第31話 引き寄せる鬼
済南市に鬼が出た。
人さらいを生業とする男が殺されたのだが、その死体があり得ない形になっていたという。化物じみた力で首を掴まれ、そのまま握りつぶされていた。人間離れした所業に加えて、ヤジらしき男が市場の荷運びとして働いていたこと、その働きぶりも尋常でなかったことがわかってきた。
鬼の後を追うチヨ、トウショウ、ハクウは、ヤジが働いていたらしい市場へ出かけてきていた。ところが、そこには先客があり、チヨが声をあげた。
「ソウじゃないか!」
「あなたは……」
「ロンもソウも元気そうで何よりだ。あの時は世話になったね。この鋏、宝具というのか、なかなか役にも立ってるよ」
「それは何よりです」
「でもね、どうして言ってくれなかったんだい? ヤジのこと、知ってたんだろう?」
「すみません。嘘をつきました。でも、本当のことを言っても信じてもらえなかっただろうし、何より、巻き込みたくなかった」
「ふふん、もうがっちり巻き込まれ済みだ。ここまで来たら、何としてもヤジに会わずには帰らないよ。どんなことでも覚悟して聞くから、ヤジの身に何が起こったのか教えとくれ」
困惑げに黙り込むソウだが、さらにハクウが話を促した。
「わかっておるだろうが、私も禁術の件で動いている。もちろん、他ならぬ君たち兄妹のことだ。悪いようにはせぬゆえ、話してくれるか」
「ええ、わかりました。ヤジさんのことですね。すべて私が悪かったのです」




