性として九尾を考えたのですが···」

「今は妖界にいないと聞いておる」

「はい。 拙者もそう聞きもうした。 そこで七尾を探してみる事にしたのでござる。 七尾は北の国にいるとの事。 この件が片付き次第北の国に行ってみようと思いまする」


「無駄足になる可能性も大きいが···」

「元より承知しておりまする。 しかし、翔鬼様のためですので、苦労を(いと)いませぬ」


「ありがとう、清宗坊」

「もったいないお言葉」


 翔鬼の言葉に清宗坊は体を小さくして恐縮していた。




 清宗坊にばかり面倒をかけるのは申し訳ない。 自分になにができるだろうといつも考えていた。


「ぬらりひょん、やっぱり俺、西の国に行こうと思う」

「ふむ······それもいいかもしれませんのう」


 以前、反対されたが今度は大丈夫だった。 時期が来たという事だろう。



「白鈴はどうする?」

「もちろん一緒に行くわよ」


 翔鬼は頷く。


「行くとしても、富士山の近くを通って、あの幽鬼の群れに会うのは御免だから、遠回りしていこうと思うのだが、道を知っているか?」

「どうにかなるんじゃない?」

「俺より適当だな···知識の本は分かるか? 出来れば途中で町や村があれば寄りたいのだが」


《道は分かりますが、途中の町や村までは···》


「分からないか···」



 どうしようと悩んでいたら、清宗坊があのぉ···と言う。


「小天狗の与作が点在する町に詳しいでござる。 彼をお連れ下され」

「あぁ! 与作か。 では、出発する時に名寄せをしよう」

「それがよろしいかと···」


 清宗坊はまた嬉しそうだ。 




 どれだけ翔鬼に心酔しているのやら······






「ユニオンビースト」は、私の小説です

お暇な時にでも開いてみて下さい( v^-゜)♪

https://ncode.syosetu.com/n4174fl/

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