さいごのおきゃくさまは
おに吉さんのかみなりぐもは、やっぱりとてもはやかった。あっという間にいえについたんだ。
「ありがとう、おに吉さん!」
「このくも、はやいじゃん!」
「いや、これでもまだゆっくりな方なんだぞ? もっともっとスピードを出せるんだ! ……でも、はやすぎるとその分かぜもつよくなっちまうからなぁ。ねずみくんととくちゃんが、吹き飛んじまうかもしれないからな」
おに吉さんはそういって、にやっとわらった。そのえがおが、すこしとくいげな表情に見えた。
「さ、中に入ろうか」
ぼくがそういって、いえのなかにはいると……。
「ねずみくんおかえり!」
「おかえり! そうめん買えた?」
かえるくんときみがにこにこと笑ってそういってくれた。
「おーう、ねずみくん! ようやくかえってきたか。まってたぞーう」
あっ……いらっしゃっていたんだ。
「あの……ひとのるすちゅうに、かってにいえにあがらないでほしいんですけど……」
思っていたよりもあきれかえったようなじぶんの声がきこえて、自分でびっくりした。
「すまんすまん。ところでピーナッツはあるかい?」
「まったくもう……ありますよ。ちょっとまっててください」
ぼくはそういってから、だいどころから、おさらにもったピーナッツをもってきた。はじめておに吉さんたちに会った時から、なるべくピーナッツはきらさないようにしている。なぜなら、おに吉さんたちはピーナッツがとってもすきだから。
「おう、ありがとうねずみくん!」
「いえいえ。あ、おに吉さんも食べる?」
「ああ!」
「みんなもピーナッツ、どうぞ」
「ありがとう!」
みんなは、うれしそうに、おいしそうにピーナッツをたべていた。買ってきただけのものなんだけど、なんだかうれしいなぁ。みんなのわにまざるために、ぼくもすわって、ピーナッツを食べることにした。
と、そのとき。
とうとつに、とくちゃんがこえをかけてきた。
「あ、あのさぁ、ねずみくん」
「なあに?」
「……なんで福の神がここにいるの?」
そう。ぼくのめのまえには、ピーナッツをうれしそうにたべる福の神がいる。
「え? 友だちだからだよ? ……まあ、こどもの日にやってきたときは、ぼくがるすばんをおねがいしていたあいだに、かってにこの家のお風呂でしょうぶゆにはいっちゃうし、今日はぼくが買いものに出かけているあいだに、かってにいえにあがりこんじゃうような、かなりじゆうほんぽうな神さまだけどね。でも、本当に友だちだよ」
「かってにお風呂に入ったのと、かってにいえにあがったのはあやまるよ、すまんよ」
まゆをさげて、もうしわけなさそうにあやまる福の神さん。いや、べつにいいんだけどさ。それに、福の神さんのことだから、またこういうことやりそうな気もしてるし、半分あきらめてるんだよね。
「まってねずみくん。なんでねずみくんはおにや神さまと友だちなの?」
とくちゃんのするどいツッコミがはいってくる。
「きょねんのせつぶんのひに、おに吉さんにピーナッツをなげたら『ピーナッツかぁ。うまいな、これ。おいおまえ、友達になろうぜ!』っていわれたのがきっかけでねー。ぼくがちょっとしりごみしてたら、おに吉さんが福の神さんを呼んできてね。それでその時にピーナッツをあげたらお友だちになってくださったんだ」
「そんなのアリなの⁈」
目を丸くするとくちゃんにぼくはこたえた。
「ありなんじゃない? じっさいそれでなかよくなったんだし」
「えーっ」
とくちゃんのこうぎのこえは、むしすることにした。




