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第二十三話 ぬらりひょん

部屋に戻ると、見知らぬ爺さんが座っていた!!

 

 第二十三話 ぬらりひょん



 部屋に向かう渡り廊下で飴を取り出し、白狼に黄色い飴を、自分には桃色の肉味の飴を恐る恐る口に入れた。


 生肉の味だったらどうしようと思ったが、とんでもない! 肉を焼いた香りに甘辛い風味が加わり、まるで少し甘めのタレを付けた焼肉の味で凄く美味しかった。


「この肉味の飴! 美味いな!」

「そうだな」


「次に買う時は、肉味を買おう」


 そう言いながら部屋の扉を開けると、部屋の真ん中に頭のデカい見知らぬ(じい)さんが座っていて、紫の上等そうな座布団に座って、湯気の出ているお茶をすすっている。


「お前は誰だ! ウグッ···ゴックン」


 慌てたので、美味しい肉味の飴を飲み込んでしまった。


《ぬらりひょん。 妖怪の総大将。 翔鬼殿の事は話を通しています》



挿絵(By みてみん)




『白鈴! 俺の部屋にぬらりひょんがいる』

『えっ?!』


 白鈴は隣からバタバタと走ってきて、開いている扉から顔をのぞかせた。


「あらっ! ()()()()()!! 久しぶり!!」


···ぬらちゃん?···


 白鈴はぬらりひょんの元まで駆け寄ると、大きく突き出した頭を気持ちよさそうに()で始めた。


「白虎···じゃなくて白鈴様、御戯(おたわむ)れを···」


 そう言いながらも大人しく()でられているのがおかしい。



「翔鬼の事は、玄武から聞いた?」

「はい、お聞きしておりまする」


「じゃぁ、勾玉の事聞いた? 他に誰がいるか知ってる?」


 その時、清宗坊が部屋に来た。


「ぬらりひょん様、御無沙汰いたしております」

木霊(こだま)から聞いたぞよ。 大変じゃったのう。 翔鬼殿に助けていただいたとか?」

「はい」

「···やはり本当じゃったか」



「ねぇねぇ! だから、勾玉は?!」


 白鈴が間に割って入ると、ぬらりひょんはヒョッヒョッと笑った。


「とりあえず、ここに一つ」


 と言って、左腕の袖を(めく)ってみせるとそこには赤の勾玉があった。


「えっ?!」


 翔鬼がぬらりひょんの腕を覗き見ると、確かに勾玉の一つが赤色になっていた。


「わぉ! 4人目ゲットだぜ!」

「ぬらちゃんが八人衆の一人だったのね。 他には?」


「ふむ···先ほど百汰(ももた)が教えてくれたのじゃが、北の山間にいる土蜘蛛(つちぐも)に紫の勾玉が付いているそうじゃ」

「この結界の中にいるの?」


「そうじゃ。 実は子供を産むために結界の外に出たと聞いておったのじゃが、いつの間にか戻っておる。 やはり幽鬼が跋扈(ばっこ)しておるから難しいとは思っておったのじゃが、何かあったようで気が立っていて土蜘蛛に近づくのは難しいと聞いておる」


「なぁなぁ、妖怪も子供を生むのか?」


 つい不思議に思って聞いた。 妖界では子供を見た事がないし、結婚とかするのかなと思ってしまった。


「ヒョッヒョッヒョッ。 翔鬼殿は知らなくて当然じゃな。 本来、妖怪は子供を生まないし、()()()になる事もない。 確か人間は男女で()()()になり子供を産むのじゃったな」


「人間界に行った事があるのか?」

「遠い昔にな。 妖怪は子供を産まんから、当然親や兄弟もおらんのじゃが、土蜘蛛のような一部の特別な妖怪は子供を産むというより自分の分身ができると言った方が正しいかのう。 土蜘蛛は生涯に一度だけ自分の分身を残すのじゃ。 ただ結界の中では生まれないので危険を冒して結界の外に出たはずなのじゃが···」


「他の妖怪は? 生んだり分身を造ったりしないのならどうやって増えるんだ」

「気づいたらそこにいる。 自分でもどうやって現れたのか、なぜ現れたのか分からんのじゃが気づくとそこにいるのじゃ」


「へぇ~~、おもしろいな···常識が違う···あっ!そうだ、石魂刀の事は知らないか?」

「ふむ···確かな事はわからんが、西の国のどこかにあるという噂を聞いた事があるのじゃが、何せ遠いので真偽(しんぎ)のほどを調べに行かせた。 そのうち知らせが来るじゃろう」

「西の国?」

「多分、(きょう)の事ね」


 答えたのは白鈴だ。 白鈴も昔に人間界にいったことがある。 関西の事なのだが、もちろん翔鬼にも分からない。


「京?···分からんからいいか」

「さすが、適当ね」

「知らんものは知らんし、もし行くなら知識の本が教えてくれるだろ? 何も問題ないじゃないか」

「無い頭で考えろという方が無茶だわね」

「なんだと!」


「ヒョッヒョッヒョッ。 まぁまぁ、それくらいにしていつまでも立っておらんと、とにかくお座りなされ···わしの部屋ではないがの」


 ぬらりひょんはズズズとお茶をすすった。


「ところで翔鬼殿。 妖気が()れているようじゃが?」

()れてる?」


 翔鬼はデンと胡坐(あぐら)をかいた。


「あら、やだ! 本当だわ。 どうして今まで気が付かなかったのかしら。 なかなか()まらないと思っていたのよ」

「何のことだ?」

「妖界にいると妖気が溜まるって言っていたのを覚えてる?」

「もちろん」


「体の妖気が何もない状態だったから溜まるのは早いはずだったのに、なかなか溜まらないからおかしいと思っていたのよ。 溜まった尻から漏れ出ていたのね」

「漏れてるのか?」


 翔鬼は自分の体の周りを見る。 もちろん翔鬼には見えない。


「翔鬼殿、気孔(きこう)を閉じる術を教えて差し上げます」

「お···おう。 よく分からんが覚えた方がいいんだよな?」

「もちろんです」


 ぬらりひょんは翔鬼の目の前に来て、座り直した。


「翔鬼殿、水に(もぐ)った事はおありか?」

「もちろんある」

「では目を閉じて、水の中に(もぐ)っている事を想像するのじゃ。 できるかの?」


 翔鬼はプールに(もぐ)って、底に座っているイメージをした。 少し息苦しい。


「では想像してみるのじゃ。 その水の中で誰かから隠れている自分を」


 プールの中に大きな岩を想像してその後ろに隠れる。


「しっかりと隠れてきだされ。 見つかってしまいますぞ」


 さらに息を殺して岩の後ろに隠れる、


「近付いてきた! 隠れるのじゃ! 気配を消すのじゃ! 全ての者から自分の存在を消すのじゃ!!」



······



 シンと静まり返った部屋の中で、目を閉じているにも関わらず、目の前にぬらりひょんが座っているのが分かるようになっている。 白鈴、白狼、清宗坊が部屋のどこにいるのかがはっきりと分かる。そして感情までも()える。


 ぬらりひょんからは『さすがに呑み込みが早いのう』という言葉が()()()


 白狼からは『おれはいつでも翔鬼と一緒だ。 愛しているぞ』



···それは照れる···



 清宗坊からは『さすが翔鬼様です、何でも直ぐに(こな)される』


 そして白鈴からは

···『それくらいは当たり前よ』···?



 翔鬼は目を開けた。


 今までと何かが少し違う。 みんなの周りから何かが出ているのが視えるのだ。 


「さすがじゃのう、すでに習得したようじゃ。 今、見えているのが【気】じゃ。 妖怪の場合は妖気とも言う。 相手によって色も形も大きさも違うのが分かるじゃろう? 今まで翔鬼殿は【気】が漏れていたが為に他の者の【気】も視えなんだが、制御できるようになると視えてきたじゃろう?」


「これが···【気】···」

「そうじゃ。 それと鬼神は感情を読み取る力に長けていると聞くのじゃが、いかがかな?」

「うん。 視える」

「そうじゃろうな。 しかし、【気】も感情も常に視えていれば混乱するじゃろう。 今は解放された状態じゃが、【視ない】と思えば簡単に()()()()()事が出来る筈じゃ」


 翔鬼が【視ない】と念じると、今までみんなの周りを包んでいた【気】が消え、感情も視えなくなった。


「おぉ···できた」

「当然じゃ。 いくら青龍の言霊の力で鬼神になったとはいえ、鬼神は鬼神。 鬼神の特別な力はその体の中に秘めておる。 妖気が溜まれば何ができるのか、自然と分かってくるじゃろう」


「前にも同じことを言われた」

「あら、覚えてたのね、偉いわね」


 翔鬼はムッとして白鈴を(にら)む。



「フフフ、とりあえず、土蜘蛛の所に行きましょうか。 ぬらちゃんまたね」




 ぬらりひょんとも言霊【思念通話】をし、ぬらりひょんの希望で【名寄せの制約】もしてから4人で出発した。






鬼神の新たな力が目覚めましたね(///ω///)♪

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