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ドリュアスの飛鳥さん

「あーもうあのセクハラストーカー野郎!」


 今年で大学二年の鳥居飛鳥という女性は、自宅の扉を開けると同時にそう叫んだ。


「毎回毎回露骨に人の胸見やがって! 分かるんだよそういうの! 構内でもちょくちょく付いてきてるのホントウザったいんだよ!」


 勢いよくまくしたてながら、鬱憤をまき散らすかのようにベッドへと飛び込む。

 枕に顔を埋めながらぶつぶつと文句を呟いていると、枕元に置いてあるウチワサボテンに話しかけられた。


「アスちゃん荒れてるなー」


「そりゃ荒れるわよ。変態に付きまとわれてるんだもん」


 サボテンに話しかける。全く事情を知らない他人が見れば、飛鳥は植物に一人で話しかける危ないやつである。

 人の姿こそしているものの、飛鳥はドリュアスという人ではない種族の生物だった。飛鳥だけではない。この世界には沢山の人ならざる者たちが人に紛れ込み、人と同じように生活しているのである。

 そのほとんどは容姿がただの人であるため、見た目には分からなかったが……。


 荒んだ心の飛鳥に、ウチワサボテンは対策を授けようとアドバイスする。


「そういう時は、『べ、別にお前みたいな変態の視線なんて全然気にしてないんだからねっ!』って言ってやったらいいのよ」


「あー、やっぱあんたじゃだめだわ……」


 ウチワサボテンの言葉を聞いて、飛鳥はため息を吐く。サボテンだからって人にまでそんなにツンツンさせなくてもと思ってしまうのだ。それにストーカー相手にそれは間違いなくアウトである。


「ねー、あんたはどう思うよ」


 諦めて飛鳥は別の植物に助言を求めた。

 出窓から二人の様子をうかがっていたディオネア、別名ハエトリソウである。おどおどしながらも、必死に頭を捻ってけなげに考えてくれていた。

 しばらくして、これかな~と悩みながらも控えめに、飛鳥へとアドバイスをする。


「えーっと……『私の栄養になってください』とか」


「あいつを物理的に食べろと!?」


 飛鳥から尋ねたために、サボテンの時のように冷たくあしらうのは躊躇われた。ディオネアは意外と身も心もデリケートなのだ。


そんな様子を見ていたスズランは、これだ! とばかりに自分のアイデアを語りだす。


「『キャーの〇太さんのフケツー』って一発叩いてあげればいいのよ」


「ぶっ叩くのはありかもしれないけど、なんかその言い方だとあたしがあいつに気があるような言い方じゃない?」


 またそんなムダ知識をどこで仕入れたんだろうと思いながら、飛鳥はスズランの言葉を否定する。


「もぉ、めんどくさいなぁ……素直になっちゃえばいいのに」


 そんな他人事のようにベランダから言うのは、パンジーだった。


「真正面から『私を思って」って』


「思われてるから困ってんだよ! バカか!」


 どこまで行っても他人事な植物たちであった。





花言葉とか名前とか間違ってたらごめんなさい

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