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どっちかな

「みんなー! おっはよー」


 千流ちゃんは変わった。

 薄野ゆりねは、たった今教室に入ってきた幣原千流を見て思う。


 小学校の頃から千流ちゃんとは仲が良かったのだけれど、その頃はまだあんなに明るくなかった。私と同じで、物静かで、休み時間は自分の席で本を読んでいたり図書館にいるような、そんな子だった。


変わったきっかけは、中学二年生の時だと私は思ってる。


「ゆりねちゃん、私と付き合って」


 中学二年の冬休み。図書委員長の権限をフルに活用して図書館に居座る私と、それに便乗するように付いてきた千流ちゃんだけがいる静かな図書館で、彼女は淡々とそう切り出した。


「初めて見た時から、ずっとゆりねちゃんのことが気になってたんだ。長くてきれいな髪とか、白くて透き通るような手とか」


 小学校の頃からずっと。と千流ちゃんは続ける。


「ゆりねちゃんと一緒にいたくて、話しかけて、一緒にいたくて、図書委員にもなって、一緒に話をしたいから本も読むようになって……ゆりねちゃんが好きだから、ゆりねちゃんみたいになりたくて、マネしてたり……」


 泣きそうな声で、千流ちゃんは、絞り出すように私に告白した。


 私は突然の事で何も言えずに。

 千流ちゃんは顔を真っ赤にしながら、まっすぐに私を見て。


「ごめんなんでもない。忘れて」


 今まで通り友達でいてね。と続けると、何事もなかったようにまた本に視線を戻した。

 私は何も言えずに、何事もなかったかのように振る舞う千流ちゃんに動揺しながらも、顔を隠すようにして本を読み続けた。


中学三年生の時、というかその告白の後からは、今までよりちょっとだけ心の距離が離れてしまった気がしたけれど、今までのような友達の関係は続いていた。


 目に見えて変わったのは、高校に入ってからだ。


 千流ちゃんは髪色もきれいな黒髪から目が痛くなるような金髪に変えて、性格も、明るくなった。高校デビューなのか、私の時みたいに好きになった誰かに合わせたのかは分からない。


私が千流ちゃんの思いを受け止めていたら、今の私たちの関係はもっと違うものになっていたんだろう。

そう思いつつも、楽しそうに人の輪に混ざっている千流ちゃんを見ながら、私は安心してしまうのだ。


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