回想-1
「一体何を言ってるんだ、僕が英田拡じゃないだなんて」
英田はイヴの言葉を信じられずに笑い飛ばそうとしたが、イヴは真剣な表情を崩さなかった。
「あなたの基になったのは確かに英田拡だけれど、あなた自体は、英田先生に造られた私と同じ機械人間よ。名前は『アダム』。……本当に、忘れてしまったの?」
言って、自分の傍らで動かない『彼』を英田――アダムに見せた。
「あなたが、先生を殺したのに」
「――あ、」
イヴの傍らには、薄汚れた白衣を身に纏った白骨死体が横たわっていた。
「うわあああぁぁぁっ!!」
アダムは頭を抱え、その場にうずくまった。
「あなたは二十年前、事件当日に生み出された。見た目も思考も、英田先生と同じように設計されてはいたけれど」
「……ああ、そうだ。『僕にはイヴさえいればいい』と、僕も思った。だって、僕も英田拡なんだから」
言われて、思い出した。
――イヴも『先生さえいればいい』と言ってはくれたけれど、実際の彼女は実験対象であり、自分はその研究員だ。この関係は決して変わらない。
だから、実験対象としての自分を造ろうと思ったんだ。
そう、英田拡は言っていた。
それでも。
「私が好きなのは『英田拡』であり、実験対象だからとか研究員だからとか、そんなことはどうでも良かったのに」
イヴは呟くように言い、かがみこんで骨となった英田の頭を抱き上げた。
愛しそうに骨を撫でるイヴを見て、アダムに当時の感情が甦った。
「僕にはそれが許せなかった。同じ『英田拡』なのに何故君は僕のことを見てくれないのかと」
彼女が自分を見てくれないのは、元々好きな『英田拡』が存在しているからであり、彼がいなくなれば、自分のことを『英田拡』として見てくれるのではないかと思ったのだ。
そして、勢いに任せて、手元にあったペーパーナイフで彼の喉を刺した。




