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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

赤い月 白い月 闇の月

作者: どんC
掲載日:2018/04/09

 赤い月がぽっかりと空に浮ぶ。


 ザクザク


 一人の墓守が穴を掘る。

 傍らに二人の女が息をひそめる。

 侍女とどこぞの令嬢の様な身なりだ。

 やがて粗末な棺が出てくる。

 墓守はスコップで棺の蓋をこじ開ける。


「ああ…何てこと!! 何てこと!! 」


 ベールを被った女が呟く。


「いや‼ いや‼ お姉様……お姉様……」


 棺にすがって泣きわめく。


「なんで……なんで……なんで……」


 粗末な棺には女が一人放り込まれている。

 そう文字道理。

 放り込まれていた。

 その扱いは死者に対する尊厳も憐憫もなく。

 ゴミを放り込んだと言う有様だ。

 その女の死体は酷い有様で。

 手足がバキバキに折られ、あらぬ方向にねじ曲がっていた。

 手足の指も全部無かった。

 顔は半分陥没しており、腐敗が始まっている。

 まさに肉の塊りだ。


「許さない……許さない……」


 ベールを被った女はブツブツと呟く。

 ぽたぽたと涙が滴り落ちる。


 殺されたのは彼女の姉だ。

 殺したには姉の夫だ。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「ユーリアこの方が私の婚約者のバスタ・ジャイホデ・プータ様よ」


 嬉しそうに姉はその男を紹介した。

 黒髪で黒曜石の様な瞳の背の高い男だ。

 2mはあるだろう。

 剣や馬の鍛錬も怠らない、日に焼けてガッチリして体付きをしていた。


「ユーリア・テデイ・マタルと申します。よろしくお願いいたします」


 バスタ様は驚いた顔をしてまじまじと私の瞳を覗き込む。

 私の青い瞳が男の呆けた顔を写す。


「何か?」


「いや……病弱とうかがっていたからもっと小柄な方かと、勝手に思い込んでいた」


「ヒョロヒョロと背ばかり伸びてお見苦しいですわ」


 私は扇子で口元を隠しほほほと笑った。

 若紫のドレスで見えないがぺったんの靴を履いている。

 ハイヒール無しで180㎝近くある。

 その代わり体に肉は付いていない。

 姉はハイヒールを履いて160㎝ぐらいだ。

 背は低いが女らしい体つきだ。

 彼は姉と同じ金髪碧眼の私を見る。


「いや。済まない。」


「二人とも座りませんか?侍女がせっかく用意してくれたお茶が冷めてしまいますわ」


 姉は微笑みを浮かべて椅子を勧めた。

 近くにいた侍従のクルトが椅子を引いてくれる。

 見事に咲いた薔薇の中、お茶会が始まった。

 姉は今月この方と結婚する。

 身体が弱いことを理由に今まで会わなかったのだ。

 今回のお茶が初めての顔合わせになる。


「お姉様の花嫁衣装はそれはそれは素敵ですのよ。綺麗で優しいお姉様は私の自慢ですわ」


「まあ。ユーリア褒めすぎですよ」


 姉は頬を染める。

 本当に姉は可愛らしい。


「そんなことないですわ。お姉様の様な素敵なレデイをお嫁さんにできるなんてバスタ様は幸せ者ですわ」


「ええ。本当に私は幸せ者です」


 バスタ様は嫌な目つきをした。

 姉は気づいていない。

 嫌な予感がした。


 バスタ・ジャイホデ・プータ様はミンサイ国の辺境伯だ。

 黒曜の森を挟んでグリシーヌ国と睨み会っている。

 度々小競り合いが起きている。

 グリシーヌ国は10年前小国のエニグマ国を滅ぼしている。

 そんな所に嫁に行くお姉様の事が心配だ。


「お姉様が結婚なされると会えなくて寂しいわ」


 私はため息をついた。


「そうね。辺境は遠いですものね」


「ああ……それならこちらで護衛を付けましょう。何時でも遊びに来てください」


「本当ですの。嬉しいですわ」


 こいつの企みを知るのはこの後の事だ。

 そして知った時には全てが手遅れだった。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




 姉とバスタ辺境伯の結婚式は辺境の街で執り行われた。

 白い花嫁衣装の姉は美しく女神のようであった。

 私は水色のドレスを纏い。父や母と共に挨拶周りをしていた。

 余りバスタの側によらないようにして。

 私はバスタの事が好きではない。

 一見無表情を装っているが、仄暗い欲望の炎が見える。

 ゾッとした。

 バスタはこの街に来る、旅の途中いつも私を見ていた。

 そうして家族になるからとドレスや装飾品を贈る。

 姉より多い。

 後で姉に送っておこう。

 やっと結婚式も終わり。


「元気でね」


「お前も手紙を書くんだぞ」


「父様も母様もユーリアも気を付けて帰ってね」


 私達は姉と別れて帰路についた。





 ヒヒーン‼


 馬の首に矢が刺さる。

 ドウッと馬が倒れる。

 護衛達と父様が盗賊に殺された‼

 私は母の手を引っ張り森の中に逃げる。


 つり橋の上母様は盗賊の刃に倒れる‼


「お前は‼ テンゴ・ミエド‼ 」


「エニグマ国の王族の生き残りがいたとわな。死ね!!ユーリー!!」


「おのれ‼ 」


 私は短剣を抜き、奴の剣を受け止める。


 しかしドレスでは動きにくい。

 バランスを崩して、つり橋から落ちた。

 ドレスが纏わりついて動けない。

 濁流に飲まれそのまま滝つぼまで流された。

 渦巻く水の中誰がが私の手を取る。

 侍従のクルトだ。

 彼は辛うじて私を岸まで引っ張り上げるとドレスを引き裂き川に流した。

 森の隠れ家に隠れる。

 この国に逃げ込む途中で見つけた古い民家の枯れ井戸の中隠れ家がある。

 迫害された魔女が住んでいたのだろう。


 私は、剣に塗られた毒のせいで一週間生死の境をさ迷った。


 何とか体力を取り戻し鬘を被り男物の服を着て都に戻ったのは一月もたってからだ。


「ユーリー様よくご無事で!!」


 都に戻るとエニグマ国の生き残りのサミエルが迎えてくれた。

 サミエルは商会を経営している。

 幾人ものエニグマの生き残りがいる。


「追手のテンゴに父も母も護衛も殺された」


「何とゆう事だ。ブリアナ様が大変な事になっているのです!!」


「姉上が‼ 」


「嫉妬に狂ってユーリア様に強盗を差し向けたと罪を着せられ投獄されました」


「何てことだ!!」


「大変です!! ブリアナ様が亡くなられました」


「「「「「 ‼ ‼ 」」」」」



「己の罪深さを恥じ自殺したそうです。亡骸は身元不明の平民墓地に埋葬されました。」


「なぜ?こんなことに?」


「ユーリア様のドレスが先週川辺で見つかり、死亡が確定されたからでしょう」


 その夜 数人の人物が真新しい墓を暴いた。


「ああ……何てこと!! 何てこと!!」


 月の下でユーリアが嘆く。


「いや……いや……お姉様……お姉様……」


 国を滅ぼされ。彷徨うユーリアを迎え入れてくれたのは、遠縁に当たるマタル伯爵だった。

 優しい人たちだった。


「なんで……なんで……なんで……」


 なんで……また家族を失われなくちゃならないの‼


 声なき慟哭が夜空に響く。




 白い白い月夜は月の女神が咎人を裁くと言う。

 そんな夜は誰も外には出ない。


 カタリ


 とバルコニーの外で音がした。

 ベットに横たわっていたバスタは起き上がり、バルコニーに出る。


 バルコニーを見上げるように女が一人立っていた。


「ユーリア‼ ユーリアなのか?」


 女は薔薇の花咲き乱れる庭から動かない。

 女は初めての会った時のドレスを着ている。

 若紫のドレスだ。

 バスタはバルコニーから飛び降りた。

 ベールを被った被った女の側に駆け寄る。

 そしてベールを外す。

 白い月の下。

 女神のごとく美しい顔が現れる。


「ああ…ユーリア……ユーリア」


 バスタはユーリアを抱きしめる。


 ズブリ


 ナイフが己が胸に生えているのを間抜けな顔で見るバスタ。



「なぜ?姉様が死ななければならなかったんだ?」


 マントのしたから斧を取り出す。

 ゴミを見るような目でバスタを見下ろす。


 噓だ!! 嘘だ!! 嘘だ‼

 彼女はいつだって尊敬の眼差しで俺を見ていたはずだ!!


「ああ……姉様をお前などに渡すべきでは無かった!! 姉様を攫って行けば良かったんだ!!」


 何度も何度も斧は振り下ろされ、バスタを肉塊に変えた。


 屋敷の者は眠り薬を飲まされ誰も薔薇の園で起きた惨劇に気がつかない。




 しばらくして森の強盗団が討伐されたと噂された。

 盗賊団は皆殺しにされ首領のテンゴも拷問されて殺された。




 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





 その後 ユーリー王は、奪われた国を取り戻し。

 周りの国を統合して、フィルナー王朝第一代帝王となる。



 建国記念の日を『赤い月』と呼び祭りが行われ。

 姉が死んだ一週間を『闇の月』として喪に服した。

 彼が死んだその後もその習慣は続き、現在も続いている。




            ~ Fin ~





※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

2018/3/ 『小説家になろう』 どんC

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★ユーリア・テデイ・マタル 15歳

女装の亡国の王子。本名ユーリー・エニグマ

マタル伯爵家に匿わている。姉が好き。


★ブリアンナ・テデイ・マタル 18歳

伯爵令嬢。ユーリアと仲良し。


★バスタ・ジャイホデ・プータ 25歳

ユーリアに一目惚れ。邪魔なブリアンナを無実の罪を着せて殺す。


★テンゴ・ミエド 45歳

エニグマ国を滅ぼした追手。

強盗団に化けている。強盗団が本業になってしまった。



★ミンサイ国

ユーリーとブリアンナが住む国。



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