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序章~ある勇者の終わりと始まり~2

 時の教皇は我ら神の子たちを幸せに導くための神の剣そして盾として最前線に立ちうる者として「勇者」を位置づけた。敵は神の子を脅かす「魔物」、外縁を囲む他大陸3国の王を「魔王」と呼び各地で発生しつつあった魔物を彼らの僕であるとし、その者たちからこの地を守る者として6国の協力を仰いだ。他国も形式上はその話を飲み込み、表向きは賛意を表明、相互防衛の要として位置づけるとともにいかに勇者を自国のために活用するかを検討し始めた。


 また勇者を損耗させるわけにもいかないので、周辺の魔物の対策として各国と協議し軍とは別に教会主導の下ハンターギルド、後の冒険者ギルドを各国に創設することで各国全体の民間戦力強化と活用を図ることにした。これも創設当初は各国に諜報員を送るための方便であったが、次第に聖教国とは独立した存在になったようである。時の法王が手放したのであるが、旨みがなかったというのが本音あった。元々独立志向の強い傭兵が主体になっていたため、教会との亀裂が生じていたのである。聖教国としても各国の国民の大半が信者なので諜報活動は各国教会から懺悔という形でネタを向こうから漏らしてくれるのだからわざわざ予算を割く理由もなくなった。また教会自体の運営は信徒の寄進で成り立っているので金もかからなかった。

結果的にはギルドが独立を勝ち取ったようにはなっているが、ただの厄介者を切り離しただけであった。


 時を経て、今代の勇者に命令が下った。

「フィレンツ公国に侵攻し始めた西部外縁の魔王がいる。このままではかの国も長くは持つまい。かの国に赴き、我ら迷える子羊を助け魔族の侵攻を阻止せよ。また、魔族が我々に害なすことを止めるつもりがなき場合、神の力を存分に振るい魔族の国の王を討て。われらが神の名の下に許可する。」

「勅命承りました。準備が整い次第すぐに出発致します。」

「うむ、よろしく頼んだぞ。」

「では」勇者は振り返り執務室から出て行った。それを確認した側近の一人が教皇に声を掛ける。

「先代のような暴走は無いと思いますが、今代の勇者はどこまで持ちますかな?」

「侵攻を食い止めればよし、だがかの王を討ち取れるのは難しかろう。魔物相手とは勝手が違う。相手も同じだと気づいた時にその力が振るえるのかどうかだろうな。なんといってもあの者は若すぎる。現実を見せられた時にどうなるか。自らが為したことによって自身が魔王と呼ばれるかもしれないということに気づいた時に正気でいられるか難しいんじゃないのかね?」

「かもしれませぬな。次の手をご用意しておきますか?近衛に預けておいた者がいましたな。」

「表立った動きはみせるな。あと候補者への接触も今は避けよ。万が一の事態も利用しなくてはならないからな。良くも悪くも使えるものは時を間違えずすべて利用せよ。」

「御意。」


 今代の勇者は歴代の中でも17歳という若さでその地位を得た。剣技、魔法力も他の者を圧倒しており、歴代の中でも最上位クラスの能力を持っていた。足りないものがあるとすれば「戦争経験」であった。それゆえサポート役として優秀な魔術士、戦士、直属の神官を付けた。その他の戦力はかの地3国の王より兵を用意するよう協力をもとめた。


「魔族領か…。どんなところなんだろう?教皇様から聞く限りではとんでもないところらしいんだけど。暴力で支配し敵対するものはすべて消し去り何も残さないなんておっしゃっていたけれど…。」

「私も詳しくは分からないですね。多分勇者と同じ程度の知識しかないでしょうね。神官殿は何かご存知ですか?」と魔術士は問うた。

「私も、今の話以上の事は分からないですね。」脳筋の戦士には誰も聞かなかった。ちょっとがっかりする戦士。聞いたところで「ガハハハ。知らん。」というのがオチだからだ。時間と労力は無駄にはできないのである。

「フィレンツ国で情報収集しておかないといけませんね。できるだけ早くあちらに向かいましょう。最低限の装備で向かいます。集合時間は1時間後に、そろい次第移動しましょう。解散。」

勇者が去った後、3人は勇者が出て行った扉を見つめていた。

「勇者殿は大丈夫かねぇ・・・」戦士がポツリとこぼす。

「分かりませんね。事が始まらないとこればっかりはねぇ。まぁ我々は付いていくのみですよ。あまり余計な心配をしても仕方ないですからね。」と魔術師が言い、

「我々は我々の任務を遂行するのみです。」神官はそう結論付けて解散を促し各々の準備にはいった。

一刻の後、4人は集合し転移門の前にいた。聖教国内の移動はこれで済んでしまうので便利なのであるが魔力消費が大きく教会騎士団以外の利用ができないようになっている。

「日が暮れる前にフィレンツ国内で一休みして、装備を整え軍と合流し情報交換の後に国境へと向かおう。」

「了解」

「では、行きましょう」一行は転移門をくぐった。

国境付近の教会敷地内にある神殿に到着。騎士団の馬を借り、かの国国境へと進路をとった。


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