hospital 2
「お兄ちゃん!」
僕はお兄ちゃんのいる窓際に駆け寄り、抱きついた。温かい体温が僕を包む。
「みつ……」
お兄ちゃんの声。心が落ち着いて、
緊張の糸が切れたように、僕は泣き出してしまった。
「君たち、2ヶ月丸々眠っていたんだよ。」
丸眼鏡のひとにそう言われ、窓から見える景色が随分と変化している事に気づく。
確か、最後に見たのは雪だった。けれど今は、雪が溶けきり、草木が芽吹き始めている。
その時、病室のドアが開いた。
「例の二人はいるか」
白髪に白衣をまとい、銀縁の眼鏡をかけている、一目見て僕は『怖い』と思った。
でも、どこか美しい。
じーっと見ていると、切れ長で冷たい瞳と目があった。
「お前が蒼海月か」
「ひゃっ、ひゃい?」
いきなり声をかけられ、情けない返事をしてしまう。何か言われるのではないかと身構えるが、僕を見ていた視線は兄へ流された。
「では、そっちの奴は…」
「蒼海星です。」
兄はしっかりと、冷たい瞳を見据えて答えた。怖気づくそぶりなど全く見せない兄は、僕より一回り小さいものの、とても堂々としていた。
「着いて来い。片野もだ」
「はっ!」
どうやら丸眼鏡のひとは片野と言うらしい。
「行こう。みつき。」
僕はお兄ちゃんが差し伸べた手を取り歩き出した。