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異変-5

「昔のことだから俺も詳しい事情は知らないけど、その初代は人間を殺そうとして、他の機械人間を洗脳したらしい。で、開発者が先頭に立って機械人間を破壊した」

 まるで他人事のように淡々と陽翔は語る。

「開発者達は初代も破壊しようとしたけれど、初代は電波塔に立てこもり街の電子関係を全て掌握していたため、電波塔ごと封印するしか方法は無かったらしい」

 そこで陽翔は視線を沙羅に戻した。

「電波塔は元々街の生命維持に必要な機械が集中していて、簡単には機能を停止させられない。だから、もし電波塔に異常が発生したら、それは初代が目覚めたかもしれないということになる」

「でも、それと私達に何の関係があるの?」

 陽翔の説明が途切れたので、沙羅は疑問をぶつけた。

「何でヒトガタが破壊されなくちゃならないの? その初代がまた洗脳するかもしれないから? だったら何でまた造ったの? どうせ壊すなら造らなきゃ良かったのに!!」

 最後の発言は八つ当たりに近かった。

 今までずっと生きてきたと思っていた18年間を、家族を否定されて。

 あんな殺し方――壊し方をするのであれば、何故造ることを止めなかったのか。

「……初代を完全に無力化しなければ、またいつか同じことが起こる。そう、開発者は考えたらしい。だから今の機械人間は昔みたいに望まれて造られたわけじゃない」

 陽翔は目を伏せて言った。

「ただの、実験動物として造られたんだ。だから、街の住人は何かあったときに機械人間を破壊するように説明を受けていた」

 使えなくなったら、廃棄するようにと。

「……それじゃあ」

 説明を聞いて、脳裏に浮かんでいたことを、沙羅は口にした。

「私の、お父さんも、お母さんも、何かあったら私を壊すつもりだった、ってこと?」

 特にどうということのない、普通の家庭だと思っていた。

 だが、そう思っていたのは自分だけだったのか。

「…………」

 陽翔は答えない。

 意地の悪い質問だったとは思うが、言わずにはいられなかったのだ。

「……ねえ」

 沙羅は陽翔に貰ったペンダントを首から下げた。

「これ、電波を遮るってことは、知らない人が見れば私が人間じゃないって気付かれないってこと?」

「……先輩、何か変なこと考えてるだろ」

 沙羅の質問には答えず、陽翔は聞いた。

「……家に」

 家に、帰りたい。

 問いただすことは危険かもしれない。

 それでも、両親を否定することはできなかった。

「危険過ぎる」

 陽翔は即座に言った。

「危ないと思ったら逃げるから」

「だけど――」

「お願い」

 沙羅は陽翔の言葉を遮った。

「一度だけ。……一度だけで、いいから」

 陽翔は沙羅を見つめた。

「……せっかく助けたのに、なんか骨折り損って感じ」

 暫くして、陽翔が深くため息をついた。

「……ごめん」

「いいよもう。俺の優しさに感謝しろよな、先輩」

 不機嫌な顔で、陽翔は歩き出した。

「で? 先輩の家ってどこ?」

「……え?」

「家に着くまでに近所の知り合いに気付かれない保証なんてないだろ。ああもう本当に俺ってば人がいいよなー」

 言って背を向ける彼に一瞬目を丸くして。

 沙羅は陽翔を追いかけた。

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