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第20話 三人

 「私、海斗君のことが好……」

 

 ドン!! ドン!! パチパチ!!


 花火の音で俺の声が遮られる。

 張り詰めてた一気に切れ俺はその場にへたり込んでしまう。

 俺は顔を赤くしている神田に気付いたが何を言えばいいのか言葉が出てこない。

 

 「大丈夫?」

 

 神田が俺にそっと手を伸ばす。

 その顔はなぜか少し寂しそうだった。

 

 なぜかは、分からない。

 いや・・分かったところでどうしようもないことだ。

 今は女の体だがいつ男に戻るか分からない。

 

 「……行こうか」


 神田に手を引かれながら俺は人混みの中を歩いて行く。

 絵里さんと純也さんが笑顔で待っている。


 「どうだった? どうだった?」


 「何が?///」


 神田は察したかのように顔を赤くしながら聞く。

 

 「お!? その反応は」


 純也さんは神田の反応を見てニヤニヤしながら神田をいじる。


 「ば!? な、なんにもなかった……って……」

 

 最初は勢いがあったがだんだん声が小さくなる。

 その時の神田の顔はとても寂しそうなものだった。


 ズキン!!


 なんだか神田のその顔を見ていると胸が痛くなる。

 俺は胸の中でこの顔を……神田の寂しそうな顔を忘れることはないだろう……。


 二人の様子を茂みの中から見つめる人影が一つ。


 「え? 告白しちゃったの? ねぇ?」


 誰もいないのに一人永遠と同じ質問を繰り返す。

 木下推花だ。

 彼女は海斗と太矢が二人して並び赤面しているところを目撃した。

 それからずっと茂みで見ているがいかんせんお祭りなだけあって声までは聞こえない。

 ただ、赤面して口を動かす二人を見ていた。

 声が聞こえないため何を話しているか、もちろんただの世間話かもしれない。

 いや、そうであってほしい。

 しかし、二人のあの赤面顔とただならぬ緊張感は大事な話であるのは決まりだ。

 二人が今まで立っていた場所を眺めながら考えを絞る。

 

 (夏休み明けの話?デート?いや、デートもやばい気が……)

 

 などいろいろ考えるが告白という答えしかない……。

 

 ……やばい。

 どうしよう……もたもたしていたら二人がものすごいところまで進んじゃっている。

 このままでは……。

 

「はぁ……」


 ため息が自然に出てしまう。

 自分が園奏さんを騙して神田海斗との関係を縮めようとした罰かな……。

 自分が情けなくなり帰ろうとしたその時に木下推花は何かに気付く。

 

 神田海斗と園奏太矢の反応だ。

 普通、告白をしたら二人とも照れて顔を赤くしているはずでは(推花情報……)

 なのに、あの二人は……、いや、神田海斗はとても寂しそうな顔をしている。

 幼なじみだから分かる寂しそうな顔。

 

 なぜ、そんな顔をするの?

 どうして?

 

 推花は心の中で問う。

 誰にも聞こえるはずのない問いを永遠に……。


「帰ろう……」

 

 推花はそう呟くと花火を眺めている人達の中に静かに向かって行った。

 

 木下推花が彼……神田海斗のあの表情の理由が分かるのは、まだ少し先の話。

 ご愛読ありがとうございました。

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