先輩←♡←淫魔←♡←私←♡←先輩
とある春先の昼下がり、私は食後の倦怠感と多幸感に包まれながら、いつもと同じように机に頬杖をつき。
ぼーっといつもの方向――――窓際の、一番後ろ端と、その隣の席を眺めていた。
一番端には、なぜか今年は同じクラスになった元先輩。イケメンで、人柄も良いちょっとだけおつむの弱い人気者のヒト。
そしてその隣の席には、みんなが大っ嫌いな女の子。私たちと同じクラスで、性格もイヤミで授業もまともに受けないし、ろくに女の子の友達もいなくて周りにはほとんど男の子しかいないし、おまけに髪だってどぎついピンクに染めてるし。クラスの大多数は彼女が大嫌いだ。
そんな彼女は最近、特に席替で隣のになってからは特に頻繁に先輩へのアプローチが増えている。
「センパイ、お昼いっしょに食べましょうよ~」
「センパイ、教科書忘れちゃったから一緒に見せて~」
「センパイ、今度一緒に映画見に行こうよ~」
センパイ。センパイ。センパイ。
ああ嫌だ。見ていて腹が立つ。
唐突ながら、彼女は人間じゃない。
と、私は確信に近い何かを抱いている。決して彼女が目立っているからとかそんな理由なんかじゃないし、ちゃんとした理由なんて無い。
なぜなら、というとちょっと仰々しい言い方だし、別にそこまで改まって言うようなものでもないけれど。
私の好きな人が彼女を好きだからだ。
友達にこのことを言うと、大体必ずその友達は私に「嫉妬深い」とか、「女の嫉妬って怖いわー」とか言われる。ぶっちゃけ嫉妬としか言われない。
二度目になるけれど、私はそれ以外の理由はないし、けれどおぼろげな何かでしかないけれど確信を持っているのだ。
「どうしたの?」
「何でもないですよ-」
じっと見ていたら、センパイに声をかけられた。
クラスの女子たちに目をつけられても嫌なので、なるだけ興味の無いようにそっけなく返す。
それでも気に入らないっていう女子はいるわけで。
ピンク色の髪のやつが突っかかってきた。
「ちょっと、センパイに話しかけられてるのにその態度はないんじゃない!?」
「なによ。別に普通でしょ」
「はぁ!? 意味わかんない!」
私にしてみればあなたの方が意味わからないんですけど。なんでそんなに・・・・・・
「あんた生意気」
ピンク髪のやつは最後にそれだけ言うと、私の机をバンって叩いて。
「セーンパイっ。もう行きましょ」
先輩の腕と自分の腕を絡めて教室から出て行った。
ああイラつく。もう、見ているだけでイラつく。気づけば私は机を人差し指でトントン叩いていた。いつの間にかそれはダンダンになって。
そして見つける。
机の端っこに、怒った表情の女の子の絵がかいてあるファンシーな紙切れ。周りに人がいないのを確認してちらりと覗いてみる。
『放課後、屋上で待ってる。』
ピンク髪のやつ。
ちょうどいい、私も言いたいことがあったところだ。
しかし・・・・・・だ。
さっき二人は教室から出て行ったのだけれど。
キーンコーンカーンコーン。
授業始まるんですけど。
放課後の屋上で、夕焼けをバックにピンクの髪のやつは待っていた。
だから私は言ってやった。
「私は・・・・・・」
あんたの事が好きなんだ。って。
私の言葉にピンクの髪のやつは。
「はぁ!? 意味わかんない」
とかいうと思っていたんだけれど。その薄桃色のリップが塗られた唇から出た言葉は全く違うものだった。
「だ、そうですよ。センパイ」
ピンクの髪のやつは私のさらに向こうを見て、こともなさげに言った。
私はあわてて振り向くと、そこには、ショックを受けたような顔の先輩が。
「ウソ・・・・・・でしょう?」
色々と問題作