家族-1
「くれぐれも、自分の役割を忘れるなよ。菱川」
「……分かっている」
沙羅の家付近まで辿り着き、塀の角から様子を確認しようとしていた陽翔は、聞き覚えのある声に慌てて顔を引いた。
「? どう――」
したの、聞こうとしたらしい沙羅の口を途中で塞ぐ。
「喋るな。向こうに人がいる」
そう言って、理解したと頷く沙羅の口から手を話した。
「三澤。……お前にも、息子がいたな」
「……指示は絶対だ」
「三澤」
「くどいぞ菱川。それほど協力するのが嫌ならば、家に引きこもっているがいい。どちらにせよ、結果は変わらない」
その台詞の後、バタンという音がした。エンジンの音が聞こえ、遠ざかる。
陽翔が顔を出して確認すると、一件の家の前で男性が一人だけ、立ちすくんでいた。
「あの、三澤く――」
「ねえ先輩。あの人、先輩の父親?」
言いかけた沙羅の言葉を遮るように陽翔が確認してきたので、沙羅は質問を飲み込んで、頷いた。
「もしかしたら見張られてるかもしれないな……先輩の家って裏口ある?」
「あるけど、鍵持ってないよ」
「まあ、とにかくここに突っ立ってるわけにもいかないし――」
と、言いかけ。
「三澤君?」
「ん? あぁ、何でもない。先輩、案内して」
男性がこちらを見たような気がした。
しかし彼はすぐに家の中へ入ってしまったので、確信は持てなかった。
沙羅は何やら言いたそうだったが、あえて陽翔は無視した。




