対処法その⑦
「というわけで!みんなでイベント参加しない?」
可鈴が提案すると、皆が乗ってきた。これは決まりそうだ。
放課後の教室。先日可鈴と話した大型イベントへの参加について皆に話していたところだった。イベントは一週間後に開催される。蒼太は、それまでにレベルを少なくとも10以上はあげなくてはならなかった。最近、可鈴だけでなく他の三人も手伝ってくれるようになっていた。おかげで大分レベルあげが楽になっていた。
「まあ、そうと決まれば装備とかもそろえなくっちゃね。楽しみぃ~♪」
楽しそうに可鈴が笑う。
「やっと僕の秘奥義を皆にお披露目する日が来るんだね!」
鏡花は目をきらきらと輝かせてはしゃいでいる。それをみて志紀は微笑んでいた。やはり愛しいものを見る眼差しなのだろう。少なくとも、蒼太は志紀のこんな顔を見たことはなかった。幼稚園からずっといっしょにいた幼なじみであるのに。
匂宮 志紀という男はモテる。全国模試1位という驚異的学力だけではなく、顔立ちもいい。さらさらの黒髪に、エメラルドグリーンの宝石のように輝く切れ長の瞳。睫毛は長く、美しい目元を引き立てている。スッと通った鼻筋に薄い唇。そして、見るものを魅了するような微笑み。まさに、美形だ。この学校の女子達の間でファンクラブが存在するほどである。それでも、彼は人を好きになったことはなかった。もちろん、誰かと付き合ったこともない。蒼太の知る限りでは。
この人も恋をするのか。ただただ不思議に思った。きっと誰のことも好きにはならないような気がしていたから。もしかしたら、志紀は自分の気持ちに気づいていないのかもしれない。そんな疑念が沸いてきて、心のなかで少しだけ笑う。
何かあったら協力してやろう。そう思った蒼太であった。
「蒼太くん。」
いつの間にか、織葉が蒼太の隣に座っていた。
「あぁ、織葉。どうしたの?」
「えっと、今日いっしょに帰ってもいいですか?」
大きな瞳に見つめられる。それも上目遣いで。
彼女は黒く長い黒髪を耳にかける。そして、くいっと蒼太に顔を近づけた。
「ダメ…………かな?」
織葉の手が太ももに置かれてスッと円を描くように動く動く。
織葉は蒼太の右隣に座っていた。それなのに、右手を足に置くので体の距離が一気に縮まった。心臓がうるさいので、この音が誰かに聞こえないかと心配になる。
「あ………、うん。いいよ?」
なんとか、声を振り絞る。
「本当?すごく嬉しい。私、蒼太くんと話したいことたくさんあったから。」
ふふっと笑って微笑む。彼女の笑顔があまりにきれいで蒼太はどきっとした。恥ずかしかったので、思わず顔を背ける。
「蒼太、織葉なんの話してるの?」
可鈴がずいっと蒼太と織葉の間にはいる。
「別になんだっていいだろ。」
「えー。気になるよ、だってあたし蒼太の彼女兼お嫁さんだかんね!大好きな人と友達が何はなしてたか知りたいじゃない。」
「可鈴。あんまりそんなだと蒼太くんに嫌われちゃうわよ?」
織葉がすかさずフォローにはいる。
こういう時、織葉は気が利くので俺にとっては非常にありがたい存在である。
「むぅー!蒼太はあたしのこと嫌いになんないもんねっ!ねっ!」
ぎゅっと、後ろから抱き締められる。何か柔らかいものがあたっているのは気のせいだろう。それのせいなのか、正確な思考判断ができない。
「なんないよ。なるわけないだろ?だから安心しとけ。」
そういうと、ふっと拘束が外れる。何だろうと思って、後ろを振り向くと可鈴がちょっとうつむいていた。
「きらいに……………なるわけないんだ。そっか。えへへ。」
小さい声でなにか呟いている。顔はほんのりと赤く染まっていた。
「可鈴?どうかしたのか。」
「ううん、なんでもないよ。あ…………ありがと。」
そういって可鈴はきゅっと目をつむる。
悔しいけれど不覚にもドキッとしてしまう。
うるんだ、青い大きな瞳に赤い頬。青と白のセーラー服のスカートの裾を両手できゅっと掴む仕草。なにもかも魅力的で困ってしまう。いつもこんなだったらいいのに。そう思わずにはいられない。
蒼太は思わず、立ち上がって可鈴の頬に手を伸ばしていた。
「そ、蒼太…………?」
「えっ、あっ、ごめん!」
自分でも驚いて、手を離す。
「まさか、蒼太。あたしのことが好きすぎて皆の目の前で我慢できなくなっちゃったんだね!?なにちゅーするつもりたったの?やっやだ、皆の前でなんてそんなの恥ずかしいよ!蒼太大胆!!」
蒼太は生まれてはじめてあり得ないくらい複雑な表情になっていた。
(………こいつ、ほんと。……………………はぁ。)
ため息しかでなかった。