序章~時の狭間にて~2
「ようやくお目覚め?私が声を直々にかけてあげたのよ?平伏して感謝されることはあっても無視するのは許されないわ。そうねぇ、オークの慰み者にでもしてあげようかしら?うん、それがいいわねぇ・・・あなたもそう思わない?」
「ごめんなさい、ごめんなさい、なんでもしますからそれだけは許してください。なんにもできないけど・・・あれ?そっか何も見えないし感じないからそれでもいいかぁ、そもそも居るのか居ないのかすら自分でも分からないし。そんなのでも良かったらどうぞご自由にお使いください。じゃあ自分ひきこもりますので。では御機嫌よう。」
「あーいじり甲斐のない子なのね・・・。つまらないわ。」
「そもそも、他人の声聞いたのも随分前な気がするので・・・あれそんなことあったのかな?それも分からないんですよねぇ・・・。」
「じゃあ残念なあなたにちょっとだけ教えてあげるわね。ここは「黄泉の世界への入り口」。あなたのように亡くなったモノが集まる世界。人も獣もそしてなんだかよく分からないあなたのようなモノも等しくここに集まるの。本来ならあなたの世界からこちらに来るときにすべての記録と意識が消されてしまうのよ。でも稀にいるのよね、理由はいろいろあるけれど意識をもったままここに来てしまう子がね。」
「うーん、自分がとりあえず死んだってことは分かりました。ただどーしてこうなってるのかはさっぱりで・・・気がつけばここに居たって感じなんですけど・・・居るというか居る感覚もないんですけどね。」
「本意じゃないんだけど、ちょっと不便ね。少しお眠りなさい。」
「え?あの・・・zzz」
時間にして十数秒程度だろうか。魂の定着を確認すると少しの間様子を見た。
安定しているのを確認しもう数秒だけ待った。
もう彼女には永遠の時を待ったような気分になりイライラした表情に変わる。
手が震えだし拳を軽く握り始めた。目が血走り顔に赤みがさすとふぅっと息を吐いて大きく吸った。
あどけない彼の寝顔を見てさらにイラっとしてきた。
その直後
「ヒャッハー我慢できねぇ!」
軽く彼を持ち上げ、宙に放り投げると下から突き上げるように鳩尾を殴りつけた。
ドスッ!
鳩尾あたりに激しい鈍痛がして目が覚めた。変な浮遊感の後、突然全身を打ち付ける痛みが襲ってきた。
「うごぉぉぉ。おなかの中のイケナイモノガ駆け上がってくるぅ。」
お腹を押さえ激しくのたうちまわる。
さらにゴロゴロ転がりながら痛みに耐える。
イケナイモノが生まれ出すのを何とかこらえてようやく落ち着きを取り戻した。
「あれ?痛い?あれ?あれ?」
「おはよう。いい夢見れた?」