家族-4
「先輩、しっかりして」
陽翔に肩を揺さぶられ、沙羅は意識を取り戻した。
「何が……」
そう言いかけて、目の前の通路が土砂で埋まっていることに気が付いた。
その下に、見覚えのある服を纏った腕が見えた。
「――!!」
まさか、と思い近付こうとしたが、陽翔に腕を掴まれ、遮られた。
「離して」
「駄目だ」
「離してよ!!」
「俺達は逃げなきゃいけない」
「三澤君一人で行けばいい!!」
「それは無理だ」
腕を掴む力が強くなり、沙羅は陽翔を睨もうとして――、
「先輩を頼むって、言われたから」
その言葉に、思わず目を丸くした。
「先輩の親ってさ、格好いいよな。普通血の繋がらない家族の為になんか自分を犠牲にしたりしないよ」
うちの親みたいにさ、と陽翔は言う。
「先輩が、羨ましい」
「……三澤君……」
自分の腕を掴むその手が震えていることに気付いた沙羅は、強張っていた身体の力を抜いた。
「生かそうとしてくれたんだから、生きなきゃ駄目だ、先輩」
縋るように、懇願する瞳が、沙羅を見た。
「頼むから、今は一緒にここから逃げよう」
「……分かった」
沙羅は心を決めて、陽翔に頷いた。
「ごめん先輩、自分勝手だとは分かってるんだけど」
申し訳なさそうに言う陽翔に沙羅は首を振った。
「こっちこそ勝手なこと言ってごめん」
辛いのは自分だけではないのだと、沙羅は心の中で己に言い聞かせ、親に言われた通りに通路を歩き出した。
ここで自分も死んでは両親の思いが無駄になる。
そう思いながら歩き続け、通路を抜けた先には、上へと続く梯子が掛けられていた。
陽翔が先に登り、上部に取り付けられていた扉を押しやる。
錆び付いた蝶番の音に沙羅は緊張したが、扉の向こうを調べていた陽翔が大丈夫だと言ったので、続いて慎重に扉を抜けた。
そこは、人がいるとは到底思えない程に、物に溢れていた。
剥き出しの鉄骨に囲まれ、ダンボール箱から飛び出ている工具、壁に立て掛けられている農具などが目に入る。
先程までの通路とは違い、部屋の中央部分の天井に取り付けられた電球が一つ、明かりを灯しているだけなので、とても薄暗い。
転ばないように気を付けながら歩いていると、陽翔に呼ばれた。
「先輩、こっち」
目を向けると、彼は鉄の扉の前に立っていた。
扉を開いたその向こうにはコンクリートでできた階段があった。
「人がいるとしたら、さっきの音で気付いてるとは思うけど」
そう言いつつ、陽翔はゆっくりと、足音に気を付けて階段を上る。
その先にも鉄の扉があり、陽翔が扉を開けた瞬間。
――かちり。
「!!」
陽翔の額に、銃口が突き付けられた。




