電波塔-1
「おや、どうやら研究所の人じゃないみたいだね」
銃口を向けた主は、そう言って首を傾げた。
見た目はどこにでもいる普通の青年だった。
しかし、その『普通の青年』の手には拳銃が握られている。
おそらく沙羅達よりは年上なのだろうが、口振りからして、とても研究所の人間には見えない。
陽翔は銃を向けられているせいか、身動きが取れないようだ。
そして彼が銃を下ろす気配はない。
このままでは埒が明かないので、沙羅は意を決して声を出した。
「あ、あの」
沙羅が声を発すると、初めて存在に気付いたのか、
「あれ、女の子? ってことは――」
と青年は何か考え出した。
暫くして考えが纏まったのか、
「君、もしかして菱川さんの娘さん?」
と訊ねてきた。
「は、はい。そうですけど」
「ご両親は?」
「それは――」
言いかけて、瓦礫に埋まった映像が甦り、沙羅は言葉を詰まらせた。
「……ああ、話は後にしようか。今はヤバい状況みたいだし、一旦ここから離れよう」
沙羅の様子で察したのか青年はそう言い、そこで彼はやっと陽翔から銃を離した。
「ちょっと待ってて。今追っ手が来ないようにしてくるから」
そう言って二人を通すと、青年は二人が出てきた階段を降りて行った。
姿が見えなくなった瞬間、陽翔がその場に座り込んだ。
「だ、大丈夫!?」
「大丈夫だけど大丈夫じゃねえよ!! 先輩、俺が撃たれること考えてなかっただろ!?」
「いや、そんなことは」
無かったとは言えないが、沙羅は口にしなかった。
「まあ無事だからいいけどさ……それより先輩、あいつ信用できると思う?」
立ち上がり、陽翔は青年が消えた扉を指して聞いた。
「……それはまだ分からない、けど」
「けど?」
「二人だけでなんとかできるとも思えないし……」
「そりゃあ、そうだけどさぁ……」
陽翔は何やら不満そうに口を尖らせたが、扉の向こうから階段を上る足音が聞こえてきたため、表情を改めた。
青年は戻って来たかと思うと、
「二人共、ここから出るよ」
と唐突に告げた。
「は?」
「ほら早く早く。爆発に巻き込まれちゃう」
「爆発って」
青年は陽翔の言葉を無視して二人を追い立てる。
促されるままに小屋を出た。
近くの林に飛び込み、頭を押さえられる。
直後、爆発音が小屋を襲った。
小屋だった物の破片が周囲に飛び散り、収まった頃にやっと青年は二人の頭から手を放して起き上がった。
「これで少しは足止めになるだろ。痕跡も消すことができて一石二鳥、ね?」
爽やかに笑って言う青年。
沙羅と陽翔は不安そうに視線を交わした。




