電波塔-2
青年は自身を上條和嘉と名乗った。
「探偵……って言うと聞こえはいいだろうけど、下っ端でさ。この街の研究施設について調査してたら研究員の人に気付かれちゃって」
その研究員が沙羅の両親で、見逃す代わりに今回の一件で娘を助ける約束をさせられたのだと言う。
「つーかさ、こんな場所にいて本当に大丈夫なのかよ」
上條の説明を遮り、陽翔は言った。
小屋を爆破した後、三人は街から出ることを試みたが、付近の外へと繋がる道路は全て研究員の手によって封鎖されてしまっていた。
上條は「とりあえず身を隠そう」と言うと街の外れに向かって歩き出した。
そこまでは良かったのかも知れない。
しかし、辿り着いた先は機械塔が目の前に聳える、倉庫の一つだった。
「大丈夫、調査済みだから。ここって施設の倉庫なんだけど滅多に利用されてないし、まさかこんな目と鼻の先にいるなんて誰も思わないって」
まさに灯台下暗し、と上條は笑顔で答えた。
「先輩、俺こいつ信用できないんだけど」
「三澤君」
あまりに正直過ぎる陽翔に、沙羅は慌てたが、
「三澤……成程。ただの知り合いじゃなかったか」
上條は陽翔を見て呟いた。
「えーっと、菱川さんちの娘さん、沙羅ちゃんだっけ」
「はい」
両親と知り合いならば娘の名前を聞いていてもおかしくはない。
そう考え、あまり疑問に思わず沙羅は頷いた。
「んでそっちが三澤……陽翔君、だっけ」
「何で俺の名前まで知ってんだよ」
警戒するように、陽翔は上條を睨んだ。
「施設を調査してた、って言ったでしょ」
上條は笑顔を崩さずにそう言ったが、そこから先の説明はする気が無いようだ。
「信用するかしないかは個人の自由だけど。二人だけでこの町から逃げられるとも思えないし、今は一緒にいた方がいいんじゃないかな?」
「……」
陽翔は上條を睨み付けたが、正論だったのでそのまま黙り込んだ。
「さて。今日は色々あって大変だったでしょ。今は休んで何かあったときのために体力を温存しときなさい」
上條は陽翔の視線を意に介さず、どこから取り出したのか、紗羅に毛布を渡した。
「一枚しかないから女の子優先で。ちょっと埃っぽいかも知れないけど、寒いよりはマシだと思って」
「はぁ」
「んじゃ、俺は見張りしてるから。何かあったらちゃんと起こすから安心してよ」
後半の台詞は陽翔に向けて、上條は言った。
「……」
陽翔は無言で上條に背を向けた。




