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対処法その②

「ちげーよ。」

俺が鋭くつっこんだ。


ゲーム店のなかで話続けるのもということになり、近くのファーストフード店に入った。

ちょうど広い席が空いていたのでそこに座る。

案の定、桐壺は俺のとなりに座っている。


「そーたさ、その、好きな人とかいるの?」

桐壺が聞いてきた。真剣な声で。

そう言えば珍しく、腕を無理矢理組んだりしてきていない。

両手はきちんと膝の上におかれ、少しだけきゅっと握られている。

俺が怪訝そうな顔で、別にいないよと答えようとすると、彼女は突然大声でいう。

「ごめん、やっぱなんでもないやっ!そーたの好きな人とかあたしにきまってるもんねっ」

両手をふってそういう。

顔は笑っていたが、やはりなんだか様子がおかしいのでなにかあったのか聞こうとした。しかし、別の声がそれを遮る。


「明石くん。普段、桐壺の相手するの大変でしょう?この子すっごくうざいけど疲れてない、大丈夫?」

葵さんが黒い髪を右耳にかけながらそういった。

「あー、ははは……。」

「その様子だと本当に疲れてるね。どうやって対処しているの?」

対処、といわれても…。

一応対処法をまとめたメモは持っている。

持っていないと対応しきれないところがある。

彼女ああみえて気分屋であきっぽいところもあるしトラブルもそこそこ起こしてしまう方だ。そのたびに助けてとせがまれるので自然と対処法をメモにとる癖がついてしまった。


「えーと、読む?」

メモ帳を差し出す。

本当はすごく恥ずかしい。

葵さんはあきれた顔でいった。

「この人もかぁ…。苦労してるね。」

彼女は何か悟ったような顔をして、心の底から同情した目で俺を見つめた。

あまりに長い間みつめられるので少しドキッとしてしまう。淡い紫色の瞳にみいられそうになる。

すると突然、桐壺が起こったような顔で俺と葵さんの間に体を滑り込ませてくる。

「おるはとなんて、しゃべんなくていいから。あたしと話そ?ねっ!」

大きな目がじっとみてくる。

不覚にもドキッとした自分を全力で殴りたい。

何だってこいつにドキドキしなきゃならないんだ。葵さんなら、ともかく。ちょっと悔しい気持ちになる。

「そんなこと、いわないでよー。明石くんは私とだって話したいよね?」

「えっ…!?う、うん。」

そういうと桐壺はうそうそといってぶんぶん首をふる。「絶対あたしとのほうがしゃべりたいに決まってんじゃん」とかいって大声で騒ぎ出したので小学生かというつっこみを入れる。その際、チョップは忘れない。


対処法その① 人前で騒ぎ出したら頭にチョップする


彼女はだいたいこれで静かになってくれる。

静かにはなったがそれでもなんだかこの状況は不味い気がした。

人のたくさんいる店内で騒いでしまったし(約一名が)、女子3人と俺の友達(つまり俺以外)の容姿がすごくいい。

店内の、視線がここに集中する。

志紀は気づいていないようだった。とりあえず、一刻も早くここを出たい。ひとまず、志紀に視線を送った。しかし、彼は六条宮さんと話しているのに夢中でこちらのことなどお構いなしだ。

きっと睨むと、さすがの彼も気づいてくれた。

俺の視線とまわりをみて察したらしい。

「ゲームのこともまとまったし、みんな仲良くなれたっぽいしなそろそろ帰るか。」

志紀がそういうと皆賛同した。


じゃあ、といってバス停に向かって歩き出す。

すると葵さんが追いかけてきて話しかけてきた。

「いっしょにいってもいいかな?」

彼女が、そういうのでいいよと返すと彼女は嬉しそうに笑った。

「いろいろ聞いてもいい?」

「どうぞどうぞ。」

二人並んで歩き出した。

「可鈴のことどう思う?かわいいなとか……好きかとか。」

「かわいいとは思うけど、好きじゃあないかな。普通にうざいって感じ。まぁ、憎めないやつではあるんだけどさ。悪いやつじゃあないし、なんか嫌いにはなれないんだよね。」

そういうと葵さんはそうなんだと一言だけ呟いて言葉を続けた。

「明石くんは可鈴のこと話すとき楽しそうな顔するんだね。なんか意外。そういえば、さっきもいってたけど今好きな人は本当にいないんだよね?」

「うん、いないよ。」


「へぇ、……………………じゃあ私にもチャンスあるんだ。」


「ごめん、後半なにいってるのか聞き取れなかった。もっかいいってくんない?」

「なんでもないよ、気にしないで。あと、私のことは織葉でいいから。ちゃんと名前で読んでね!」

わかったというと、彼女は無邪気に笑った。



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