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第48話 人知れず


 北京郊外の見捨てられた廃村で、まだ新しい墓が、もぞりと動いた。盛り土を破って、白く細い腕が突き出す。続いて、黒髪が現れ、頭が、胴体が、ずるずると墓を這い出してくる。


 やがて姿を見せたのは、肌の白い、十七歳ほどの少女だ。泥と血にまみれた黒髪を振り上げて、両手で地面を叩いてみせる。


「ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう! トウショウの野郎、よくもやりやがったな! 血も涙もねえ! まるで躊躇せずに、やりやがった!

 化猫には九つの命がある? へっ、誰が本当の数を教えるかよ。化猫には十の命があるのさ。騙されやがって。だが、あとひとつになっちまったじゃねぇか。

 覚えてろよ、トウショウ! まずはお前だ。絶対に殺してやるからな。容易には死なせてやらん。じわじわと切り刻んで……」


 と、言葉を切って空を見上げた。はるか彼方から何か飛んでくる。


「砲弾じゃねぇか。まだドンパチやってんのか。はん、こんなもの避けりゃあ問題ねぇ」


 そうつぶやいて踏み出した足が止まった。


「なんだと? 動け! 動けよ!」


 両手で足を叩くが、それは根を生やしたように動かない。手を止めて不意に顔を上げると、ナキリは、向かいくる砲弾を見つめていう。


 さよなら。


 別れを告げる声が響き、黒い髪と白い肌が印象的な少女が、轟音とともに失われた。


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