それぞれの「たいせつ」
そうめんをたべおわったころ、ふと福の神さんが、なにかのかみを、とり出した。
「そういえばねずみくん、いりぐちにこんなのがおちてたぞう」
「えっ……それはなんですか?」
「それが……てがみのようじゃが、さしだしにんが、わからんのじゃよ」
うけとってみてみると、それはたしかにてがみみたいだった。そのてがみの字は、あのふしぎなてがみのものに似ていた。
『ねずみくんへ
きみにとって大切なものや、大切なことは見つかったかな?』
「あのふしぎなてがみの、つづきみたいだ」
「あのふしぎなてがみって、なんじゃ?」
ぼくは、福の神さんにあのふしぎなてがみについてせつめいした。
「それはふしぎなてがみじゃのう。……そうじゃなぁ、わしにとってたいせつなことは……じぶんのしごとをまっとうすることかの」
「どうしてですか?」
「それが、みんなをしあわせにすることにつながっているからじゃよ」
ほっほっほ、とわらう福の神さんをみながら、ぼくはお礼をいった。
ぼくは、かんがえた。
——ぼくにとって、たいせつなものやことって、なんだろう。
花犬さんは、花。
かえるくんは、友だち。
とくちゃんは、じぶん。
おに吉さんは、せんにゅうかんをもたないこと。
福の神さんは、じぶんのしごとをまっとうすること。
なら、ぼくは?
みんながおしえてくれたことは、どれもたいせつなものやことだとおもう。でも、これはぼくのたいせつなものやことじゃない。みんなのたいせつなものやことなんだ。
じぶんのことは、ほかのひとにてつだってもらってもいいけど、じぶんでかんがえて、じぶんできめないといけない。じゃないと、それはじぶんのことじゃなくなっちゃうから。
「——あっ、わかった」
ふと、ぼくはおもいついた。……いや、気づいた。
「ぼくにとっていちばんたいせつなものは……思いやりだ。思いやりをもつことが、ぼくにとっていちばんたいせつなこと」
「どうして?」
かえるくんがたずねてきた。
「……ぼくね、きづいたんだ。ぼくっていつも、心のどこかに、だれかを思いやろうってきもちがあるってことに。あそびにきたひとが少しつかれてるみたいだったら、ミルクティーをいれて、少しでもいいから、きもちがらくになるといいなぁって思うし、だれかがこまっていたら、まよわずにたすけにいくと思うし。なやんでいるひとがいたら、そのひとによりそってあげたい。それも、もしかしたら心の中に『思いやり』があるからじゃないかなって」
はなしながらぼくは、これがいちばんだって思った。これだ、ってぴんときた。
ぼくはようやく、ぼくにとっていちばんたいせつなものを見つけた。




