2話 誕生日
今日で、14歳の誕生日。
この世界では、14歳からが成人らしい。
14歳というのは、日本で言うと中学2、3年生頃だろう。
そんな若い年齢で、成人するとか僕には理解出来なかった。
だが、僕も今日で成人する。
全然実感湧かないが。
ユリアは、僕の誕生日の1日前が誕生日なんだけど、どうせなら一緒に祝った方が楽しいんじゃない? という事なので、僕とユリアは同じ日に祝われている。
で、今日は人生で最も重要な日だ。
14歳になれば、独り立ちするというのが、この世界では当たり前の事らしいのだが、僕の両親はそれを反対している。というか、僕の職業が《冒険者》だから、反対している。
それで、ユリアはというと、明日にはこの国から出て行くと言っていた。
ユリアの両親は、それには反対せず、応援している。
ユリアが《勇者》だからだ。
ユリアと、明日でお別れか。
……え?何だって?
お前は、ユリアについて行かないのかって?
僕は、ついて行かないよ。
まだ、この村ですべき事が残ってるんだ。
ユリアに追い付くには、必須な事なのだ。
だから、今日はユリアにその事を伝えようと思っている。
「あのね、ユーマ。話したい事があるの」
そう思っていると、ユリアが話しかけて来た。
多分、ユリアは旅について来てほしい。みたいな事を言うに違いない。
自分から、言おうと思っていたのに、ユリアからこの話題を振ってくるとは、予想外だった。
でも、僕はいつもと同じように、こう返す。
「何、ユリア? 僕に何か用?」と。
そしたら彼女は、もじもじしながらチラッと僕の方を見て言った。
「私と一緒に旅をしてほしいの!」
ほら来た。
ついて行きたいのは、やまやまなんだけど、ユリアと同じラインに立つには、まだこの村を発つべきではないのだ。
だから、僕は 「ごめん、ユリア。僕はついて行かない」と言い切った。
ユリアは、予想外の返答だったのか、立ち尽くしている。
「ユリア。まだ僕は君とは釣り合っていない。君と同じラインに立てるまで、僕は君とは旅しない。だから、ごめん」
そう言った後に気付いた。
ユリアが、泣いていた事に。
そして、ユリアは家から出て行った。
僕はそれを見ていると、「何をしたんだ、ユーマ」と、父さんに厳しい口調で言われた。
母さんと父さん、そしてユリアの両親までもが、僕を見てくる。
だから、僕はこう言った。
「僕は間違えた事なんて言っていない。僕は、父さんと母さんに言われた通りに、ユリアに言っただけ。ユリアと旅は出来ないって。《勇者》である彼女と、《冒険者》である僕は釣り合わないって。そう言っただけだ」
「本当にそう言ったのか?」
そう父さんは言って来た。
僕はうなづいた。
嘘は言っていないから。
「ユーマは旅に出たくはなかったのか? 昔言ってただろ? 旅に出たいって!」
僕は、確かに旅に出たいとは言っていた。
でも、ユリアと一緒に旅をしたいとは言っていないのだ。
その事を言うと、両親にも、ユリアの両親にもそれはもうたくさん怒られた。
でも、怒られる理由が分からない。
確かに僕は悪い事をしただろう。
だから、どうしたんだ? って思う。
「どうして黙ってるんだ? ユーマ、お前は悪い事をしたと分かっているんだろう? 分かっているのに、どうしてこんな選択をしたんだ!」と言われ、僕はついに言ってしまった。
言いたくなかった事を。
「お前らに僕の何が分かるんだよ。最弱職の《冒険者》が適性職業の僕の何が分かるっていうんだよ。この世界に、《冒険者》の事を理解してくれる人なんかいない事くらい分かってるんだよ。《勇者》、《治癒術師》、《魔術師》、《盗賊》? これらの立派な職業に就いていたお前らに、なんの役割も持っていない《冒険者》の事が理解できるわけがないだろ!」
両親たちは、驚いていた。
しばらくして母さんが口を開いた。
「そんなに《冒険者》である事を気にしていたの?ごめんなさい、ユーマ。私たちは、ユーマの事を理解する事が出来なかった。ユーマ、私たちは親失格ね。もう、あなたを止めたりはしないわ。あなたはしたい事をしなさい」
「分かった。それじゃあ、僕はこの家に残るよ。それに、僕は《冒険者》を誇りに思っている。だから、僕は母さんと父さんに感謝してるんだ。それに、《冒険者》は最弱なんかじゃない、最弱は何者にでもなれるんだよ。母さん、父さん、そしてユリアの両親にも僕のステータスカードを見せてあげる。これは、この世界で最も最強になる男のステータスだ。僕は、ユリアに会ってくるよ」
僕はステータスカードを置いて、家から出る。
両親たちは、ステータスカードを見て、驚いた。
ユーマ=マークレン 男 14歳 AB型
レベル 1
【HP 12/12】 【MP10000/10000】
攻撃 13
防御 12
敏捷 17
器用 16
魔力 12000
《スキル》 身体能力強化
《スキルポイント》 0
《魔法 》 ファイア ウォーター ウィンド アース サンダー ヒール テレポート(小)
《固有スキル》 超成長
「これが、ユーマ君のステータス。MPと魔力だけで言えば、《勇者》である私をも上回っている。それに、この《固有スキル》は何だ? 【超成長】? 俺らの《スキル》である【超成長】と何か違うのか?【分析】すれば分かるか? ガレス、頼む」
「分かった、やってみる」
ユーマの父親であるガレスは、【分析】した。
「はははははっ! 面白いな、この固有スキルは!」
「何が面白い?」
「この固有スキルは、ユーマ専用のスキルで、そして進化可能スキルだ。固有スキルと言っても、1人にだけなら継承させる事が出来るが、この固有スキルは継承出来ない。それに、この【超成長】は適性職業が、《冒険者》の奴にだけ、効果を発揮する。この【超成長】は、本来の【超成長】とは、最も違うのは、底上げ倍率だ。本来の【超成長】の底上げ倍率は、1.5倍だが、この【超成長】は、30倍だ。《冒険者》の奴のレベルが1上がった時の、ステータスの上昇幅は10辺り。その上昇幅に底上げ倍率をかけると300を超える。つまり、《勇者》の奴のレベルが1上がった時の、ステータスの上昇幅の約3倍は上昇するんだ」
「そこに普通の【超成長】の効果を重複すると、レベルが1上がった時の上昇幅が、450を超えると。そう言いたいんだな、ガレス」
「あぁ、ヴァン。ユーマは本当に最強になれるかもしれんな」
両親たちが言っているのは、全てその通りだが、ガレスはいくつか見落としている記載があった。
それは、《スキルポイント》の上昇幅について、《冒険者》という職業を超越し、全ての魔法を覚える事が出来る。
そして、何よりレベルの上限がない事。
この3つをガレスは見落としていた。
この事実を、ユーマが知るのはまた先の話だった。
「おーい。ユリア! どこにいるんだー。出てこいよ!」
こういう時に【索敵】スキルがあればいいのに! なんて事をユーマは思っていたら、ユリアは見つかった。
今、俺たちは森の最奥地にいる。
この森はよく来るが、ここまで深く潜った事はない。
だから、帰れるか不安だな。
でも、今は。
「ユリア、やっと見つけたぞ。早く帰るぞ」
「嫌だ、帰らない」
「わがままだなぁ。そんなに僕と旅したかったのか?」
「うん」
「ユリア、今は無理だけど、追いつくから。追いついたら、一緒に旅をするから。だから、帰ろう」
そういや、今関係ないけど、僕的には旅って言葉より、冒険って言葉の方が好きだなぁ。
「分かった、約束だよ」
「うん、約束する。……ユリア、誕生日おめでとう。あまりお金無いからこれくらいの物しか買えなかった」
僕は、ユリアに赤い髪に合う髪飾りをプレゼントする。
「ありがとう、ユーマ。じゃあ、ユーマへのプレゼントは、私の初めてをあげる」
そう言って、ユリアは僕にキスをしたのだが、恥ずかしかったのか、顔を赤くして、先に歩いて行ってしまった。
僕は、そんなユリアの後ろを何も言わずついて行った。
ユーマの両親
ガレス=マークレン 男 37歳 A型
適性職業 魔術師
黒い髪に、黒い瞳。
普通にイケメンで、頭がキレる。
マリア=マークレン 女 35歳 AB型
適性職業 治癒術師
金髪で金の瞳。
まぶしい。可愛い、美人。
少しおっちょこちょい。
ユリア=メルリアンのステータス
レベル 1
【HP 1050/1050】 【MP 1420/1420】
攻撃 1530
防御 1240
敏捷 1620
器用 1840
魔力 2040
《スキル》 全魔法適正 全魔法耐性 魔力操作 魔力強化 身体能力強化
《スキルポイント》 0
《魔法》 エクストラ・エイン
《固有スキル》 限界突破