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冷蔵庫は開けっ放しにしてはいけません

「あ~暑いですぅ~溶けちゃいます~」


 暑さに呻きながら、冷蔵庫の扉を開けっ放しにして冷気を浴びるように居座るのは雪女のユキである。雪女だけあり、暑さには人一倍弱かった。


「あっダメ。これダメ。溶ける。溶けちゃう~」


「どうしたのユキ、今日はいつも以上に辛そうじゃない。ボクみたいに汗流して来れば? それとも暑すぎてそれどころじゃない?」


 お風呂上り、バスタオルを肩にかけて下着一枚で歩いてくるのは沙知という少女である。ボクという特徴的な一人称ではあるが、れっきとした女の子だ。


 沙知の言葉を体現するかのように、ユキは冷蔵庫へと依りかかった。


「そうなんですよぉ~さっちゃんさん。聞いてください今日は十年ぶりに関東の最高気温を更新したそうなんです」


「へぇー。ボクにはいつも通りに感じるけどなぁ……」


 他人事のように、沙知は言う。


「ほんとに人間ですかさっちゃんさん! しかもお風呂上がりで汗ほとんどかいてないとか常軌を逸していますよぉ!」


「心頭滅却すれば火もまた涼しだよ」


 さらりと沙知は言い放つ。


「ほんとですかぁ~」


 そんな沙知をユキは疑わしげな視線んでじっとりと見つめた。


「ほんとほんと」


 飄々とした態度を崩さない沙知。しかしユキは彼女の手に握られているものを見つけ、目を見開いた。


「あ~っ! アイス食べてるじゃないですか~! 〇ピコ! 私にもくださいよぉ~!」


 ほろ苦い、チョココーヒーの味である。


「ごめんね。これ最後の一つなんだ」


「しかももう一つ食べ終わってますし!」


 だってユキが冷蔵庫開け広げてるから、溶けちゃうんだもん。と沙知は悪びれもせずにそう言った。

 実際には、帰宅したユキがいつものように冷蔵庫を開けてその前に陣取るのを見越して、お風呂に入る前に自分の部屋の冷蔵庫へと避難させていただけなのだが……


「食べかけでよければだけど、いる?」


「~~~~!」


 アイスを口元へと差し出してきた沙知に、ユキは動揺を隠せずに一歩後ずさる。それは間接キスではないかと。

 もうすぐ二十歳になるというユキだったが、未だに初心であった。


「い、いただき……ます」


 恥ずかしさで溶けてしまいそうと思いながらも、ユキはアイスをかぷりと咥える。


「おいしい?」


沙知がほほ笑みながら尋ねる。

 ユキは無言で、こくり。と頷いた。




アイス美味しいですよね

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