終焉-2
それはアダム自身、何が起こったのか瞬時に理解ができなかった。
「――っ」
口が、動かない。
体すら動かせない。
次に襲ってきた不快な感覚に、アダムはやっと原因に思い至った。
「……これ、か」
声を絞りだし、首から下がっているペンダントを見た。
かつて、三澤陽翔が菱川沙羅に渡した物。
陽翔は同じペンダントを首にかけていた。
それは電波塔からの電波を抑制する。
今現在、電波塔のコンピューターに組み込まれたプログラムにアクセスしようとしていたアダムは、二十年前のイヴと同様、意識が電波と同化しかけていた。
それは即ち。
「お前自体の電気信号が抑制され、身動きが取れなくなったんだ」
アダムともイヴとも違う声が、部屋に響いた。
無理矢理に身体を動かし、声の方へ向くと、そこには。
「……何故、だ」
アダムは愕然とした。
目の前に立っていたのは、上條和嘉。
アダムが身動きを取れなくしたはずの人間だった。
「実は腹部を撃たれたあれ、演技だったんだよね」
言って、上條は血に濡れた両腕を上げた。
「先に撃たれた左手の血で、腹が撃たれたように見せかけただけ」
「騙されたのか……だとしても、それ以外は直に撃ったはずだ。何故歩ける」
「それは左足がまだ使えたから」
見ると、上條の背後の床には大量の血痕が続いていた。
本人の顔も血の気が失せている。
「左足と、右手。二十年前に機械人間が狂った時、俺は襲われた。俺を庇った両親は殺され、俺も殺されそうになる直前、機械人間が停止した。その時負傷して、それぞれ義手と義足になったんだ。……素体が機械人間と同じだったから最初は抵抗があったけど」
――結果、騙せたならまあいいか。
そう言って、上條は沙羅の姿をしたイヴを見た。
「あんた、イヴだな」
「……ええ」
「二十年前の再現をされる前に、機械人間を停止させる」
「――はっ、単身乗り込んできて何かと思えば」
暫く黙りこんでいたアダムが失笑した。
「どうやって止める? メインコンピューターはここにあり、今正に僕が接続している。止めることなどできやしない!!」
「そうでもないさ」
上條が口の端を上げ、笑みを浮かべながら言うのと同時に、部屋の電気が一斉に消えた。




