6話 『魔法耐性に物理耐性って...チートでしょう?』
どうでもいい事ばかり上達していきます
執筆ももう少し上達して欲しいものです。
さて、今回も頑張っていきます!
セロン帝国はメルロー村の近くに聳える大山脈、ホーレン山脈を挟んだ荒野に位置する国である。
国王が貴族出身であることから貴族たちによる民を考えずに自分の利益を追い求めるためだけの政策が取られている為、治安はすこぶる悪く、国のあらゆる所を悪党が闊歩している。
貴族たちはこの現状を見ても自らの欲望を捨てようとはしないため悪党に転じる民は着実に多くなってきていた。
勿論、増え続ける悪党の略奪を許さないために上流貴族から下流貴族まで溢れる富の一部を存分に使って腕の立つ傭兵を雇い、屋敷の警護に回しているが悪党たちが国をひっくり返すのももはや時間の問題...と密かに噂されている。
「いや、すまないね...君たちも仕事中だと言うのに」
「いいんですよ!フォカッチさんにはいつも俺たちを贔屓にしてくれますから」
細身の人の良さそうな男が柔和な笑みを浮かべると目の前の艶光りするソファで足を組む男が顎髭をさすりながら「それは良かった」とニヤニヤと口元を歪める。
立派な口元の髭が特徴的で派手に派手を重ねたジャラジャラとした金、プラチナ、そしてあらゆる宝石を使用した数々のアクセサリーを揺らす男は一応、名の通った貴族であり礼服を着用しているが丁度腹の部分を毎日の豪勢な食事で蓄積された栄養が突きあげておりボタンが一部外れてしまってなかなかだらしない印象を受ける。しかし、誰もそれを口に出す者はいない。
「さて、今回も君たちが行商をやっている間に起こった面白い出来事を話してもらおうか」
ゆらゆらと煙をあげるキセルを口にくわえながらフォッカチが前屈みになり、頬杖をつく。
来た、またこれだ。
毎回、毎回屋敷を訪れれば普段は絶対に売れないような高価な商品も全てまとめ買いしてくれるから助かってはいるのだが、その度にこの要求をされるのだ。
これがまたとても面倒くさい。
フォッカチはセロン帝国ではなかなか上級な貴族であり、お金は腐るほど持っている。
あんなペースで高価な商品を買い叩くぐらいだ。
一生遊んで暮らせるぐらいの金の山があるに違いない。
その為、自分好みの若いメイドをたくさん雇い身の回りの世話も全部任せている。
フォッカチはと言えば趣味の乗馬やダーツ、ビリヤードなどの娯楽を楽しみ、一般庶民は手も届かないような料理や酒を喰らい、夜は毎晩お気に入りのメイドとお楽しみらしい。
そんな豪遊っぷりを見せる彼だが最近、やりたい事をやり尽くしてしまったらしい。
一日中、趣味に絶やせば必然的にそうなるだろう。
つまり、物凄く暇なのだ。
そして、そのタイミングで男が何も知らずに軽く行商の最中に起こった事を雑談程度で話してしまったのが...何か異常に気に入られてしまったというわけだ。
正直、そんなに面白い事は頻繁には起こらない。
今までは何とか作り話で乗り切ってきたが、そろそろネタが無くなってきた頃だ。
しかし、話さなければフォッカチの機嫌を損ね、貴重な収入源を失いかねない。
只でさえこの前はフォッカチがあまり気に入らない話をしてしまったらしく不穏な空気になりかけたと言うのに。
怪訝そうな表情をするフォッカチを前に懸命に思考を巡らせると、ふとある出来事を思い出した。
そうだ。
あれなら十分かもしれない。
「どうしたんだ?セ....」
「今回はこういう話はどうでしょう?実はここに向かう道中で_______________」
フォッカチの言葉を遮るように男はあれについての話をする。
それを聞いていたフォッカチの目には驚愕が写っていたが、次第に悪意にまみれた目つきで「ほお」と興味深そうに相槌を打つようになった。
「その話...もっと詳しく聞かせてくれるかねぇ....」
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「ふう、終わったな...流石、俺!我ながら鮮やかな身のこなしだったぜ」
「こちらも殲滅し終えました。ドラゴンの方も...うん、大丈夫みたいですね」
最後の一匹に刺突を命中させた煇がまだあまり使い込まれていない片手剣を地面に突き立て、右腕で汗を拭う。
それに以前よりも少し大きくなった黄の魔法陣を消滅させながら真琴が応え、俺を見て安心したように微笑を浮かべる。
メイシアさんとゲンツさんの訓練が開始されてからもう一ヶ月になった。
依頼をこなす合間に訓練場に足を運び、俺と真琴はメイシアさんに魔法講義を受けたり、実演をしてもらったりして、煇は毎回ゲンツさんにボコボコにしごかれた。
「くそっ、あのジジイ...少しは手加減しろよ」とか悪態をつきながら痣になっている部分を苦しそうにさする姿を見るのも稀ではなかったな。
しかし、そのおかげか煇は本物の剣を洗練された動きで扱うまでになった。
ゲンツさんが言うにはまだまだらしいが討伐系の依頼を受けるようになってからその片鱗も伺えるようになっている。
真琴はと言えばさっきも言った通り魔法陣が少し大きくなり、魔法の威力が向上するようになった。
俺たちが使える初級魔法から一部の中級魔法、そしてそれ以外の中級魔法やワンランク上の上級魔法は実は魔法陣の大きさによって威力が多少左右される。
つまり、魔法陣は大きければ大きいほどいい。
魔法陣は魔力の量によって大きさを変え、魔力は魔法の鍛錬を積むことで増加する。
真琴曰くあまり実感はないそうだが、確実に魔力の量は上がっているのだろう。
ちなみに俺は勿論魔法を完璧に使いこなし_____
........。
........。
ているわけではなく、やっと三つの魔法陣から同時に同じ初級魔法を発動できるようになったくらいだ。
三つ出てる時点でもう凄いとメイシアさんは言うが、最終的には三つの魔法陣を効果的に扱えなければ意味がない。
ゴールとしては三つの魔法陣からそれぞれ異なる上級魔法を指定した方向に発動するのが理想だが、そんなに簡単な事じゃない。
まず、初級魔法でそれぞれ異なる魔法を発動しようとしても相当な集中力と体力が必要になる。
真琴のように一つの魔法陣ならまだ楽だが、俺の場合は脳内の片隅で炎の初級魔法、もう片隅で氷の初級魔法、そして更に真ん中で雷の初級魔法の呪文をイメージしなくてはならないので何より頭の疲労が尋常じゃない。
最初は俺、もしかしたら天才なんじゃね!?と天狗になっていたが、今となってはあれ、そうでもないかもと疑心暗鬼になる始末だ。
「あら、マコトちゃん達依頼終わったのね...報酬はカウンターの上に用意してあるからそれもらったら食堂に来るのよ」
「はい、ありがとうございます」
「メイシアのおばちゃん、今日の飯は?」
「ふふっ、来てみればわかるわ」
小さな酒場が賑わいを見せ始めた商店街を抜け、ギルドに戻るとメイシアさんが顔だけ出して出迎えてくれ、また食堂に引っ込む。
今日は初めてEランクからワンランク上のDランクの討伐依頼を達成したのでいつもより報酬は多めだ。
貯まったお金で真琴達は装備を整えたり、たまに外食(村にある小さな酒場)に行ったりしているがそれでもまだお金は残っている。
ギルドの宿泊費も問題なく払えるようになり、金銭的な余裕も出てきた。
お金持ち...とまでは行かないが、まあ、それなりに良い生活が出来ている。
これまでは毎日依頼を受けていたが、そろそろ何もしない日を入れてもいいんじゃないかな。
そんな事を考えながら俺は真琴達の背中を追って食堂へと向かった。
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「ヤバイ....食べ過ぎたぜ」
「煇君、いつもより食べてませんでしたか?それと食べたばかりで横になると牛になりますよ」
「そんなの迷信だってさ...」
「そうだとしても身体には悪いですから」
テーブルの真ん中に巨大な肉の塊が出てくるというインパクト抜群の夕食を終え、俺たちはギルドの二階に位置する宿泊部屋に戻っていた。
入った途端に煇がベットに豪快にダイブを決め、それを真琴が呆れたように見つめる。
「まさか実際に見ることになるとはな______」
巨大な肉の塊はいわゆる______マンガ肉であった。
あのでっかい骨が肉の真ん中に通ってるお馴染みのアレである。
「最近、交易関係を持った国から親睦の証に大量にもらったのよ」とメイシアさんが言っていたのを聞いてまた驚いた。
ほとんどは村の人達に分けたらしいが、それでも余った分はギルドのキッチンの冷蔵庫に詰め込まれているらしい。
味はもう絶品中の絶品。柔らかさが段違いで噛めば噛むほど肉汁が絶え間なく溢れ出るので思わず頰が緩んでしまった。
多分、今まで食べてきた肉の中で一番の旨さだったな。明日からの夕食も当分これらしいし、楽しみだ.....
「____________あれ?」
強烈に眠気が襲ってくる。
それは次第に脳内を埋め尽くし、意識が朦朧としてくる。
いつもより眠くなるのが早い。
今日の依頼で疲れてるのかなと思い、何とかベットまで移動しようとするが身体が怠くてまるで動かない。
まあ、煇か真琴がベットに移してくれるだろう。
そう考え、俺は抗いがたい眠りの誘いに身を任せた。
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唐突に頭を巡る頭痛と身体に伝わる冷たさに俺の意識が覚醒する。
ベットの柔らかい感触が感じられないので恐らく真琴と煇は俺をそのままにして眠ってしまったのだろう。
もう立派に依頼にも貢献してる仲間なんだから少しくらい温情を見せてくれてもいいじゃないか。
そう言えば立派に貢献するようになった代わりに龍也の存在感が薄くなりつつあるんだよな______うう、悲しい。
それはともかく悪戯でもしてやるかと憎くき幼馴染たちの姿を探す。
しかし、そこで異変に気付く。
「ん、何だこれ」
思うように身体が動かない。
目を向けてみると、両手両足が頑丈そうな鎖で繋がれている。
解こうとしてもジャラジャラとやかましい音を立てるだけ。
幼馴染たちよ、こんな事をするほどまでに俺の事が嫌いなのか。と結構不安になり、顔を上げる。
そこには二つのベットが______無かった。
「ここは______俺たちの部屋じゃない!?」
いつもの見慣れた素朴な部屋ではなく、殺風景で薄暗い部屋。
目の前には鉄格子が何本も突き立てられていて出られないようになっていてまるで檻のようだ。
確か俺は部屋の中で眠りについたはずだが_____
「誰かに攫われた....と考えるのが自然か」
思えばあの時の眠気はおかしかった。
何か強制的に眠りに落とそうと働きかけられるみたいで、そして起きた時からの頭痛。
俺を攫うために恐らく睡眠薬か何かでも盛られたのだろう。
しかし、夕食はメイシアさんが調理したはずだし...一体、いつ盛られたのか。
そもそも何で俺をこんな檻に閉じ込めるのか。
「取り敢えずここから出よう」
もしかしたら真琴と煇も捕まっているかもしれない。
普通にやったら解けなかった鎖だが_____幸運な事に今の俺には魔法がある。
鉄格子も同じように魔法をぶっ放せば簡単に壊れるはずだ。
心配なのはその音を聞きつけた警備が駆けつける事だが、そんな事を言っていたらいつまでも出られない。
俺はいつものように魔法陣をイメージし、それを展開させる。
「あ?」
しかし、魔法陣は一向に展開されなかった。
三つあるうちの一つも顕現されていない。
たまたま上手くいかなかったのだろうと何回か同じように試してみるが、結果は同じだった。
いつもならすぐに出てくる魔法陣が今は出てこない。
「まさか魔法が封じられてるって言うのか!?」
俺の得意な魔法は当然のように対策されていたらしい。檻から脱出されないようにするには魔法があるこの世界ならしっかりとそこも対策するのが普通だろう。
せっかく思いついた解決策が無駄に終わり、本格的に焦りが出てくる。
魔法が封じられてるとすれば俺に出来る事は______もう何もない。
助けを呼ぶための連絡手段も持ち合わせていない。
心に段々と余裕が無くなっていくのを感じながら何かできる事はないかと思案を巡らせていると、何処かの扉が錆びついた音を立て、下品な複数の笑い声が近づいてくる。
それらは俺の閉じ込められた檻の前で止まる。
「おいおいおい!!!何だよ、こいつは?トカゲの間違いじゃねぇのか!ギャハハハハ!!!!!」
「お前の目は節穴か。こいつはドラゴンの幼体だ。翼が付いたトカゲなんて見たことないだろう」
「幼体の方が高値が付くらしいぜぇぇぇ!」
「マジかい、マジかい!?これはもう近々、ご馳走じゃないの!フヒヒヒヒヒ」
気持ちの悪い目で俺を舐め回すように観察する人相の悪い集団に嫌悪の情が募る。
幼馴染たちやメイシアさんやゲンツさん、そして村の人達とは異なる底なしの欲望に濁った視線が身体中に刺さる。
話している感じから察するにこいつらが俺を攫ったのだろう。
俺は苛立ちと共に彼らを睨みつける。
「お?なあなあ!こいつ、俺たちの事睨んできてやがるぞ!ギャハ」
「ちっこいから全然怖くねぇなぁぁぁ!」
「魔法耐性も完璧な鎖に繋がれて更に檻の中に閉じ込めたのに...よくもまあ、フヒヒヒヒヒ!そんな生意気な目が出来るわね」
めっちゃムカつくな...。
こんな鎖がなければ。こんな檻がなければ。
問答無用で魔法で蹂躙してやるのに。
「おい、お前ら。そんな事をしに来たのではないだろう。あくまでもドラゴンの観察は短時間で済ませろとフォッカチ様からも言われてるだろうに」
「そうだったな、そうだったなぁぁぁ!」
「ギャハハ、機嫌を損ねて報酬減額とかなったらたまったもんじゃねぇな!」
「もうすぐここに到着するそうだし...フヒヒヒヒ、正直あんまり気に入らないけど、このドラゴンを買ってくれる貴族様をお迎えにいきましょうか」
唯一フードを深めに被って顔のよく見えない男が静かに制すると、残りの悪党たちは相変わらずの下品な笑みを浮かべて檻から離れていく。
悪党たちは完全に姿を消したはずなのに______俺の頭の中にはさっきの悪党たちの悍ましい顔が呪いのようにこびりついていた。
ブクマ、評価はいつでもお待ちしてます。
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