かみなりぐもに乗って帰ろう
ぼくはとくちゃんに「ちょっとまっててね」って言ってから、スーパー五穀に入ってそうめんを買った。ぼくときみと、かえるくんととくちゃんのぶん。あと、ねんのためにふたりぶん多めに買っておく。めんつゆをきらしていたらいけないから、一本買っておくことにした。
「おまたせー」
「もう! おそいよ、ねずみくん!」
「じゃ、ぼくのいえに行こうか」
「うん!」
ぼくととくちゃんは、あるきだした。
だけど……スーパー五穀で買っためんつゆがおもたくて、ぼくはいつもよりもあるくはやさが、ゆっくりになっちゃったんだよね。だから、ふだんからあるくのがはやいとくちゃんが怒りだしちゃった。
「ねずみくん! あるくのがおそいよう!」
「ごめんって! でもとくちゃん、もう少しゆっくりあるいてもらえないかな?」
「これでもゆっくりあるいてるつもりなのにーっ」
「えーっ、そんなぁ」
と、その時。
とつぜん、大きなかげが上からちかづいてきた。
「ねずみくん! 久しぶりだな!」
ききなれた大きなこえがきこえて、目の前に大きなかみなりぐもにのったおに吉さんがあらわれた。かみなりぐもは地面にはついていなくて、おに吉さんをのせたまま、ぷかぷかういていた。
「うわっ! に、二本の角の、赤おにだあっ!」
とくちゃんがにげだしそうになったから、心の中でとくちゃんにあやまりながら、とくちゃんのしっぽをつかんだ。予想どおり、とくちゃんはにげようとして、ぼくにつかまれたしっぽで引きもどされた。
「とくちゃん、こわがらなくてもへいきだから! あのね、おに吉さんは、ぼくのともだちなの!」
「えっ、ええっ⁉︎ う、うそでしょ⁉︎」
「ほんとだってば、もう……。おに吉さん、久しぶり!」
「ああ、久しぶりだな!」
ぼくがあいさつすると、おに吉さんはごうかいに笑った。それをみてとくちゃんは目を丸くしたままつぶやいた。
「し、しんじられないよ……」
本当にお友だちなんだから、そんなこと言われてもこまるんだけどなぁ……。
ぼくはおに吉さんにきいてみた。
「ところで、かみなりぐもでどこに行くつもりだったの?」
「決まってるじゃないか! ねずみくんの家だよ!」
そくとうだった。
でも前に、おに吉さんは、こどもの日にぼくの家にあそびにきたこともあったから、なんとなくそうぞうはついた。
そのとき、ふと思いついた。
「ねえ、おに吉さん」
「なんだ?」
「かみなりぐもに、ぼくととくちゃんを乗せてくれないかな?」
ぼく、前にかみなりぐもにのせてもらってスーパー五穀まで行ったことがあるのを思い出して、それできいてみたんだ。そうしたら、おに吉さんは笑ってこういった。
「なあんだ、そんなのお安いごようさ! さ、のったのった!」
「ありがとう! とくちゃん、のろう!」
「う、うん……」
ぼくはとくちゃんといっしょに、かみなりぐもにのりこんだ。
「よーし、出発するぞー」
おに吉のかけ声とどうじに、くもがうかびあがって、びゅーんとうごきだした。
「ところで、ねずみくんの連れの馬の子はなんていうんだ?」
「ぼ、ぼくですか? ぼくは、うまのとくっていいます。とくちゃん、って、よばれてます」
「よろしくな、とくちゃん! おれは角田おに吉っていうんだ。まあ、みたとおりの、二本の角をもった赤おにだ。よろしくな!」
「よ、よろしくおねがいします!」
ぼく、ふたりがじこしょうかいしあっているのを見て、ちょっとほっとした。
これならきっと、ふたりはなかよくなるだろうなって、なんとなくそうおもったんだよね。




