第二十二話 鬼神
町中で鬼に絡まれている妖怪がいる!!
第二十二話 鬼神
飴を舐めながらぶらぶら歩いていると、何やらもめている声が聞こえてきた。
6~7人の鬼が何か騒いでいるようだ。 前から来た妖怪達がコソコソと話しているのが聞こえる。
「また奴らだ」
「絡まれて可哀そうに」
「とばっちりを受けなくて良かったよ」
何かと近付いてみると、女の人が鬼に絡まれているようだ。
赤鬼2人、青鬼2人、緑鬼と黒鬼がいる。 最後の一人は翔鬼のように人間ぽい外見に角が三本生えている。
《三本角は翔鬼殿と同じ鬼神》と知識の本が教えてくれた。
「やめて! 離してよ!」
鬼達が女性の腕を掴んでどこかに連れて行こうとしているが女性は嫌がって手を振り解こうともがいている。 そしてそんな様子を少し離れた所で鬼神が腕を組んで見ていた。
絡まれている女性がどこかで見た事がある人だなと見ていると、そのキレイな女性の首が伸びてきた。
きっと人間界ならここで「わぁぁぁぁ」と、男達が逃げるのだろうが、鬼達は女性の首が伸びようがびくともしない。 女性の首がどんどん伸びてきた。
「ってか···お静さんじゃないか!」
翔鬼は「ちょっと失礼」と言いながら取り囲んでいる鬼達の間を通り抜けてお静の腕を掴んでいる赤鬼の前に立った。
···つい鬼達の中まで来ちゃったけど、大丈夫かな?···
来てしまってから翔斬刀に聞く。
『鬼は雑魚です。 私の力を使わなくても勝てるでしょうが鬼神は鬼によって力の幅があるので、なんとも···』
『わかった』
翔鬼はお静の腕を掴んでいる赤鬼の腕を掴んだ。
「嫌がっているじゃないか。 放せよ」
「あっ! 旦那!」
お静さんの首がヒュルルと縮んできて、頭が普通の位置に戻る。
「なんだお前! この辺りでは見ない奴だな。 どこの者だ?」
腕を掴まれた赤鬼が睨んできた。
···どこと言われても······人間界から来たとは言えないし···
腕を組んで見ていた鬼神はそんな翔鬼の心を読もうとするが、一向に読めない。
通常、鬼神は視心術が使える者が多い。 視心術とは相手の心の中の考えを視る術で、相手の考えている事や感情なども視えるのだ。
実は翔鬼は特別で視心術で心を視る事ができない体質なのだ。 しかしそんな事は翔鬼にも鬼神にも知る由もない。
「閉塞術(心を視られないようにする術)か···流石だな」と鬼神がつぶやくのが聞こえた。
···なにが流石なんだ?···
そして鬼神は翔鬼の妖気を探るが、ほとんど見えない。 もちろんまだ妖気が少ししか溜まっていないだけなのだが···
「完全に妖気を抑え込んでいる。 こいつは只者じゃない」と再びつぶやくのが聞こえた。
···何が「只者じゃない」なんだ?···
ブツブツ言っている鬼神はとりあえず置いておく。 それより赤鬼がお静を掴んでいるのとは反対の手に持っている金棒を翔鬼に振り下ろしてきた。
ぶっとくて重そうで、でっかいトゲトゲが付いている。
翔鬼は金棒を左手で受けとめ、右手でお静を掴んでいる手を捻り上げるとイテテテテと痛みで離す。 お静さんから離れる否や足払いをすると赤鬼は豪快に後ろにコケて背中を強打し、ついでに持っていた金棒が自分の顔に落ちてきてゴギッ!としこたま打ち付けた。
「ギャッ!」
···あら···痛そう···
「貴様! 何をする!」
横にいるもう一人の赤鬼が金棒を振り下ろしてきたので、スッと払って懐に入り、襟元を掴んで背負い投げをすると、横の金物屋の店の中にガッシャンガラガラと頭から突っ込み、鍋ややかんなどをひっくり返して伸びてしまった。
···これまた痛そう···
「この野郎!!」
今度は青鬼が刺股で突いてきたので柄を掴んで引き、反対の手で腕を掴んで捻り上げて体を入れ替えて投げ飛ばした。 その態勢のままで後ろ脚を蹴り上げると、後ろから向かってきた黒鬼が翔鬼の上げた足で喉を強打し「グエッ!」と言って蹲る。
残りの二人はいつの間にか白狼が倒していた。 横で白狼が倒した青鬼を前足で抑え込んでいる。
立っているのは驚いた顔で腕を組んだまま固まっている鬼神だけだ。
翔鬼は鬼神の方に少し困った顔を向けた。 その鬼神はなかなか精悍な顔で強そうに見えるが、乱闘に加わる気配もなく、一瞬で倒してしまった翔鬼に驚いているようにも見える。
しかし、これ以上翔鬼も戦いたくはなかった。
「このろくろ首は俺の知り合いなんだが、もう勘弁してくれないか?」
「えっ?···あ···あぁ···」
鬼神はゆっくりと腕組を外しながら、片手で追い払うような仕草をしてからプイッと向きを変えて、鬼達をそのままにして立ち去った。
「慶臥様! 待ってくださいよ!」
鬼達はお互いを支え合いながら、慌てて慶臥を追いかけていった。
「お静さん、大丈夫か?」
「はい、ありがとうございました」
「今からどうするんだ? 帰るなら一緒に行くが」
お静は地面に落ちていた紫の風呂敷袋を拾って抱える。
「用事は済みましたから、今から帰る所です」
それではと、家の方に向かって歩き出した。
歩きながらお静が話す。
「あいつらはこの辺りを仕切っている一味で、この町では怖いものなしなんですのよ。 中でも四天王の一人の慶臥はお頭の酌をしろか言って無理やりに連れて行こうとするので、困っていましたの」
···お頭ってどんな奴なんだろう。 後で強い妖怪のお頭が仕返しに来たりしないだろうな。 いい格好をしすぎたかな···
「本当に嫌な奴らなので、溜飲が下がる思いでしたわ」
お静はニッコリと笑う。 ちょっと怖いけどやっぱりきれいな人・・・妖怪だ。
···あ···やっつけて良かった···
「でも、旦那達は本当にお強いのですね」
そう言われて翔鬼は、口の端で笑って見せた。
···よし! クールに決まった!···
「あの鬼達の頭領は酒呑童子で滅法強くて威張り腐っているのだけど、それだけ強いなら大蛇を退治してくれればいいのに。 そうすれば私達も感謝するのですけどね」
···酒呑童子? オロチ?···オロチって聞いた事がある···
《酒呑童子 最強の鬼で頭領。 5本角で体の大きさは最大13尺(約5m)だが、他の大きさにもなることができる》
「それに幽鬼って大蛇の配下だって聞いた事があるのよ。 大蛇を退治してくれたら幽鬼もいなくなるのじゃないかしら? 今は幽鬼のせいで結界の外にも出ることができなくて本当に不便でしょ。 本当にどうにかしてくれないかしら」
···オロチってなんだっけ? 幽鬼の親分って本当なのか?···
《······大蛇 文字の通り大きなヘビ。 幽鬼との関係は不明》
···何だか歯切れの悪い説明に聞こえたのは気のせい?···
そうしているうちに家に到着した。
お静は何度も頭を下げて、家に入っていった。
「妖怪でもあんなにお礼を言ってくれて、いい人···いい妖怪だな」
「本当だな」
翔鬼と白狼は大天狗邸の扉を潜った。
鬼神と鬼の頭領。
これからどうなる?!
(;゜0゜)




