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第13話 供養の酒


 清朝末期の混乱期、黄河付近にある寒村目指しての旅も終盤に差し掛かった。


 ナキリと黒猫に見送られて出発してから、トウショウが妙にニヤついている。その様子を気味が悪そうに眺めながら、チヨが声をかけた。


「いつまでもにやにやと。あの子となにを話してたんだい?」


「いや、何でもない、何でもない」


「やれやれ、夜のお誘いでも受けたんだろう? え? 図星かい?」


「えへへ、いやまあ」


「やだやだ、こっちは死んだ恋人を探しに大陸くんだりまで来たと言うのに。あたしの旅は真面目な旅なんだよ。もうちょっと厳粛さが欲しいねぇ」


「朝まで酒飲んで騒いでいたのは誰だよ? 厳粛さって、どんな意味か知ってんのか」


「知ってるとも。あたしの酒は供養の酒さ。悲しいこと、辛いこと、厳粛なことこそ、酒で祀るんだ」


「ああ言えばこう言うってやつだな。目当ての人、ヤジさんだったか。その人の墓参りなのか?」


「そうだね。墓があれば墓参り。なければ、どうしようかねぇ。死んでるのか生きてるのか、それだけでも知りたいもんだ」


「とにかく、村へ行っての話だな」


「楽しみでもあり、怖くもあるね……」


 普段と違って厳粛な雰囲気だが、それを聞いたトウショウがいう。


「わざと厳粛に言ってるだろ?」


「はっ、ばれちゃあ仕様がないねぇ。人生、一寸先は闇。禍福はあざなえる縄の如し。どっちであろうと、人間様は、人間様に出来ることしかできやしないさ。さあ、腹をくくって行こうじゃないか」


 やがて見えてきたのは、探し人が住むかもしれない小さな村だ。鬼退治前に立ち寄った村と同じような規模だが、こちらは平穏無事を絵に描いたような様子。村人も、さして警戒することなく、チヨとトウショウを迎え入れた。


 手紙の差出人の家を尋ねると、あっさり場所もわかったが、今はもう誰も住んでいないとか。誰が住んでいたのか尋ねると、村の者があげたのは、道士兄妹、ロンとソウの名前だった。しかも、その家では、数年前に陰惨な出来事があったのだという。


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