表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/27

Another Last

「――あー、もう所長ったらマジでおっかないったらありゃしない……」

 事務所を出て暫く歩き、一つ目の信号機にぶつかり、上條はようやく息を吐いた。

「勘が良すぎて困るよ……いや、探偵なら当然かも知れないけどさ……」

 わざわざ周囲に誰もいないことを確認してから呟いていたのだが。

「独り言キメェ」

「うわっ!?」

 背後から言われ、慌てて上條は振り返った。

「ああ何だ陽翔君」

「何だって何だ」

 憮然とした表情で陽翔が立っていた。

「学校終わったの? まだお昼だけど」

「半日。腹減った何か奢れ」

「いきなりそれかい」

「あんた一応社会人だし。一応保護者だし」

「どっちにも『一応』はいりません」

 いや、前者は怪しいかもしれないが。

「沙羅ちゃんは?」

「今来る」

 陽翔が差した方向から、丁度沙羅がやってきた。

「お帰り沙羅ちゃん」

「あ、はい。ただいま帰りました。上條さんはお仕事中ですか?」

「んーん。さっき事務所に報告書提出してきて。帰ろうとしてたとこ」

「昼飯奢ってくれるって」

「言ってないよー?」

 さりげなく陽翔に誘導されそうになった。

「慰謝料」

「え」

「俺ら巻き込んだ慰謝料」

「……」

 ――事件の後、沙羅と陽翔の体は回収された。

 結局上條はアダムを撃つことができなかった。

 情けをかけたわけではない。

 三澤に、自分が手にかけた陽翔の死体を見せなければならないことに気付き、ためらったのだ。

 自己保身からの行為だったのだが。

 またアダムに隙を見せた形になったが、撃てなかった場合の保身として同時進行していた電波塔の電力供給の停止が間に合い、二人は機能を停止した。

 二人の体を回収した後、三澤はそれを密かに保存し、イヴとアダムの情報を“取り出した”。

 本来ならば不可能なはずの行為だ。

 しかし、三澤は電波塔に保存されていた機械人間についての研究成果などを全て別の施設へと移動していたのだ。

 一度だけだ、と三澤は言っていた。後で秘密裏に処理をすると。

 だが、彼とて研究者であることに変わりはない。

 やはりあの時、二人を撃つべきだったと後悔したが。

 二人が再び自分の目の前で笑いあっている光景を見ていると、それも違うと思う自分がいた。

 二人だって被害者なのだ。

 三澤はその後、研究員として復帰したが、二人のことを気付かれてはいけないと、陽翔を孤児院に預けることにした。

 沙羅も両親を失ったため、同じ孤児院へ預けられた。

 それが、上條が暮らしていた孤児院である。

 便宜上、二人は戸籍を偽らなければならない。とはいえ、名前だけは変えたくないという二人の主張を尊重したため、かなり苦労したのだが。

 それも陽翔の言う『慰謝料』の一部である。

 ……多分、確実に、当分はこうやってことあるごとにからかわれるのだろうが。

 そして今日の慰謝料が。

「……が、お昼?」

「ん」

「安っ」

「別に今日だけとは言ってないし」

「待って。それって場合によっては高くつくよね!?」

「あ、信号青になったよ二人とも」

 二人のやり取りを気にせず、沙羅は歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ