回想-3
唯一問題があったとすれば、それはイヴの存在だった。
結果として、イヴは最後まで英田と共にあることを選んだ。
アダムが施した洗脳という名のプログラムは何の知識もないイヴにはどうすることも出来なかった。
悩んで、他に阻止できる可能性があるとすれば、機械人間を管理している電波塔の機能を停止させるということに彼女は気付いた。
当時の機械人間は電波塔で生み出されている電気をエネルギー源として稼働する、人間というよりもロボットに近い状態だった。
ならば、エネルギー源を断ってしまえば彼らは動けなくなる。
そう考えたイヴは、アダムが他の機械人間の様子を確認する瞬間を狙って行動を起こした。
英田は機械人間の研究について危惧していた。
『一から全てを人工的に造られる人間なんて、それは《人間》と呼んでいいものなんだろうか』
最初、イヴを一目見た英田はそう言っていた。
だが、彼は研究を止めなかった。
『僕にとって、これは罪であり償いなんだ』
妹を事故で失ったのだと英田は言った。
イヴは英田の妹を基にして造られた存在だった。
結果として、イヴの成功は他の研究者たちの慢心を増長させ、軍事に利用できないかと言い出す輩も増えだした。
自身の責任を感じ、英田は独自に開発したプログラムを組み込み、イヴへと託した。
いつか、機械人間に対して危機的状況に陥ったときに起動するように。
「プログラム起動――認証」
起動に必要なのは、イヴの声とパスワード。
「Code:ECHOES VENOM EDEN」
悪意が反響する楽園。
機械人間の箱庭。
――全てが終わるのであれば、自分もどうなっても構わない。
どうせ、大切な人はもう戻ってこないのだから。
そう思いながら起動させたイヴは、自分の意識が遠ざかるのを感じた。
認証後、電波塔から放出されていた機械人間への電力の供給が止まり、彼らは次々と倒れ、動かなくなった。
しかし一部の電力は電波塔へと留まり、気が付いたらイヴは電波塔内に流れる電気と一体化していたのだ。
「……嘘だ。僕は、認めない」
アダムは電波塔の僅かな電力で意識を留めていた。
「僕は必ず、君を手に入れる」
イヴが言葉を発しようにも、電子化してしまったためにアダムには通じない。
こうして、アダムは英田として二十年後、機械人間を再度世に解き放った。




