かえるくんのひとりごと
かえるくんはようやく、テーブルの下から出てきた。
「さ、つづきをやらなくちゃね」
そういって、かえるくんはわかざりをつくりはじめた。
「うん、そうだね」
ぼくたちもそういって、たなばたかざりをつくる。そのとき、ふいにぼくはあのふしぎな手紙のことを思い出した。
「ねえ、かえるくん」
「ん?」
「かえるくんにとって、たいせつなものとか、たいせつなことってなあに?」
「どうしたの、きゅうに?」
ぼくはあの手紙についてせつめいした。
「ふーん……。もちろん、ぼくがかいたんじゃないよ?」
「わかってるって。それで、かえるくんのいけんがききたいんだ」
「……そうだねえ」
かえるくんは、どこかとおいところを見るようにして、こういった。
「——ともだち、かな。ともだちが、いちばんたいせつなもの」
「どうして?」
「……昔ね、ともだちをたいせつにできなくて、こうかいしたから」
——ゆっくり、かえるくんははなしてくれた。
「昔、ねこのおともだちがいたの。だけど、今日みたいな、かみなりがなってる日に、けんかしちゃって。ぼくね、おこっていっちゃったの。『ばか』って。その子ね……めになみだをためて、いなくなっちゃった」
かえるくんの目が、うるんでいた。
「その子には、にどと会えなくなっちゃった……その子、足をすべらせて、かわにおちて、しんじゃったの」
ぴたっ——。
じかんが、とまった気がした。
「ぼく、すっごく……こうかいしたの。それで、決めたの。ともだちをたいせつにするって。少なくとも……もう『ばか』なんてことばは、もうにどと、つかわないって」
ぼろぼろって、かえるくんの目からなみだがこぼれた。
きみがかえるくんのせなかをなでて、ぼくはかえるくんにティッシュをわたした。
——かえるくんがかみなりをきらうのは、もしかしたら、このできごとのせいでもあるのかもしれないなって、そうおもった。
そのあと、なきやんだかえるくんといっしょにたなばたかざりをつくって、ささにかざった。
それから、こんな雨じゃきみがかえれないから、3人でおとまり会をしようってことになった。
3人でごはんをたべて、ぼくとかえるくんはおふろに入って。それから、きみがおもしろいからとオススメしてくれたテレビを見て、3人分のおふとんをしいて、みんなでおしゃべりして、そのあと、ねた。